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次の記事がある。
英国で開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、英国など23カ国が10日、2040年までに世界全体での新車販売をすべて電気自動車(EV)など、走行中に二酸化炭素(CO2)を出さない「ゼロエミッション車」にすることに合意した。
日本政府は、国内の新車販売を35年までにHVを含む「電動車」100%にする目標を掲げている。
( → 新車、40年CO2ゼロ 23カ国合意 日米中独、賛同せず:朝日新聞 )
英国など24カ国や、米ゼネラル・モーターズ(GM)といった自動車メーカー6社などが署名している。
日本や日系の自動車メーカーは署名を見送っている。トヨタ自動車は10日、取材に対し、世界にはZEV化に時間がかかる地域があることや、多様な解決策がある点を強調。「いまの段階で共同宣言にコミットをすることは困難である」とした。
トヨタによると、アジアやアフリカ、中東など電動化推進環境が整っていない地域では、ZEV化への進展に相応の時間が必要だという。「ゼロエミッションの目標達成には多様な解決策があり、技術中立性の考え方に基づく対応が望ましい」としている。
( → 日系自動車メーカーCOP署名せず トヨタ「現段階でコミット困難」:朝日新聞 )
トヨタは、「アジアやアフリカ、中東など電動化推進環境が整っていない地域」を、非署名の理由としている。しかし、これはおかしい。そこは欧州の権限は及ばないのだから、それらの地域は別勘定にしていいはずだ。
署名が適用されるのは、それに署名した国の内部に限られる。署名しない国には適用されないのだから、トヨタが賛同しない理由にはならない。こんなところでトヨタは後ろ向きの姿勢を見せるべきではあるまい。(次項も参照。)

ただ、それはそれとして、私としても上記の条約は無理筋だ、と考える。脱炭素化した車の率は、100% である必要はない。98%ぐらいでもいいはずだ。その程度で我慢するべきだ。その方が現実的である。理由は二つある。
(1) 寒冷地
寒冷地では、暖房の熱を得るのに、化石燃料車を使う方が賢明である。その熱は、新たに発熱させる必要はなく、もともと捨てられるはずあった廃熱を利用するだけで済むからだ。この点では、熱効率が高くなる。
一方、電気自動車にすると、暖房の熱を得るために、電気を使う必要がある。これだと、多大な電気を食うので、エネルギーが無駄になる。電気自動車の走行距離は、半分以下になってしまうだろう。
現実の電気自動車は、暖房を電気で取ることは少なく、シートヒーターだけで済ませることが多い。これならば、エネルギーの損失は少ない。ただしそれが成立するのは、ちょっと寒いというぐらいの場合だ。
一方、とても寒い地域や時期においては、シートヒーターだけでは足りない。どうしてもエアコン暖房が必要になる。そうなると、多大な電力が消費されてしまうのだ。かくて走行距離は半分以下になる。
こんなところで電気を無駄にするのでは、かえって総合的な無駄が大きくなる。
ゆえに、寒冷地では、化石燃料車を使う方が賢明である。(どうせなら、その分、他のところで脱炭素化を推進した方がいい。)
(2) 自動車以外
炭酸ガスを排出するのは、自動車だけではない。他にもいろいろとある。そっちの炭酸ガスを減らす方が賢明だ。
確かに自動車の炭酸ガス排出量は多大だが、その 98% を削減したなら、もはやその時点では、自動車の炭酸ガス排出量は激減している。その激減したものを、さらにゼロにまで引き下げるために、莫大なコストを投入するのは、馬鹿げている。
どうせなら、自動車以外の分野で、大量の炭酸ガスを排出するのを止めるべきだ。たとえば、船舶や飛行機がそうだ。船舶や飛行機は、重油や灯油を燃やして、大量の炭酸ガスを排出する。それを放置して、自動車ばかりにゼロエミッションを強いるのは、不公平だし、馬鹿げているし、非科学的だ。
「目立つやつだけを懲らしめてやればいい」
というのは、政治的なショー化であって、本来の科学的な対処とはまったく関係ないことなのだ。
むしろ、目立たないところを含めて、総合的に炭酸ガスを減らすべきなのだ。それが科学的態度というものだろう。
逆に言えば、COP26 というのは、ただの政治ショーであって、科学的な真実とは縁が遠いのである。
こういう政治ショーで政治的プロパガンダばかりやっているから、地球温暖化説というのは、どんどん
[ 付記 ]
温暖化阻止のためには、もっとやるべきことがある。炭素の数千倍も温暖化効果のあるフロンを抑止することだ。ところが、この点では、まったく尻抜けになっている。次の記事を参照。
業務用エアコンを不法に解体し、地球温暖化につながる「フロン類」を排出した……
同法違反容疑で警察が摘発したのは初めて。
都環境局は「同様の違反が後を絶たない」としており、警視庁は他の企業についても情報を集めている。
フロン類は業務用のエアコンや冷蔵庫の冷媒に使われるガスで、二酸化炭素の数百倍から1万倍超の温室効果がある。
背景は法律の実効性の問題がある。
( → スバルディーラー、エアコン廃棄時にフロン類使用を伝えなかった疑い:朝日新聞 )
法律が大甘なので、フロンの違法排出が野放しである。炭素のことばかりにかまけているせいで、フロンのことはほったらかし。見えるところばかり見ていて、他のところはお構いなし。
頭隠して尻隠さず、みたいな。尻抜け。
まあ、それはともかく、この朝日の記事には、「フロン類は業務用のエアコンや冷蔵庫の冷媒に使われるガスで、二酸化炭素の数百倍から1万倍超の温室効果がある」というくだりがありますが、この記事を書いた記者2人は、「家庭用エアコン」にはフロンは使われていないと思っているのかな? もちろん、業務用エアコンのほうがフロン使用量が多いのは確かでしょうが。
この事件のポイントは、フロン排出抑制法によって、業務用エアコンの「所有者」には、定期点検等の管理者義務が課せられ、また、廃棄時には廃棄実施者としての義務が生じる(家庭用エアコンにはない「義務」が定められている)、ということなんですがね。
それで、業務用ではない家庭用エアコンについても「尻抜け」があると思いますよ。うちのエアコン(三菱電機の霧ヶ峰)は、3台中2台が、買って2〜3年で、(フロン)ガス漏れが起こって冷えなくなりましたから。そういうのも合わせると、家庭用エアコンからの環境へのフロン排出量もバカにならないかもしれません。