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ゴーン社長は「コストカッター」の異名を持つ。徹底的にコストを切り詰めることを目的とした。かくて日産の自動車は、
低コスト・低品質・低価格
を特徴とするものばかりとなった。かつては「技術の日産」の名の下に、高品質の自動車を生産していたが、ゴーン時代からは、部品からして韓国製の粗悪品を大量に導入して、故障しやすい低品質の車ばかりを生産するようになった。
かくて日産の品質ランキングは、日本車ではダントツのペケ(つまりはどん尻)となった。日産車の米国での評判は、今では「安いだけが取り柄の低品質車」となった。
ゴーン社長としては、「低コストで高収益」を狙ったのだろうが、現実には、会社は「低価格販売で低収益」となるばかりだった。
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このひどい経営方針を真似したのが、他社の経営者だった。ゴーンのコストカットを見て、「ではわが社も」とばかり、コストカットに励んだ。そのせいで、技能の低い非正規雇用の社員ばかりとなって、生産性も低下した。かつての「高賃金・高生産性」から、「低賃金・低生産性」へと変化した。それにともなって、品質も低下したので、販売価格も低下して、収益性が悪化した。のみならず、韓国や中国との競争にも負けて、撤退する会社が続出した。
それも当然である。日本がいくら「賃下げ」しても、韓国や中国に勝てるわけがないからだ。勝つためには、「高品質・高賃金・高生産性」をめざすべきだったのに、日本の経営者はそれとは逆の方針を取ったからだ。
それというのも、ゴーン社長の影響が大きかったかもしれない。(断言はできないまでも。)
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それでも、日産自動車は、生き残っただけ、まだ良かった。(自動車産業全体は高賃金だったので、有能な人材が来たからだろう。)
日産を真似した他の工業会社は悲惨だった。自動主産業と違って、賃金の低い産業も多かった。それらの産業が「低賃金・低生産性」という方針を取ったあとは、もはや世界の市場で競争力をなくした。かくて、次々と撤退や倒産が起こった。家電産業を見れば、その跡形がわかる。
夏草や つわものどもが 夢のあと

[ 付記 ]
ゴーンの去ったあとの日産自動車は、正常化が進んでいるようだ。
《 “大赤字”日産が、契約社員の正社員化に踏み切ったワケ 期間工は対象外 》
日産自動車は同社の拠点で雇用する事務職約800人の契約社員を、原則全員正社員として登用することを決定したという。
対象は、国内主要拠点で勤務する人事や会計等の業務に従事する事務職であり、今回はこの分野で雇用維持を目的としているとみられる。
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……この劇的なV字回復は「ゴーン・マジック」とも呼ばれ、彼の世界的な経営者としての名声をより確固たるものとした。
99年度に発生した6844億円の最終赤字が、翌00年には3331億円の最終黒字。わずか1年で1兆155億円もの増益を果たしたのである。まさにマジックといっても差し支えないだろう。なぜなら、売上高は99年と00年で1125億円しか増えていないからだ。
( → 古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」 - ITmedia )
インチキまたは手品(マジック)みたいな手法を駆使することで、劇的な改善を演出した。実際にはたいして改善していないのに、帳簿上の操作で、劇的な改善があったように見せかけた。(その手口は、上記記事を読めばわかる。)
ほとんど詐欺も同然だが、その見せかけにだまされた経営者が多かった。「ゴーンのように賃金コストをカットすれば、大幅に経営改善が見込めるのだ」と思い込んだ。
本当は、そうじゃない。劇的な改善を演出するには、帳簿を操作するべきだったのだ。人をだます詐欺をやるためには、詐欺師になる必要があったのだ。そこを誤解した経営者たちが、賃下げに励んだあげく、身を滅ぼしたのである。
【 関連項目 】
非正規雇用の本質については:
→ 日本はなぜ没落したか?: Open ブログ
非正規雇用への対策は:
→ 野党の取るべき政策: Open ブログ