2021年11月11日

◆ 脱炭素社会とトヨタ

 脱炭素社会が来ることで、トヨタの社長が危機感をあらわにしている。「このままでは自動車産業が崩壊する」と。

 ――

 次の記事がある。
 100万人の雇用と、15兆円もの貿易黒字が失われかねない――。
 脱炭素の遅れで自動車は輸出できなくなり、最大の輸出産業で雇用が失われる。トヨタ自動車の豊田章男社長が“必死の警告”を続けている。
 菅義偉首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」の後、日本自動車工業会(自工会)の会長として宣言に賛成した上で、このままでは「産業が崩壊する」と叫び続けているのだ。
 「カーボンニュートラル2050、これは国家のエネルギー政策の大変化なしに達成は難しい」「ここで手を打たないと、モノ作りを残して、雇用を増やし、税金を納めるという、自動車業界がやっているビジネスモデルが崩壊する」
( → トヨタの危機感を共有できているか 脱炭素からは誰も逃れられない | 日経

 その上で、こう主張する。
 「今回のトヨタイムズは水素エンジン!」「カーボンニュートラルは共感が大事」

 これには、賛否両論があるようだ。私としては、次のことを指摘したい。

 トヨタの主張には、二つの論点が混在しているのだ。
  ・ トヨタの脱炭素
  ・ 日本の脱炭素

 この両者を切り分けることが必要だ。
 その上で、別々に論じると、次のようになる。

 (1) トヨタの脱炭素

 トヨタ自身は、自分でも脱炭素社会に向けた努力をしている。電気自動車の開発もしている。その点はいい。
 だが、現状の方針へ批判の声を上げることに熱中するあまり、水素エンジンなんかを開発しようとしている。これはとんでもない方向違いだ。水素エンジンというのは、効率が非常に低くて、とうてい実用性がない。EV や 燃料電池車に比べて、圧倒的に燃費が悪いので、脱炭素社会の開発には向いていないのである。
 なのに、どうして水素エンジン車に注力するかというと、水素だけを見ていて、「水素を燃やしても炭酸ガスは排出されない」と思い込んでいるからだ。
 現実には、どうか? 確かに、水素を燃やす場では、炭酸ガスを発生しない。しかし、水素を作成する場では、化石燃料を使って炭酸ガスを発生する。あるいは、水を電気分解することで、大量の電気を消費する。いずれにせよ、電気自動車に比べて、大きく劣る。
 なのに、「水素を燃やす場では、炭酸ガスを発生しない」ということだけを見て、全体を見ないまま、「水素エンジン車はクリーンだ」と思い込む。……これはまあ、理系の思考ができない馬鹿の発想だ。
 トヨタの社長は、馬鹿をさらしているのだから、誰か教えて上げればいいのに。「王様は裸だよ」と。このまま馬鹿をさらすのは、あまりにも哀れなピエロだ。

 ※ この件は、前にも述べたことがある。
   → 水素時代という妄想: Open ブログ
   → トヨタの水素戦略: Open ブログ
   → トヨタの時代逆行: Open ブログ
   → トヨタの時代逆行 2: Open ブログ


 (2) 日本の脱炭素

 トヨタの社長は、日本政府にも注文している。
 「いくら自動車会社が頑張っても、日本の電力会社が化石燃料で発電していて、再生エネの発電量が少ないのでは、日本全体で炭酸ガス排出量が多くなる。それでは日本で自動車生産をすることが不利になる。自動車会社は工場を海外に移転せざるを得なくなる。それでは雇用を守れなくなる」
 という趣旨だ。これは、再生エネ発電に及び腰である日本政府を批判したものだ、と言える。
 その意味では、トヨタの社長の主張はまっとうだ。実に正しい、と言える。

