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高齢者に免許を返納させたいが、なかなか本人に了承してもらえないので、息子や娘がいろいろと工夫した……という事例が、新聞で紹介されている。(朝日新聞・声欄 2021-10-27 。ネット版は有料)
→ 朝日新聞:記事検索(有料版)
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内容の要旨は、
・ 「事故で子や孫が非難される」と娘が言う。
・ 「返納しないなら離婚する」と妻が言う。
・ これまでの運転に感謝して、「もう卒業」と言う。
・ 子が親の家に住んで、運転手役を代行する。
・ あれやこれやと多面的に繰り返して説得する。
ということだ。
![kourei_jiko_car.jpg](https://openblog.up.seesaa.net/image/kourei_jiko_car.jpg)
さて。「いろいろと説得する」というのは、確かに有効そうだが、それでは済まないことが多いから、問題となるのだ。
上の投稿は、いずれも成功した人の事例だから、生存バイアスがかかっている。他方、説得に失敗した人の例も多数あるはずだが、それらは掲載されない。
そこで、もっと強力な(有効な)方法を、提案しよう。こうだ。
「 85歳で免許返納を義務づける」
つまり、年齢で強制的に返納を義務づけるわけだ。一種の私権の制限だが、立法化すれば、実施は可能だ。
さらに、(併用の形で)次のことも提案しよう。こうだ。
「70歳 または 75歳 で、自動ブレーキ車の利用を義務づける」
つまり、その年齢になったら、自動ブレーキ車以外は運転できない、というふうにする。
これは、もちろん、「自動ブレーキ車を運転させることで、安全性を高める」という効果がある。これが実現していれば、次のような事故は起こらなかっただろう。
・ 池袋の上級国民の事故 ( Wikipedia)
・ 千代田区の個人タクシーの事故 ( 別項 )
ただし、本項で言いたいのは、その話ではない。確かに、自動ブレーキがあれば、事故を回避することはできただろうが、本項の狙いは、それとは違う。(自己の回避ではなくて、免許の返納だ。)
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自動ブレーキ車を義務づけると、免許の返納には、どういう効果があるか? それは、こうだ。
“ もともと所有する車が、自動ブレーキ車ならば、特に問題ない。だが、もともと所有する車が、自動ブレーキ車でなければ、新規に自動ブレーキ車を購入する必要がある。通常、長年乗り続けてきた車は、自動ブレーキ車ではないので、新規に自動ブレーキ車を購入する必要がある。
だが、そうすると、長年乗り続けてきた車を、手放さなくてはならない。それは、高齢者にとってはつらい。高齢者は、同じ車に乗り続けたがるものだからだ。
そこで、現在の車を手放さなくてはならないと聞かされたとき、腹立ちまぎれに、こう思う。
「だったら免許を返納してやる!」
と。……かくて、免許の返納が実現する。 ”
これは、高齢者の「保守性」「硬直性」という性質を逆手に取った方法だ。高齢者は物事を変更したがらない。そこで、変更を(否応なしに)強いることで、一挙に「免許の返納」にまで追い込む……という手法である。
こういうのを「からめ手から」と言ってもいい。裏から手を回すようなときには、こういう工夫をするといいものだ。特に、相手が分からず屋のときには。
[ 付記 ]
将来的に、自動ブレーキ車が普及すると、この手は使えなくなる。現在所有している車が、もともと自動ブレーキ車となるからだ。こうなると、自動ブレーキ車を義務づけても、買い換えを必要としないので、上記の方法は無効化する。
でも、大丈夫。その場合には、「自動ブレーキ車の義務づけ」のかわりに、別のことを義務づければいい。たとえば、自動運転機能や、自動停車機能など。こういうのを義務づければ、やはり、買い換えを強いることができるので、同様の効果をもたらせる。(免許返納を促せる。)
【 追記 】
本日話題になったツイート。
今朝の国道8号線の大渋滞の原因となった事故です????衝撃的な映像となっております。親会社からドラレコの映像を頂いたので啓発として載せます。皆さまくれぐれも運転にはお気をつけ下さい????#交通事故 #事故渋滞 #国道8号線 #横転事故 #大事故 #通行止め #被害事故 #ながらスマホは命取り pic.twitter.com/oIJkurbjap
— 三条タクシー株式会社??さくらチーム (@sanjotaxi1661) October 27, 2021
