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炭酸ガスの削減を話題にするとき、自動車のことだけでなく、他のことも考えるべきだ、と先に述べた。
→ 自動車をすべて脱炭素化する?: Open ブログ
そこでは事例として、船舶や飛行機を例示した。(これらの燃料も炭酸ガスを排出するので。)
だが、それ以外にも、炭酸ガスを大量に排出する分野がある。特に、冬の暖房だ。それも、自動車の暖房でなく、家屋の暖房だ。
家屋の暖房には、灯油やガスを用いるのが普通だ。途上国では石炭を用いることもある。これらはいずれも炭酸ガスを大量に排出する。なのに、これを無視して、自動車のゼロエミッションばかりを考えるのでは、発想が尻抜けだ。
これに対しては、「暖房の熱源も、再生エネを使えばいい」という発想もある。なるほど、安定した風力発電が可能な欧州では、風力発電とヒートポンプによる暖房を組み合わせれば、熱効率が高くて、好ましいと言える。
※ ヒートポンプの熱高率はとても高いので、コスト的には有利だ。ガス暖房よりも安上がりで済む。
とはいえ、「風力発電とヒートポンプ」ならばいいとしても、日本では安定した風力発電は今のところ可能ではない。コスト的にも、とても高い。
となると、太陽光発電に頼るしかない。だが、太陽光発電は、(夏場はともかく)、冬場には不足する。
・ 冬場には太陽光が弱まる。
・ 冬場には曇天となる地方が多い。(裏日本)
こういうわけで、冬の太陽光発電は不足する。どうせなら、 太陽光を窓から直接的に取り込んだ方がよさそうだ。だが、それでも(太陽光が弱すぎて)暖房をするには不足しがちだ。日照エネルギーが根本的に不足しているとも言える。(冬場は夏場とは違う。)
では、どうする? 風力も駄目で、太陽光も駄目だとなると、化石燃料に頼るしかないのか? 現実的にはそうかもしれないが、それではゼロエミッションとは正反対になる。とうてい許されない。
となると、残るのは原子力のみとなる。身も蓋もない話だが。
結論。
炭酸ガスの排出ゼロ(ゼロエミッション)をめざすなら、自動車だけでなく家庭の暖房でも、炭酸ガスの排出ゼロをめざすことが必要だ。しかるに、冬には太陽光が弱いので、太陽光発電では十分な電力をまかなえない。ゆえに、炭酸ガスの排出ゼロを達成するためには、原子力発電が必要となる。どうしても原子力発電がイヤなら、ゼロエミッションを諦めるしかない。(特に冬場は)
[ 付記 ]
この話のポイントは、下記のことだ。
環境保護派は、ゼロエミッションと原発廃止をともに求めることが多い。しかし、そうすると、冬場の暖房エネルギーを得られないのだ。(両雄並び立たず、みたいな感じだ。)
自動車のエネルギーを考えるだけなら、再生エネの増加によって、ゼロエミッションを達成することはできそうだ。だが、冬場の暖房のことも考えると、必要な電力をまかなうには、再生エネだけでは足りず、原子力発電が必要となるのだ。
どうしても炭酸ガスの削減を優先したいのであれば、(自動車でなく暖房のエネルギー源として)原子力発電は回避できないのだ。
なるほど、今の世界の電力のすべてをまかなうためには、再生エネだけで足りるかもしれない。だが、世界の暖房のすべてをまかなうには、再生エネだけでは足りそうにないのだ。
COP26 では、先進諸国が自動車の排ガスについて「ゼロエミッション」を唱えた。そういう片手落ちの方針を唱えるのは、実は、「冬の暖房のことまで考えたら、ゼロエミッションはとうてい達成できない。そこでとりあえず、やっているフリだけをする」ということなのかもしれない。
COP26 は、ただの政治ショーであって、科学的な真実とは無縁のことなのだろう。先に述べたとおり。
→ 自動車をすべて脱炭素化する?: Open ブログ
「2040年にゼロエミッションの実現」なんて、ただの「やるやる詐欺」にすぎまい。
参考記事:
英国で開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、英国政府は10日、2040年までに新車販売をすべて電気自動車(EV)など二酸化炭素(CO2)を出さない「ゼロエミッション車」にする宣言に署名したと発表した。
宣言では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定の目標を達成するために、35年までに世界の主要な市場で、40年までに世界全体で、完全にゼロエミッションになるよう政府が取り組むとしている。
( → 新車販売、2040年にCO2ゼロに COP26、24カ国が合意:朝日新聞 )
わざと暖房のことを無視している感じ。