2021年10月27日

◆ 自動ブレーキと夜間歩行者 3

 夜間歩行者にも対応する自動ブレーキで、ステレオカメラ方式のものが、新たに出た。

 ――

 夜間歩行者にも対応する自動ブレーキは、最近、2社から出た。いずれもステレオカメラ方式だ。
  ・ スズキ「ワゴンRスマイル」(日立アステモ製)
  ・ ダイハツ「タフト」(デンソー製)


 記事は下記。
  → 日立アステモの夜間歩行者検知機能付きステレオカメラが新型「ワゴンRスマイル」に採用
  → ダイハツ、3年半ぶりにステレオカメラ刷新 夜間歩行者に対応 | 日経クロステック

 さて。夜間歩行者にも対応する自動ブレーキが重要だということについては、前に2度述べた。
  → 自動ブレーキと夜間歩行者: Open ブログ
  → 自動ブレーキと夜間歩行者 2: Open ブログ

 ここでは、次の趣旨の話がある。
 「現在の自動ブレーキのテストでは、夜間歩行者に対する自動ブレーキというものがあるが、条件が非常に甘くて、現実的ではない。きわめて検知しやすい特定条件だけでテストしているからだ。
 現実にはもっと検知しにくい条件が起こっているので、そのような条件でテストするべきだ。具体的には、次の条件だ。
  ・ 歩行者が黒っぽい衣服を着ている。(特に下半身)
  ・ 右折時や左折時に、歩行者が前照灯の範囲外にいる。

 このような条件でテストするべきだ」


 ――

 さて。以上の2条件を前提として考えると、方式としてはステレオカメラがきわめて優位に立つ。換言すれば、他の方式は劣位に立つ。
 (1) ミリ波レーダーは、もともと電波を反射する金属に対応するものであって、電波を反射しない人間には役立たない。
 (2) 単眼カメラは、光量の少ない夜間には、カメラの感度が低いせいで、対象がぼやけてしまう。すると、輪郭抽出がうまくできなくなるので、距離を検出する計算ができなくなる。

 その点、ステレオカメラは有利である。
 (i) ミリ波レーダーと違って、人間も検出できる。
 (ii)単眼カメラと違って、輪郭がぼやけていても大丈夫。ぼやけた像であっても、左右カメラ像のぼやけ方が同様であれば、ぼやけた像について距離を計算できる。特に、横断歩道にいるような歩行者は、「ぼやけたものが近距離にいる」ということが判明するので、衝突の前に自動ブレーキを作動させることができる。

 なお、単眼カメラで同様のことをやろうとすると、高感度・高精細の赤外線カメラを必要とする。これはかなり高額であって、コスト的に非常に不利である。
 また、単眼カメラは、遠近の双方に対応できないので、通常、遠近の2つ(または3つ)のカメラを必要とする。同様のことが赤外線カメラにも成立するので、赤外線カメラにも遠近の2つ(または3つ)のカメラを必要とする。とすると、単眼カメラ方式では、合計4つ(または6つ)のカメラを必要とする。これは、合計で2つだけのカメラで済むステレオカメラ方式に比べて、圧倒的に不利である。(コストアップになる。)
 なお、単眼カメラ方式は、さらにミリ波レーダーも必要とするので、さらにコストアップ要因になる。

 一方、ステレオカメラ方式なら、高性能の赤外線カメラは必要ない。通常の可視光線カメラの感度を上げるだけでも足りると思えるが、近赤外線にも感度がある検知器(イメージセンサ)を使うのでも足りそうだ。いずれにせよ、高い感度は必要ないので、コスト的には有利である。

 ――

 なお、日立の方式は、「機械学習で教師付学習をして鍛えた」とのことだ。
 日立独自の機械学習技術を活用した、高精度な検知機能を実現するための画像による教師データが入力されていて、これにより夜間における歩行者の検知能力を高めているという。
( → 日立アステモの夜間歩行者検知機能付きステレオカメラが新型「ワゴンRスマイル」に採用 - Car Watch