これは、回避不能のように見えるが、自動ブレーキ車があれば、事故は避けられた。車線を逸脱した時点で、「このままだと衝突」と推定されるので、車線逸脱と同時に自動ブレーキがかかれば、衝突は起こらない。(車線逸脱の量が 10cm ぐらいで停止すれば、正面衝突は起こらない。)
※ この事故の運転者は、80歳だと報道されている。
免許更新時に自動車運転シミュレータで事故率の高い人のみ更新不可にするとかありそうなのですが。
(年齢に関係なく全員に施せば事故は大幅に減ると思います)
たとえば、スポーツマン体質の人でも、高齢になると、「懸垂ができない」「目を閉じて片足立ちができない」という状況になります。なのに、本人は、それができないことに気づかないで、できるつもりでいる。
> これは、回避不能のように見えるが、自動ブレーキ車があれば、事故は避けられた。
⇒ ちょっと厄介なのは、この現場では中央線が白い破線(追い越し禁止の黄色い実線ではない)ので、現状の各社の運転支援システムだと、アラームも鳴らないし、当然自動ブレーキもかからない気がします。
解決策として考えられるのは、運転支援システムを車載ナビ(を通して得る地図データ)と協調させることでしょうか。カメラからの情報では中央線が白破線だとしても、ナビからここは片側1車線の対面通行道路だという情報が取れれば、早めに対処できるかもしれません。
本来はそうあるべきなのに、これからは車載ナビではなく「ディスプレイオーディオ」といって、スマホのナビアプリと連携させるシステムが主流になりそうです。少し昔のほうが、車載ナビからの地図情報をA/Tのシフトアップ・ダウンのタイミングに反映させてドライバビリティを向上させたり、サスペンションの減衰力を最適化して乗りごこちを良くしたりという技術(↓)を実験的に市場投入していました。(一部メーカーの高級車だけですが)
https://response.jp/article/2008/02/23/106009.html
このあたり、現在を本格的な自動運転を普及させるための前段階と仮定すると、あまりよろしくない方向になっている気がします。かといって、車載ナビに頼らない「コネクテッド・カー」の新型車がどんどん出てきているかというと、そうでもないようですし。
対抗車の近づく将来予測機能があれば足りる。これは、単眼カメラが強そうな分野だ。
ステレオカメラは、現在位置を検知するには良いが、将来位置を予想するには、別途、予想の計算回路が必要となる。それは、単眼カメラ方式にはもともとあるが、ステレオカメラには付いていないことも多そうだ。
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スバルアイサイトには「射線逸脱抑制機能」が付いています。特に地図は必要ない模様。
https://www.subaru.jp/eyesightowner/eyesight-X/
⇒ 動画だと、反対車線にはみ出してから3秒くらいで衝突しているので、今回の事故に限っては難しそうです。自動での操舵修正機能が必要ですね。
たぶんこの人、ずーっとフラフラしていたと思うので、車線はみ出しが何回も続いたら、強制的にエンジンを停止するとか、自動で110番に(位置情報ともに)通報されるような機構のほうが有効かもしれません。少々乱暴ですが、本稿の趣旨にもかなう。
⇒ ハンドル操作のアシストは、アイサイト以外にも他社でもありますよ。私が当初述べたポイントは、メーカーによっては、白い破線だと(黄色い実線でないと)アラームや修正が働かないシステムもあるようなので、それをどうしたらいいかという考察です。例えば、一般道と高速道路では判断のアルゴリズムをわける(高速道路でも対面通行タイプではまた変える)、それは今の技術でも簡単にできるのに、というようなことです。
車線を逸脱しそうになったら、筆者がいわれるように一般道ではブレーキをかけてもいいと思いますが、高速道路ではまずハンドルアシストが安全なので。
車線を逸脱したことで危険を察知するのではなく、転舵したときに、対抗車と自車の将来位置を予測して、数秒後の衝突を察知して、自動ブレーキを掛けます。
対抗車がなければ、衝突しないので、車線を逸脱しても、自動ブレーキはかかりません。
計算開始の時点は、転舵した時点ですので、「このまま直進すれば衝突だ」と予想されたら、自動ブレーキがかかります。たとえ車線を逸脱しなくとも、かかります。車線逸脱の前に自動ブレーキがかかるので、時間的な余裕はあります。
ハンドルアシストも有効ですが、本項では、それは話の対象外。本項は、「自動ブレーキだけでも、何とかなる」という話。