2021年11月01日

◆ 2021 衆院選の部分分析

 2021 衆院選について、本質的な分析は後回しにして、まずは部分的な分析をしよう。四つある。
 
 ―― 

 1.予測がハズレたのはなぜ?


 自民党の獲得議席は 261(さらに与党系無所属が 3 )である。これが結果だ。一方、予想はどうか? 
 選挙前の予想は、朝日新聞社の予想を除いて、大ハズレした。新聞社の予想(数日前)も、放送局による出口調査による予想(当日夜)も、開票後の NHK の予想も、すべてが大ハズレした。いずれも、自民の数字を230〜250 ぐらいと見積もっていた。(朝日だけは 251〜279 と見積もっていた。)
 このように予想が大ハズレしたのは、なぜだろうか?

 それを考察した記事がある。
  → 衆院選予測はまたも各社が外す結果に、情勢調査の実情と限界(大濱崎卓真)
 ここでは「予測の精度が落ちた」というふうに語っている。つまり、予測の手法に問題がある、と見なすわけだ。

 だが、私はこれは手法の問題であるとは思わない。「今回は接戦が非常に多かった」ということが理由だと思える。接戦の場合には、状況のわずかな差が結果に大きな差をもたらすのが、小選挙区制だ。そういう構造的な要因があったのが大きい。(バタフライ効果に似ている。)
 特に、今回は野党の一本化によって、接戦の選挙区が増えた。このことが、予測の精度が落ちたことの理由となる。

 さらに、別のことがある。接戦の場合、予測する人は、「与党と野党が五分五分で勝利」というふうに見込んだのだろう。しかし現実には、接戦では自民の勝利が多かったようだ。だから深夜になって、最後の最後で当選者が決まったとき、自民の議席が続々と増えていった。( 220 ぐらいから 261 まで、一挙に急増した。)
 自民がハナ差で勝利する(逃げ切るか逆転する)ことが、多かったわけだ。このことも、予測の精度が下がった理由となる。

 以上のことは、「予測の精度が今回は落ちた」という話ではない。むしろ、接戦が非常に多かったことと、野党が今一歩力不足だった(息切れした)ことを意味する。
 評価するなら、選挙区では、「野党がけっこう頑張った」と言えるだろう。基礎票の少なさからすれば、野党は惨敗してもいいはずだったが、これほどまでに「いい勝負」になるところが多かったのだ。
 自民党の有力者の話で、「参院選では厳しい戦いになるだろう」という感想があったが、まさしくそういうことなのだろう。最終的な議席数だけを見て、「自民が圧勝」というふうに思うかもしれないが、内実は、「選挙区ではけっこう厳しかった」というふうになる。
 これを「予測の精度が下がった」というふうに、予測の話だけで終えてしまうのでは、分析が足りないと言えるだろう。

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 2.維新乱入の影響は? 


 維新が選挙区で躍動した。自民と立憲の2党の対立になるだけのところだったが、東京ではきっちりと3番目の票を獲得して、「立憲の半分ぐらいの得票率」を見せつけた。とうてい無視できない存在となっている。
  → 【2021年 衆院選】東京都(小選挙区)開票速報 | 朝日新聞

 では、維新が選挙区に参入したことは、どう影響したか? 維新自らは議席を獲得できなかったとしても、自民と立憲の獲得議席にはどういう影響を及ぼしたか? 
 それを知るのに役立つ情報がある。朝日の記事だ。(本日夕刊)
 今回は日本維新の会が独自に候補者の擁立を進め、与党候補と共闘野党候補の一騎打ちの構図になった「対決型」選挙区は145選挙区にとどまった。この「対決型」選挙区で当選した共闘野党候補は40人(28%)だった。
 維新の候補も加わる「三つどもえ型」の72選挙区では、維新が大阪府などで10人当選するなど存在感を発揮し、共闘野党候補の当選者は22人(31%)にとどまった。
( → 自公293、立憲100議席割れ 衆院選:朝日新聞

 野党が勝利したのは、与野党の一騎打ちの「対決型」では 28% だったのに、維新の候補も加わる「三つどもえ型」では 31% だった。つまり、3ポイントも上昇した。その分、野党には少し有利だったことになる。
 これを換言すれば、維新が食った票は、立憲の票よりも自民の票の方が多かった、ということだ。
 とすれば、維新が出馬しなければ、自民の票はあまり減らなかったはずだから、立憲はもっと大敗していたはずだ。立憲としては、維新に感謝した方がいいだろう。「出馬してくれてありがとう」と。

