2021年11月17日

◆ アリアの電磁石モーター

 日産アリアのモーターは、永久磁石モーターでなく、電磁石モーターである。

 ――

 日産の電気自動車は、長らく同一の形式のモーターを使ってきたが、このたびのアリアでは、全面的に新設計のモーターを採用した。そのモーターは、永久磁石でなく電磁石を使う。(誘導モーターという。巻線界磁型モーターとも。)

 永久磁石を使うモーターは、小型で高出力を得やすいので、普通に使われてきたが、ネオジムというレアメタルを使うのが難点だ。そこでトヨタは、ネオジムの使用量を半減させるモーターを開発して、「どうだ」と威張った。
  → トヨタ、モーター磁石でレアアース半減可能な技術開発: 日本経済新聞

 だが、日産は一足先に跳んで、永久磁石をまったく使わない電磁石モーターを採用した。使用例は多くない。
 永久磁石式以外では、調達の安定化のために米テスラなど一部メーカーで価格競争力の高い誘導モーターを採用するケースも増えている。巻線界磁式は採用事例が少ないが、ルノー「ゾエ」で採用されており、
( → 日産、アリアの新型駆動モーター 永久磁石を使用しない巻線界磁型を採用

 多数派か少数派かと言うことであれば、永久磁石を使う方が圧倒的な多数派だ。しかし、勝ちか負けかと言うことであれば、電磁石を使うテスラとゾエが圧勝している。永久磁石を使う車は、後塵を拝している。

 特に、テスラ車は、モーターの回転数が高いという特徴がある。
 モーター研究でTRAMIが注力するのが、回転数を高めることだ。モーターの出力は回転数とトルクで決まるため、回転数を高めるとトルクを抑えて体積を小さくできる。
 現在のEV用モーターの回転数は1万3000rpm前後で、TRAMIは近い将来に2万rpm以上になると想定する。例えば米Tesla(テスラ)が採用するEV用モーターは2万rpm近くに達するとされる。
( → 日本連合で「超高回転」5万rpmへ、EV用モーター研究 | 日経

 日産リーフのモーターは1万rpm である。テスラのモーターは2万rpm である。大差が付く。そして、売れ行きでも大差が付いている。
 こうなると、「勝負で勝つためには電磁石モーターを使うのが正解だ」としか思えなくなる。だからこそ、日産は新世代のモーターを開発するに当たって、電磁石モーターを採用したのだろう。


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出典:Car Watch


 ――

 日産はアリアの生産にあたって、「工場の全面的なロボット化」および「誘導モーター」(電磁石モーター)という、従来車にはない方針を取った。そのいずれも、テスラの方針と同じである。日産はどんどんテスラ化していく。日産は世界で最もテスラ社に近づきつつあると言える。

 その一方で、トヨタは何をしているか? こうだ。
 「 EV 一辺倒にしないで、水素エンジン車を開発します」

 この後ろ向きの方針は、ウサギとカメよりも、もっとひどい。後ろに向かって進みつつあるのだから。


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 [ 付記 ]
 日本電産は、永久磁石を使わないタイプで、別のタイプのモーターを使っている。「スイッチトリラクタンス(SR)モーター」という。詳しくは下記記事を参照。
  → 日本電産がEV用駆動モーターに本格参入、19年生産開始: 日本経済新聞
  → 新構造で磁石レスモーターの課題を克服、トルク性能が永久磁石モーターと同等に:電気自動車 - MONOist
 
 すでに中国の EV 車で、多数のタイプに採用されているそうだ。
  → 日本電産 プレスリリース
 
posted by 管理人 at 22:11| Comment(10) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> [ 付記 ]日本電産は〜(後略)

⇒ 日本電産は、イーアクスル(eAxle、E-Axle)事業に注力していますね。このユニットは電動車の心臓部分ですから、これを作っているというのはクルマ(EV)を作っていることとほぼ同じかも。下の2つの記事によると、2025年には250万台、2030年には1,000万台の生産を計画して世界シェア40〜50%を目指すそうです。2030年代には、トヨタよりも日本電産のほうが大きくなっていたりして。

 https://go.orixrentec.jp/rentecinsight/robot/article-38

 https://newswitch.jp/p/27386
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月17日 22:46
 非常に優秀な社長である関社長を、日産自動車がプレゼントして、支援していますからね。 (皮肉)

