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ダイハツはトヨタの 100% 子会社であり、事実上、トヨタの一部門(軽自動車部門)であるといっていい。だが、ハイブリッド車の方式として、トヨタの THS II でなく、日産の e-POWER と同様の方式(シリーズ方式)を採用した。e-SMART という名称で。
→ ダイハツの新ハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」と日産「e-POWER」ではどちらがすごいか?
→ なぜトヨタ「THS II」を使わない? ダイハツがシリーズHEVで独自路線 | 日経
後者の記事には、こうある。
軽くて小さなクルマにはシリーズ式が最適だと判断した」と語る。「小型車向けに限れば、シリーズ式の方が(シリーズ・パラレル式よりも)コストの下げしろが大きい」。
THS IIに代表されるシリーズ・パラレル式は、……動力分割機構を要する分、構造が複雑である(図3)。
一方のシリーズ式は、……動力分割機構は不要である。
坪井氏は「Cセグメント以上の車両なら迷わずTHS II」(同氏)と言い切る。大きく重い車両で十分な走行性能を持たせるには、エンジンとモーターの動力を両方使えるシリーズ・パラレル式が有利という。
シリーズ方式ならば、動力分割機構が不要で、コストが安いからだ……と説明している。だが、これはちょっと苦しい。シリーズ方式だと、動力分割機構は不要だが、その分、モーターと電池を大きくしなくてはならないからだ。その分で、かなりコストがかかる。価格差で言えば、そんなに大差はない。(後述の [ 付記 ] を参照。)
THS II ならば「エンジンとモーターの動力を両方使える」……と上記記事にあるが、これもまた ちょっと苦しい。シリーズ方式でも、トップギアのエンジン直結をやれば、エンジンとモーターの動力を両方使えるからだ。(これだと、純然たるシリーズではなく、シリーズ・パラレルになるが。)
たとえば、アウトランダーPHEV やホンダの ステップワゴンHV がそうだ。高速巡航のときは基本的にエンジン走行だけにして、加速時だけはモーターで補助する。
この方式の利点は、シリーズ・パラレルという点では THS II と共通するのだが、動力分割機構は不要だ、ということだ。単にトップギヤを用意するだけで済む。そしてそれは、既存の部品(トランスミッション)だけで足りる。動力分割機構(遊星ギア)を新たに用意する必要はない。
というわけで、いろいろと簡単化や簡略化ができるので、 e-POWER の方式は有利だ。だから私は前から「シリーズ方式とトップギアのエンジン直結」という方式を推奨してきた。
→ 次のハイブリッドは?: Open ブログ(2017年02月05日)
ダイハツの e-SMART や、日産の e-POWER は、「トップギアのエンジン直結」がないので、日本はともかく欧州では不人気となるだろう。日本でも高級車では不人気になるだろう。
セレナ e-POWER の高速燃費はかなり悪いそうだ。
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( → 新型セレナe-powerの燃費は?実燃費はかなり悪い?実際の口コミは? | Car Lab )
速度が上がると、燃費がガクンと落ちてしまう。高速道路を多用する人には、まったく適していない。これでは欧州では売れないだろう。
[ 付記 ]
アクアはプリウスの古くて償却済みの(一時代前の)THS II を使うことでコストを切り下げた。だが、その設備をダイハツに回すほどには、設備が余っていないのだろう。
ダイハツに回す設備がないので、使いたければ、そのための THS II の設備を新設しなくてはならない。それではコスト的に割に合わない。設備を新設するのならば、THS II よりもシリーズ式の方が初期コスト(固定コスト・資本コスト)が安く済む……ということなのだろう。それならばわかる。
一方、アクアの方は、償却済みの設備を使えるので、低コストで THS II を使える。だから、アクアの方は THS II を使うのだろう。
→ THSの世代( Wikipedia )
あとはキャシュカイe-POWERについては、モーターのトルクアップ、出力アップと変速比のハイギアード化で対応してくると思われます。
欧州は鉄道網が発達していないので、日本よりも、長距離輸送では自動車がメインになります。速度も時速 200km ぐらい出せることも多い。