2021年11月19日

◆ 屋根に太陽光パネルを載せるな

 地球温暖化阻止のために、「住宅の屋根に太陽光パネルを設置する」という方針を政府が出した。しかし私は反対する。

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 「住宅の屋根に太陽光パネルを設置する」というのは、いかにもありがちな発想だ。誰もがすぐに思いつくことだ。そこで政府は「新築住宅の屋根に太陽光パネルを設置する」という方針を大々的に推進する方針を打ち出した。
 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求することが決まり、実現に向け、私たちの生活も大きな変化を迫られる。
 家庭で使われる電気やガスなどに起因する温室効果ガスの排出量は全体の1割強。政府はこれを2030年度までに13年度比で66%減らす目標を立てている。実現に向けては、新築戸建て住宅の6割に太陽光パネルを設置……ことをめざすという。
 政府は補助金などで普及を促す方針だ。
( → 気温上昇1.5度に抑えるには? 押し寄せる変革の波、車や自宅にも

 これはいかにももっともらしい政策だが、そこには根源的な難点がある。コストだ。
 コストといっても、政府が直接払う補助金のことではない。電力料金に上乗せする形で、電力の消費者が払う金だ。いわゆるFIT(固定価格買い取り制度)のことだ。
 そこでは政府は金を1円も払わないが、消費者が余分な金を払わされる。現時点では、年間1万円ほどの金になる。以前はもっと少額だが、近年はどんどん上昇している。この先もどんどん上がる見込みだ。
 再生可能エネルギーの普及を支える国民負担が膨らんでいる。再生エネ電力の固定価格買い取り制度(FIT)にもとづく家計負担は2021年度に1世帯あたり1万476円となり、20年度と比べて1割強増える見込み。太陽光発電などの導入拡大に伴って負担が増す。
 1キロワット時あたりでは2.98円から3.36円になる。賦課金も含めた買い取り費用全体は約3.8兆円を見込む。
( → 再エネ国民負担、標準家庭で年1万円超す 経産省試算: 日本経済新聞

 この金は所得にかかわらず、ほぼ均等にかかるという意味で、「悪い税」と言える。所得税よりもずっと悪く、消費税に比べても悪く、人頭税と同じぐらい悪い。消費税を「金持ち優遇だ」と批判する人が、もっと金持ち優遇であるFITを批判しないのは歪んでいるね。

 FITの悪いところは、個人住宅の屋根に付ける太陽光パネルの発電を、やたらと優遇することだ。本来ならば、どのような太陽光パネルも同じ条件で扱うべきなのに、そうしない。やたらと不公平に扱う。
 住宅用太陽光発電   19円
 事業用太陽光発電   11円+税
( → FIT制度における2021年度の買取価格・賦課金単価等を決定しました (METI/経済産業省)

 本来ならば 11円(税別)という価格にするべきだ。なのに、それよりも8円(税込みなら7円)も高い金で買い上げる。それだけ余計な金を払っていることになる。
 この金は、まったくの無駄な金だ。本来ならば払う必要にない金だ。市場原理に従わせれば、たちまちに市場から消えてしまうような無駄金だ。なのに、政府が意図的に価格をつり上げるせいで、これほどの無駄金を支払う必要に迫られる。その結果が、各家庭における年間1万円の損失だ。

 ――

 では、どうすればいいか? FITをやめてしまえばいい。それだけだ。そうすれば、無駄な金を払う必要はなくなる。
  11円(税別)というのは、メガソーラーに払う金だが、それだけはそのまま生き残る。しかし、この金額は原発よりも安いので、国や消費者が補助金を払う必要はない。電力会社とメガソーラー会社が、それぞれ独自に交渉すればいいのだ。国や消費者が介在する必要はないし、無駄金を払う必要もない。実際、近い将来には、そういう制度ができることになっている。( FIP という制度だ。)
  → 太陽光発電市場――2021年の展望〜FITに駆け込み?| 日経BP

