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本日に話題になったのは、潜水艦発射型ミサイルだ。
【フォト特集】ミサイルは新型SLBM 日本政府、北朝鮮発射巡りhttps://t.co/FwunjkuoA0
— 産経ニュース (@Sankei_news) October 20, 2021
磯崎仁彦官房副長官は、日本政府として得られた情報を勘案し、19日の発射は2発という認識に変わりないと説明した。
→ 北朝鮮ミサイル、潜水艦から短距離改良型発射か 米韓はなお対話路線:朝日新聞
このミサイルは、迎撃による被弾を避けるために、軌道を変えるそうだ。上記記事には、こうある。
「滑空躍動軌道をした」とも言及しており、迎撃を防ぐために最終段階で急上昇する「プルアップ」と呼ばれる動きを確認したとみられる。
ミサイルが弾道軌道をまっすぐに飛ぶと、先の軌道が予想されるので、迎撃ミサイルに撃墜されてしまう。そこで、直前に急上昇してから急降下することで、軌道の予想を不可能にして、迎撃ミサイルによる撃墜を避けるわけだ。
出典:朝鮮日報
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一方、これに先だって、先月には極超音速ミサイルを開発したと報じられた。
→ 北朝鮮が極超音速ミサイル開発 日本の迎撃網を無力に: 日本経済新聞
→ 北朝鮮“極超音速ミサイル” 専門家「開発新たな段階に進む」| NHKニュース
→ 北朝鮮、新型「極超音速ミサイル」の発射実験に28日成功 - BBCニュース
→ 判明!北朝鮮が発射した極超音速ミサイルはとてつもない兵器だった | FRIDAY
→ North Korea's New Hypersonic Missile Has a Massive 2.5 Ton Warhead and ’Low Altitude Gliding Leap’ Flight Mode
最後の記事から一部抜粋して、DeepL 翻訳を付す。
According to KCNA: “Right after the test firing,, the Academy of Defence Science clarified that the test-firing was very successful just as it had been confidently precise, wing that the reliability of the improved version of the solid fuel engine was confirmed through several engine ground jet tests and their test firing processes, an that the irregular orbit features of low-altitude gliding leap type flight mode already applied two other guide projectiles were also re-confirmed.”
KCNAによると、「試射の直後、国防科学アカデミーは、試射は確信を持っていた通りに非常に成功したと明らかにした。また、改良型固体燃料エンジンの信頼性は、複数のエンジンの地上噴射テストとその試射プロセスを通じて確認され、他の2つの誘導弾にすでに適用されている低高度滑空跳躍型飛行モードの不規則な軌道の特徴も再確認された」という。
「 low-altitude gliding leap 」が「低高度滑空跳躍」と訳されている。これの後半の「 gliding leap 」は、先の朝日記事の「滑空躍動」と同じである。「プルアップ」とも同じである。上図の軌道とも同じである。
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さて。北朝鮮のミサイルは、潜水艦発射型であれ、極超音速型であれ、いずれにせよ、「プルアップ」タイプの軌道をもつので、迎撃ミサイルによる攻撃を無効化する。
となると、日本が洋上イージスを配備しても、ただの無駄になるわけだ。
このことは、先に詳しく指摘したとおり。
→ イージスの洋上案: Open ブログ
要するに、洋上イージスというのは、1兆円もの費用がかかる割には、ただのゴミであるにすぎない。北朝鮮の新型ミサイルの前には、無力なのである。
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これに対して、反論もある。「プルアップ」タイプの軌道をもつ北朝鮮ミサイルに対しても、SM-3 HAWK や SM-6 ならば対処できるぞ、と。
イージス・システムはイスカンデルを迎撃できます。イージス・システムは様々な種類の迎撃ミサイルを運用できるからです。現状でもターミナル段階ならば大気圏内迎撃用のSM-6迎撃ミサイルでイスカンデルに対処可能ですし、将来SM-3HAWK迎撃ミサイルが登場すればミッドコース段階でのイスカンデルとの交戦も可能となるでしょう。当然イージス艦だけでなくイージス・アショアに搭載することも可能です。
( → 北朝鮮のイスカンデル対処方法とイージス用新型迎撃ミサイル「SM-3 HAWK」(JSF) )
なるほど、その言葉に間違いはない。SM-3 HAWK や SM-6 ならば、イスカンデルに対処できる。
だが、イスカンデルというのは、普通の地対地ミサイルだ。一方、今回の潜水艦発射型ミサイルは、話が違う。かなり近距離から発射できるので、SM-3 HAWK や SM-6 で対処できるとは言えない。
たとえば、洋上イージスを秋田に設置するとして、潜水艦発射型ミサイルが富山のあたりの近海から発射されたなら、迎撃しようにも、迎撃のしようがない。前から迎撃するのではなく、飛ぶミサイルの後ろから追いつくしかない。しかし、(遠くの)後ろから追いつくためには、敵ミサイルの2倍以上の速度で飛ぶ必要がある。それはちょっと無理だ。