 わざわざ自社から追い出して、日本電産にプレゼントするという、気前の良さ。自社よりも、日本電産を優遇する。
Posted by 管理人 at 2021年11月17日 22:53
永久磁石式と電磁石式のモーターはどちらも一長一短ですよ。自動車の日常用途の利用なら永久磁石式の方が効率がはるかに良いです。日系自動車メーカーが永久磁石式を積極的に利用してきたのは、ハイブリッドシステムを日系が積極的に開発してきたことからです。永久磁石式は負荷がかかっている運転状態で効率が最良となるので、ハイブリッドとの相性がよかったのです。電磁石式ではローター側にも電力消費が発生するため、効率がかなり落ちます。
Posted by なまず at 2021年11月21日 10:53
 アリアはなぜか電費が優れています。あれだけデカくて重い車体なのに、VW の ID.3 や、マツダの MX30 とほぼ同じぐらいの電費です。(WLTC モード)

  https://news.livedoor.com/article/detail/18607642/
  https://riomeo.com/vw-id3-info/
  https://news.yahoo.co.jp/articles/f199cb5f783a51bb1002dcd2dd1c8d62a0feb546?page=2
Posted by 管理人 at 2021年11月21日 11:20
> すでに中国の EV 車で、多数のタイプに採用されているそうだ。
  → 日本電産 プレスリリース

⇒ すみません、付記のところ、この文脈だと「中国のEV車にスイッチトリラクタンス(SR)モーターが多数採用されている」というように読めますが、そうなんですか?? 少なくとも、日本電産が既に市場投入したイーアクスル2種類、Ni150Ex と Ni100Ex に採用したかどうかは不明なのでは??
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月21日 12:10
> ように読めますが、そうなんですか?

 1番目のリンクの記事に、こうあります。

 「現時点では駆動モーターの種類を明かしておらず、今回の駆動モーターシステムにSRモーターを採用したかどうか不明である。」
Posted by 管理人 at 2021年11月21日 12:32
アリアの航続距離は日本向けの測定結果ではありませんか?ID3は欧州の仕様ですよね?欧州のモード燃費測定と日本のモード燃費測定とでは、同じWLTPに沿っていても、計測範囲が違うので比較できませんが。
Posted by なまず at 2021年11月21日 12:35
> Posted by なまず at 2021年11月21日 10:53
> 永久磁石式と電磁石式のモーターはどちらも一長一短ですよ。

> Posted by 管理人 at 2021年11月21日 11:20
> アリアはなぜか電費が優れています。あれだけデカくて重い車体なのに、(後略)

⇒ 永久磁石のモーターは、ある特定の運転状態に性能(効率の良さ)が偏ってしまう。たとえば負荷が低いときに効率の良いモーターは、負荷が高い時には効率が悪くなる。電磁石のモーターは、運転状態に合わせて磁力を最適化させることが可能である(下の2019年の記事より。この金沢工科大の学生が作ったモーターは、ラジアルギャップ⇒アキシャルギャップへの変更なども盛り込まれています)。

 https://univpressnews.com/2019/12/16/post-4627/

 つまり、電磁石のモーターは、運転状態にあわせて特性を変えることができる ⇒ 搭載したEVのモード燃費(電費)がよくなる。このことは、本稿でも提示のある記事中にも書いてあります(↓)。そこがポイントでは。

 「永久磁石を使用している場合、高速時には抵抗が増えて効率が悪化するが、巻線界磁では電流を切ることにより、抵抗を低減することができる。」
 https://www.netdenjd.com/articles/-/235199

 加えて、これも先の管理人さんのコメントで提示のあったアリアの記事中の記載ですが、「4輪制御技術『e-4ORCE』。前後に同等モーターを配することで、超ハイレスポンスの駆動力制御を行ない(中略)。前後独立モーターによる駆動力と回生ブレーキを完全に個別にコントロールする(後略)。」とあります。これもエネルギー効率(電費)にはかなり効いているはずで、この前後に同等モーター云々という技術の方向性から、同じ出力・トルクでモーターの大きさ(体格)を小さくできるSRモーターに、日本電産は注目しているのではないでしょうか。(イーアクスルというユニットで売り込むなら、2駆用も4駆用も小さいほうが有利。)
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月21日 13:17
電磁石式は低負荷での効率は確か良いのですが、その点での効率でも永久磁石式の最高効率には及びません。またローター側に回路が入らざるを得ないので、信頼性にも劣ります。
欧州勢が電磁石式をやたらと用いるのは、永久磁石式の設計技術がなかったからです。永久磁石式はローター側の磁界が制御できないので、高回転側での制御に工夫がいり、その設計技術はハイブリッドで先行する日系が優位に立っています。

日産がアリアで電磁石式を用いるのは、ルノーとのアライアンスでの部品共用化の兼ね合いもあるので、外の人間には狙いはわかりません。

Posted by なまず at 2021年11月21日 13:45
 Posted by なまず at 2021年11月21日 13:45
> 永久磁石式はローター側の磁界が制御できないので、高回転側での制御に工夫がいり、(後略)

⇒ 本稿で提示の、<日本連合で「超高回転」5万rpmへ、EV用モーター研究> の記事中に「TRAMIが注力するのが、回転数を高めることだ。モーターの出力は回転数とトルクで決まるため、回転数を高めるとトルクを抑えて体積を小さくできる」とあるので、今後本当に2万rpmとかそれ以上になるのなら、その点で電磁石式のほうが有利になったりするのですかね。
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月21日 16:15
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