 一方で、住宅の屋根に太陽光パネルを乗せるという政府推進の方法は、一切、やめてしまえばいい。そうすれば、莫大な無駄金を払う必要はなくなる。単に「馬鹿げたことはやめる」というだけで、高コストの無駄事業は消えてしまうのだ。

 ――

 ただし、単に「やめる」ということだけでは、「炭酸ガス削減」という目的は達成されない。そこで、「住宅の屋根に太陽光パネルを乗せる」というのはやめるが、かわりに別の方策を取るといいだろう。ただし、その方法は、なるべく低コストであることが必要だ。
 具体的には何をすればいいか? 次の (1)(2) だ。

 (1) 耕作放棄地にメガソーラー

 耕作放棄地にメガソーラーを設置すればいい。緑豊かな森林を伐採してメガソーラーにするのは有害だが、ただの草ぼうぼうの耕作放棄地ならばメガソーラーにしても差し支えない。
 この方法なら、ただの平地にメガソーラーを敷設するだけなので、鋼管を配置するだけで済み、特段の工事は必要ない。きわめて低コストでメガソーラーを設置できる。
 ただ、現行制度では、農地にメガソーラーを設置することは禁止されているので、これを可能とするように法制度を改正する必要がある。この件は、前に詳しく述べた。
  → 太陽光発電を増やす妙案: Open ブログ

 (2) 太陽熱温水器

 一般住宅は、太陽光パネルを設置するには適さない。屋根の上に特別な工事を組むと、材料費も人件費もやたらと金を食うからだ。初めから屋根に太陽光パネルを組み込んであるような新築プレハブ住宅ならば話は別だが、一般の家屋に後付けで太陽光パネルを設置するのはコストがかかりすぎる。その意味で、これを推進する政府の方針は、あまりにも筋悪である。莫大な補助金(FIT費用を含む)を投じないと、推進できない。ということは、莫大な無駄がそこで発生しているということだ。
 だから、こういう無駄は一切廃止するのが好ましい。つまり、一般住宅に太陽光パネルを設置するべきではない。(前述の通り。)
 しかしそれでは、国全体で炭酸ガスを抑制するという方針を達成しがたい。あちらが立てば、こちらが立たず。困った。どうする?

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「住宅の屋根には、太陽光パネルを設置する代わりに、太陽熱温水器を設置すればいい。これならば、低いコストで高い効果をもたらす」
 
 太陽熱温水器は、効率が高い。
 太陽光パネル(発電)は、大体150Wくらい(変換効率15%)に対して、太陽熱温水器は、400W(変換効率40%)と言われています。
( → 太陽熱温水器を忘れていませんか?太陽熱温水器の魅力を再発掘! ? EneLeaks(エネリークス)

 どうしてこういう大差が付くのか? 太陽光パネルでは、太陽光エネルギーを電子エネルギーに変換するという「変換」の手間がかかる。そして変換できなかった分は、熱エネルギーとなって、無駄に放出される。
 太陽熱温水器では、太陽光エネルギーはそのまま熱エネルギーとして利用される。熱エネルギーは他の何にもなりようがないから、そのまま熱として利用できる。だから効率が高い。
 一般的には、家庭が使うエネルギーは、電力だけではない。風呂や炊事や暖房で熱エネルギーを大量に使う。そのエネルギー源は、電力であるとは限らず、ガスや灯油であることも多い。それらの使用量を減らせば、そこでも確実に炭酸ガスを減らすことができるのだ。

 政府はやたらと自動車と電力という二点ばかりに目を奪われる。しかし世界で使われるエネルギーの相当多くの部分は、加熱用の熱エネルギーなのである。実際、最近になって石油価格が高騰しているのも、加熱用の熱エネルギーとして石油が大量に消費されているからなのだ。
  → ガソリン高騰の対策: Open ブログ

 ここで、太陽熱温水器を大量に導入すれば、石油やガスの消費量を大幅に減らすことができる。そのことで、石油価格の高騰を防ぐこともできるし、地球温暖化を阻止することもできる。一石二鳥だ。
 しかも、そのことの効果は、太陽光パネルよりもずっと大きいのだ。効率が 15% に対して 40%ぐらいもあるのだから。