 ところが、その言葉が歯切れ悪い。「日本政府の再生エネ発電が愚図すぎる」と批判すればいいのに、自民党をまともに批判できない。あるいは、立憲民主党の再生エネ発電重視を称賛して、「自民党よりも立憲民主党の政策の方が優れている。自民党は立憲民主党の政策を見習って、再生エネ発電を重視せよ」と唱えればいい。
 なのに、そう言えない。自民党を批判することもできないし、立憲民主党を称賛することもできない。かわりに、「ゼロエミッションの推進」をしている先進諸国を批判するありさまだ。八つ当たりというに近い。滅茶苦茶だ。


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 トヨタがやるべきことは何か? 「このままでは大変だあ!」と、ギャーギャーわめくことか? 違う。
 むしろ、日本政府に「再生エネ発電を推進せよ」と語ることだ。駄々をこねて、「再生エネ発電なんて日本ではできない」なんてグダグダと語るのではなく、「再生エネ発電は可能なのだから、まさしく推進せよ」と語ることだ。
 それには、どうすればいいか? そのことは、前日の項目に記してある。これだ。
  → 森林伐採:アマゾンと日本: Open ブログ
 ここには、こう記してある。
 「地球温暖化の阻止」を日本政府は口にしているが、実際には、やっていることが矛盾している。国内では、太陽光発電を抑止して、森林伐採を推進している。

 結局、農地転用の制度が厳しすぎるせいで、平地では太陽光パネルを設置できない。
 その一方で、森林開発は大甘すぎるので、メガソーラーは作り放題だ。(盛り土も大甘すぎるので、先日の事故が起こった。)
 甘くするべきところにはやたらと厳しくして制限し、厳しくするべきところはやたらと甘くして野放図にする。……こういう逆転の状況が、今の日本にはあるのだ。

 こういう状況を改めるべきなのだ。
 特に、「平野部の耕作放棄地における太陽光発電を禁止する(農地転用を禁止する)」という方針を廃止するべきだ。そうすれば、国内にある大量の耕作放棄地で、大量の太陽光発電を実現できる。そうすれば、再生エネ発電の量が増えるので、日本は脱炭素社会の先進国となる。そうなれば、日本国内の自動車産業の雇用を守ることもできるのだ。

 なのに、そういうふうに言わずに、ひたすら駄々をこねてばかりいるのが、トヨタの社長だ。まったく、情けないね。

 ※ ちなみに、九州では、必要な消費電力を上回る太陽光発電が供給されていて、再生エネ電力がありあまっている状況だ。本州ではそうなっていないが、本州でも「平野部の耕作放棄地における太陽光発電」を実施すれば、同様に大量の太陽光発電を供給できるのだ。次項を参照。
  → 太陽光発電を増やす妙案: Open ブログ

posted by 管理人 at 23:15| Comment(3) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> トヨタがやるべきことは何か? 「このままでは大変だあ!」と、ギャーギャーわめくことか? 違う。むしろ、日本政府に「再生エネ発電を推進せよ」と語ることだ。

⇒ 私は、今のトヨタ社長の豊田章男氏には(リーダーとして)全く期待しておらず、ここらへんの(とくに水素がらみの)トヨタの方針にもほぼ全て反対(本稿の趣旨にほぼ賛成)なんですが、そのいっぽうで、トヨタがエネルギー行政や農地行政?(法整備を含めて)にも積極的にかかわれとするのは、少し荷が重すぎるような気もします。
 もちろん、トヨタは良くも悪くも「日本を代表する企業」のひとつなのですから、「クルマ作りを通じて社会に貢献する」ということだけに注力している場合でもないと思ますが。
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月12日 20:32
関わる必要はなく、口で言うだけでいいんです。言うだけなら、ただです。
Posted by 管理人 at 2021年11月12日 21:34
 なるほど、では今後は、「このままでは大変だあ!」と、ギャーギャーわめくのではなく、「再生エネ発電を推進せよ!」とギャーギャーわめかせるように働きかけることにします!
Posted by かわっこだっこ at 2021年11月12日 21:53
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