 ――
 
 なお、維新はもともと「第二自民」であって、保守の補完勢力であったから、自民の票を食うのはもともと当然であったと言える。とはいえ、現実には、自民だけでなく、立憲の票もかなり多く食っていたわけだ。「反自民の受け皿」としての位置を、維新はかなり多く占めるようになったと言える。立憲としては、安穏としてはいられないところだ。
 出口調査で、岸田内閣を……「支持しない」と答えた人の投票先は立憲の37%が最も多く、続いて維新17%、共産14%、次が自民の8%だった。
( → 「立憲」最多も与野党分散 岸田内閣「不支持」、比例の投票先 朝日新聞社出口調査 衆院選:朝日新聞

 岸田内閣を「支持しない」と答えた人の票なのだから、立憲が 大半をもらって当然なのだが、たったの 37%しか取れない。第二自民である維新に 17%も奪われてしまっている。維新が出馬するかしない化なら、出馬してくれる方がありがたいのだろうが、その前に、維新の存在自体が、立憲を脅かすほどになっている。
 これは、立憲が「反政府」の人々の受け皿になり得ていないことを意味する。猛省するべきだろう。

 3.共闘の効果は? 


 立憲と共産党が選挙協力をしたことの効果は、どうだったか? 
 それについては、上の引用部のように、28% および 31% という数字がある。
 これは、もともと弱小勢力だった「弱者連合」にしては健闘しているとは言えるが、「政権交替」を口にしていた割には、「掛け声倒れ」とも言える。
 とはいえ、共闘しなかった選挙区では、こうだった。
 候補者を一本化しなかった「混戦型」の72選挙区では、当選した野党5党の候補は6人(8%)のみ。
( → 同じ朝日記事 )

 つまり、惨敗である。とすれば、選挙協力をした方がずっと良かった、とは言える。
 勝率が上がらなかったことの理由は、共闘が良くなかったのではなく、もともとの地力が足りなかったからだ、と言える。立憲と共産のどちらにしても、支持率が1桁の弱小政党であるからにすぎないのだ。これではまるで、小人が二人で連合して、巨人を倒そうとするようなものだ。いくら共闘したところで、限度がある。その点からすれば、28% や 31 %というのは、驚異的な成功率だったとも言えそうだ。(ただの小人連合にしては)



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 4.共産党との連携で票を減らしたか? 


 「立憲が比例区で票を減らしたのは、共産党との連携で票を減らしたからだ」
 という見解がある。そう言えるか? 
 数字を見れば、そう言えそうにはない。立憲の支持率はもともと小人並みでしかなかったからだ。共産党との連携があるか否かにかかわらず、もともと票は大幅に不足していた。そのことは支持率の推移を見ればわかる。
  → 政党支持率推移グラフ|世論調査|報道ステーション|テレビ朝日
 立憲は、2018年には 15%程度の支持率を維持していたのに、2021年には 8% 程度で低迷するまでになった。支持率をおよそ半減させている。その途中で、希望の党と合体して、所属議員数は倍ぐらいになったのに、支持率は半減しているのだ。
 要するに、共産党との連携をうんうんする前に、自分で自滅しつつあったと言える。

 なお、数字でなく論理で考えるだけでも、共産党との連携の影響などはありそうにない。そもそもこの連携は、共産党が一方的に閣外協力するだけであって、立憲の方は何も与えなくていいからだ。(政策協定を結ぶ必要すらない。)
 ちなみに、自民は公明との連立政権を結んだことで、「公明党の影響力を受けるようになった」と批判されて、票を減らしたか? いや、そんなことはない。影響は皆無に近いだろう。ここでは、自民党は公明党に一方的に協力してもらっているだけであって、ほとんど何も与えていないと言える。(たまにちょっとだけご機嫌取りでサービスしているだけだ。それも、容認できる範囲内でのことだ。)
 立憲と共産党ではもっと影響は少ない。閣外協力であって、連立政権ですらないからだ。こんな共闘など、影響はほとんどないと考えていいだろう。……ただし、自民党によるデマや悪口はあるので、それに踊らされた人の影響はあるかもしれない。だが、そういうデマや悪口に踊らされるような人は、もともと自民党の支持者だろうから、もともと立憲に票を入れるつもりもあるまい。
 というわけで、この共闘による悪影響はほとんどなかった、と判定できる。

 ただし、それは、「よかった」ということを意味しない。立憲が大幅に比例区の票を減らしたのは、共産党との共闘のせいではなく、立憲そのものが構造的に自壊しつつあることを意味するからだ。
 比喩的に言えば、「この結婚が失敗したのは、あなたが結婚相手を間違えたからではなく、あなた自身が圧倒的に駄目人間だからだ」と言われるようなものだ。……もはや致命的と言える。救いようがないね。



 [ 余談 ]
 「救いようがないね」と判定された政党は、「困ったときの Openブログさん。何とかしてくれ」と頼んできそうだが。
 そう頼まれたときの話は、このあとで。


posted by 管理人 at 22:56| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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