 しかも、その上、太陽熱温水器は、太陽光パネルよりも、価格が安い。高価なシリコン単結晶などを使うことはなく、ただの(激安の)ゴムやガラスで製造が可能だ。
 ただ、人件費はかかる。特に、家屋に後付けする場合には、屋根に足場を組んだりして、その足場の工事費だけで相当の金を食う。(私も自宅の改修で足場を組んでもらったことがあるが、たいした工事でもないのに、足場の工事費だけでさんざん金を取られた。)
 だが、この点も、解決策がある。新築のプレハブ住宅で、最初から太陽熱温水器を設置すればいいのだ。これによって工事の人件費を大幅に引き下げることが可能だろう。だから、政府はそれを推進すればいいのだ。

 現実にはどうか? そういう方針は取られていない。だから「太陽熱温水器を標準装備したプレハブ住宅」というものは販売されていない。(ネットでググっても見つからない。)
 しかし、政府がそういうものを推進すれば、炭酸ガス削減の効果は大きく生じるだろう。

 実を言うと、後付けの形で、太陽熱温水器を設置しても、節約できるエネルギーの分で、十分にペイするらしい。家族が3人以上であれば、10〜11年で初期費用を回収できるそうだ。
  → 太陽熱温水器の価格と費用対効果

 さすがに家族数が1〜2人だと、湯の使用量が少ないので、初期費用の回収には時間がかかりすぎるらしい。だが、3人以上であれば、十分に回収できるようだ。

 さらに、補助金をもらえることもあるので、それだといっそうお得になる。
  → 太陽熱温水器 補助金 - Google 検索
 ただ、補助金の額は、あっても3万円前後であることが多くて、太陽光パネルに比べると、圧倒的に少額だ。また、補助金の出ない自治体の方が、はるかに多い。
  → 2021年度 太陽熱給湯システム設置補助金について | サンジュニア
 どうせ補助金を出すのなら、政府はここに多めの補助金を出す方がマシだろう。エネルギーの利用効率の低い太陽光発電に補助金を出すより、エネルギーの利用効率の高い太陽熱温水器に補助金を出す方が、賢明というものだ。
 同じく補助金を出すにしても、出し方を工夫することで、ずっと有意義に金を使うことができるわけだ。



 [ 付記 ]
 太陽光パネルであれ、太陽熱温水器であれ、後付けで設置するよりは、新築時に最初から設置する方が、コスト安で済む。
 特に、太陽光パネルについては、屋根と一体化した全面設置の太陽光パネルというものがある。下記だ。


sekisui.jpg
出典:セキスイハイム


 これだと、屋根の全面を覆う。すると、屋根の構造材(瓦やトタンや新建材)を必要としないので、コスト的に有利である。太陽光パネルが屋根を兼ねているからだ。

 ――

 なお、次の情報もある。
  → 東急不動産、今後すべての住宅物件に太陽光パネルを搭載へ(スマートジャパン)

 最初から標準搭載とすることで、設置コストを大幅に引き下げることができるだろう。特に、人件費で。
 
posted by 管理人 at 23:09| Comment(1) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 太陽熱温水器、調べたら進化してるんですね。普通にいいと思います。普及しないワケとして、過去の訪問販売のイメージダウンが尾をひいているのでは。私も同様の先入観がありました。以下、朝日新聞DIGITALより、訪問販売に関するトピックスです。

 太陽熱温水器(2011年11月18日 朝刊)
 1970年代の石油危機を追い風に需要が伸び、ピークの80年には全国で約80万台が売れた。だが、石油価格の落ち着きとともに人気が落ち、多くの企業が撤退。90年代後半には大手の朝日ソーラーの強引な訪問販売が社会問題化し、イメージダウンでさらに市場が縮小。業界団体のソーラーシステム振興協会によると、10年の販売実績は約4万台だった。

 https://www.asahi.com/topics/word/%E8%A8%AA%E5%95%8F%E8%B2%A9%E5%A3%B2.html
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月20日 18:18
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