 日立独自の機械学習技術を活用したもので、膨大な画像の教師データをステレオカメラに入力することで、これまで困難であった高精度な夜間の歩行者検知を実現している。
( → 日立オートモティブシステムズ:夜間歩行者検知機能ステレオカメラ、スズキ「キャリイ」に軽トラックとして初採用|Motor-FanTECH[モーターファンテック]

 画像認識用マイコンに数十万枚の教師データを収納。カメラで撮影した画像とこの教師データを照合し、歩行者かどうかを判定する。先代ステレオカメラでは、歩行者の判定に複数の画像を用いる通常のパターン認識を使っていた。
 機械学習を適用することで従来のパターン認識に比べて、下半身だけにヘッドランプが当たっている画像や、体全体は見えていながら体の場所によって明るさが異なる画像などを、歩行者であると判断しやすくなった。

astemo.jpg

( → [スクープ]日立がAIステレオカメラの実用化で先陣 | 日経クロステック(xTECH)

 何をやっているのかは、漠然とはわかるが、あまり詳しいことは教えてくれないようだ。
 ただ、最後の記事に出てくる記事画像を見ると、横断歩道上にいる物体が、人間であるか否かを、機械学習で判定しているらしい。
 しかし、これはちょっと変ですね。記事画像にもしるしてあるが、横断歩道上にある物体は、人間であるか否かにかかわらず、ちゃんと検知している。とすれば、それが人間であるか否かを、検知する必要はないはずだ。人間であろうがなかろうが(犬であろうが、自転車であろうが、車椅子であろうが、乳母車であろうが)、とにかく、横断歩道上に何かがあって、そこに自動車がもうすぐぶつかる、とわかった時点で、自動ブレーキを作動させるべきなのである。大事なのは、そこに物体があるか否かであって、人間であるか否かではないのだ。
 日立の自動ブレーキは、何かとんでもない無駄なことをやっているように思える。

  ※ かといって、ダイハツ(デンソー製)の自動ブレーキが良い、ということにはならない。こちらはもっと圧倒的に低性能であるらしい。前照灯で照らすと、夜間方向者がわかることもある……という程度らしい。
 「街灯がない場合でも、対象全体をヘッドランプで照らしていれば、検知できる場合がある」(同社)という。
( → ダイハツ、3年半ぶりにステレオカメラ刷新 夜間歩行者に対応 | 日経クロステック(xTECH)




 [ 付記 ]
 日立アステモという会社は、聞いたことがなかったので、調べてみたら、次の通り。
 日立製作所の自動車部門(オートモティブシステムグループ)が分社し、日立製作所100%出資の日立オートモティブシステムズ株式会社として設立された。
 2021年1月1日に本田技研工業の完全子会社(統合に先立ち2020年に完全子会社化、以前は関係会社)であったケーヒン、ショーワ、日信工業の3社と経営統合を実施し、商号を日立オートモティブシステムズから日立Astemoへ変更した[
( → 日立オートモティブ

 まず、ホンダが系列会社であるケーヒン、ショーワ、日信工業の株式を公開買い付けして完全子会社とし、その後、日立オートモティブが3社を吸収合併する。合併後は株式の66.6%を日立オートモティブの親会社である日立製作所が、残る33.4%を本田技研工業が取得。合併後は売上高がおよそ1兆8000億円の巨大企業が誕生する。
( → 経営統合で巨大企業に! いま自動車部品サプライヤーの世界で何が起きている? - webCG

 これは、マレリ(もとはカルソニック・カンセイ)よりも、少し規模が大きい。どちらも日産との関係が深いから、双方が合併すると、売上高が 3.4兆円ぐらいになる。これでようやく、デンソーの 5.1兆円に、かろうじて対抗できる、というぐらいだ。

 なお、ホンダの系列会社のケーヒン、ショーワ、日信工業については、「日産系の会社と合併しろ」と本サイトで推奨したことがある。
  → ホンダの部品不良の問題: Open ブログ(2019年10月08日)
 それから1年3カ月後の 2021年1月1日に、上記の合併が実現したわけだ。まるで本サイトの推奨に従ったかのようだ。もちろん、そんなことはないが、本サイトの見通しや予測が当たった形である。

 世の中の先の流れを知りたければ、 Openブログ。
posted by 管理人 at 23:13| Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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