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地裁で「使用禁止」の方針が出たあとで、最高裁まで争ったが、最高裁は「使用禁止」を認めた。
もともとは、地裁で方針が出された。しかしこれは事実上の「IT機器の使用禁止」ということだから、化石的なほどにも時代遅れの方針だ。呆れる声が多かった。
→ 法廷で弁護人のPC用電源は使用禁止?!裁判所の仰天判断をどう見るべきか(江川紹子)
さすがに最高裁なら、まともな判断を下すだろう……と思えたのだが、びっくり仰天、最高裁は本日、地裁の方針を容認した。以下の通り。
横浜地方裁判所で行われた刑事裁判の手続きの際、弁護士がパソコンの電源確保のために法廷のコンセントを使おうとしたところ、裁判長から制止されました。
弁護士は「弁護活動を不当に制限された」と主張して使用を認めるよう求め、最高裁判所まで争いましたが、退けられました。
先月、横浜地方裁判所で裁判官、検察官、弁護士が争点などを話し合う「公判前整理手続き」を行う際に、ノートパソコンの電源として法廷のコンセントを使おうとしたところ、裁判長に「国の電気だ」として使用を制止されたということです。
このため「弁護活動を不当に制限された」と主張して、裁判所に不服を申し立てる異例の事態になっていました。
( → 法廷のコンセント使用制止に不服申し立て 最高裁が退ける | NHKニュース )
こんな理屈が通ったら、行政のあらゆる場で、一般人のIT機器使用にコンセント利用が認められなくなる。大幅に制約が加わる。デジタル社会に逆行するとも言える。デジタル庁が「デジタル化を阻止するな」と命じるべきだ。
そもそも、高校でのパソコン利用をどうするつもりなのか? 高校では、パソコン配布が完了していないので、私物のパソコンの持ち込みが不可避だ。
→ 私物スマホも利用可能 課題山積み高校版GIGAスクール|NIKKEI STYLE
なのに、持ち込んだ私物のパソコンについて「コンセントの使用禁止」になったら、電池や電源が切れて使えなくなる生徒が続出する。
それにしても、上記の最高裁の決定は、あまりにも時代錯誤だ。大々的に世界中に報道するべきだな。馬鹿馬鹿しさに、大いに話題になるはずだ。
【 追記 】
百歩譲っても、裁判所は「電気代として 10円を徴収する」という方針を出せばいいだけだ。「使用禁止」という形で制限をかけるのは、弁護活動の妨害であり、明らかな違法だろう。実際、「違法だ」と考えている弁護士もいる。
→ 裁判所のPC電源使えず、弁護士が「違憲だ」と申し立て 処分は適法だった?
一方、弁護士側としては、「10円を払うから、電気を使わせよ」というふうに請求するべきだった。これなら、裁判所側は拒めないはずだ。一方、「タダで使わせろ」と主張することは、「窃盗行為の要求だ」というふうに反論される余地を残す。
今回の決定は、彼らにしてみれば合憲・違憲というような大きな事件ではないので、裁判長の岡村氏にまかせてしまったのか。まあ、三浦氏は検察官出身なので、全幅の信頼は置いていませんでしたが。
> 小法廷は各5人で構成され、どの裁判官も第一〜第三小法廷に属しますが、最高裁長官は出席しないのが普通です。裁判長は事件ごとに各小法廷で定め、判決は多数決で決めます。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-08-20/ftp20080820faq12_01_0.html
⇒ そうです(最終的な決定には)。私が知りたかったのは、三浦氏が(夫婦別姓や参議院の一票格差のときのように)この件に「個別意見」を出したかどうか、という点です。
個別意見そのものがなかったのか、出していても報道されていないだけなのか(最高裁判例検索では、9月7日判決のものが最新なので、まだ一般には公開されていないのかも)。
充電を忘れた子供は「忘れ物」扱いで通知表で評価されます。
下のQ&Aによると、「最高裁判所図書館」の閲覧席では、国民みんなが自前のパソコンやタブレットやスマホを閲覧席に持ち込んで使用できるし、申し出れば電源も使用できるみたいですね。
https://www.courts.go.jp/saikosai/tosyokan/qa/index.html
まあ、屁理屈裁判官にかかると、裁判所と裁判所の図書館は違うというのでしょうが、この図書館に限らず国公立の図書館で同じように電源を使えるところはある訳で、それなら「なぜ裁判所だけはダメなのか、なぜ裁判の時(公判前整理手続き)だけはダメなのか」という合理的な理屈が必要ですね。
また、裁判官や検察官は、パソコンを使っていいのか? 「自分たちは公務員だから」というのは、駄目だよね。国の許可を個別に得たわけじゃないんだから。「窃盗罪」というのなら、同様に成立する。「公務員ならば国の財産を盗み放題」ということは成立しない。
また、照明やエアコンを使ってもいいのか? 電気を食うぞ。