つまり、近海にひそむ潜水艦発射型ミサイルには、洋上イージスでは対処できないのだ。
では、極超音速ミサイルに対しては、どうか? これについても、上の記事では、楽観的である。
仮に想定し難いですが北朝鮮が中国のDF-17と同等品の極超音速滑空ミサイルを開発したとしましょう。全ての領域でSM-3を回避できないにしても、主な飛行状態となる滑空中は回避できるので確かに意味は出て来ます。しかし中国やロシアがようやく開発に成功したばかりの新兵器である極超音速滑空ミサイルを北朝鮮がこれから実用化するのは、かなりの年月を掛けないといけません。そしてそれが完成する前にアメリカの極超音速兵器迎撃ミサイル「SM-3 HAWK」がとっくに完成している筈です。もちろんイージス艦やイージスアショアにも「SM-3 HAWK」が搭載されることになるでしょう。
しかし、この予想は、完全にハズレた。現実には、下記のようになったからだ。
・ 北朝鮮が中国のDF-17と同等品の極超音速滑空ミサイルを開発した。
・ SM-3 HAWK は、いまだに開発中であって、未完成である。
そもそも、SM-3 HAWK なんてものが完成する見込みは、非常に薄いというしかない。なぜか? SM-3 HAWK がたとえ完成したとしても、敵ミサイルは、SM-3 HAWK を回避するために、単純な「プルアップ」をやめて、さらに複雑な動きをするからである。上がったり下がったりすれば、予測はどんどん不可能になる。
また、敵ミサイルが1機だけでなく、5機ぐらい同時に寄せてきたら、それらが上下動するとき、こちらの5機の迎撃ミサイルが、うまく見失わずにピタリと敵5機を追従するのは、とても困難だ。(相手が入れ替わり動くので、人間なら目が回りそうだ。)
どう考えても、逃げる方が容易であり、動きを予測して迎え撃つ方が不利である。
しかも、攻撃する側は命中率が 50%でも「合格」なのに、防衛する側は「迎撃率」が 100% 近くないと、「合格」にならない。これでは、分が悪すぎる。
さらに言えば、たとえ 100% 近い「迎撃率」が成立したとしても、それではコストが非常に高くなる。これに対して、敵が安価なミサイル(その大部分は脱殻のダミーミサイル)を大量に発射したなら、その飽和攻撃の前には、迎撃ミサイルは無力化する。
迎撃ミサイルの最大の敵は、「新型ミサイル」ではなくて、「安価なミサイルの飽和攻撃」なのである。それに対しては、まったく無力となる。
結局、どう考えても、ミサイル防衛システムというのは、あまりにもコスパが悪いので、無意味なのである。
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では、どうすればいいか? 私がお勧めするのが、「敵基地攻撃能力」だ。つまり、巡航ミサイルで、敵基地を攻撃すればいい。
( ※ 巡航ミサイルは、ロッキードマーティンの AGM-158 にすればいい。洋上イージスと同じ会社の製品なので、洋上イージスを解約をしても、違約金の心配をしなくて済む。)
これに対して、上記記事の筆者(JSF)は反論する。「敵基地攻撃能力は無意味だ。敵のミサイルはこっそり隠れているので、事前にすべてを阻止することはできない」と。
→ 「敵基地攻撃能力」では弾道ミサイルを阻止できない根拠と実戦例(JSF)
残念でした。それはマトはずれ。
そもそも「敵基地攻撃能力」というのは、弾道ミサイルを事前に(発射前に)阻止するためにあるのではない。弾道ミサイルを引きつける「誘蛾灯」(比喩)となるためにあるのだ。
「敵基地攻撃能力」を用意しておけば、敵にとっては、ミサイル攻撃の最大目標となる。となると、こちらから敵ミサイルを探し出して攻撃する必要はない。敵のミサイルが自分から勝手に引きつけられてくるのである。
そして、そこに置くミサイルの半分ほどを、「敵基地攻撃用のミサイル」ではなくて、それに見せかけたハリボテ(ダミー)ミサイルにしておけば、簡単に敵ミサイルを無力化できるのだ。わざわざ迎撃ミサイルなんかを用意しなくてもいいのだ。
これぞ頭のいい方法というものだ。前にも述べたが。
この場合、敵のミサイルの第一目標は、日本にあるミサイル基地となる。つまり、日本が敵ミサイルにミサイルをぶつけようとしなくても、敵の方から勝手に日本のミサイルにぶつかろうとしてくるのだ。
特に、北朝鮮向けには、攻撃目標を、次のようにするといい。
・ 金正恩の居住地、勤務地
・ 寧辺核施設
・ 各種の軍事施設
・ 35度戦付近の軍隊(韓国から北朝鮮を侵略するため)
これらをミサイル攻撃されると、北朝鮮は非常に困る。だから、何としてもそれを避けるために、そこを狙っている日本のミサイルを壊滅させようとする。かくて、北朝鮮のミサイルは、日本にある「敵基地攻撃用のミサイル」に吸い寄せられてくる。
日本のミサイルがぶつかろうとしなくても、北朝鮮のミサイルの方から勝手にぶつかろうとしてくるのである。
( → イージスの洋上案: Open ブログ )
※ すべてをダミーにすると、敵ミサイルは引きつけられないから、ダミーの数は半分ぐらいにしておく。こちらのミサイルはあえて被弾することを引き受ける。しかし、それでいいのだ。迎撃ミサイルというのは、もともと「自分も相手も同時に破壊する」というタイプなのだから、いっしょに破壊されれば、それで目的を達成する。
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結論。
洋上イージスは、ただの金の無駄遣いだから、さっさと廃止するべし。
かわりに、安価な敵基地攻撃能力を用意すればいい。ついでに、敵ミサイルのマトとなるような、ダミー(デコイ)となるミサイルのハリボテも半分ぐらい設置しておく。これで、「自分も相手も同時に破壊する」という目的は達成される。
[ 付記 ]
「飛行機の模型(デコイ)を地上に並べて、敵に飛行機があると見せかける」
という作戦は、第二次大戦中にも採られたらしい。下記の小説に記述されている。
https://amzn.to/3DT4AHy
下記の情報もある。
コーンウォール地方にあるセント・エバルは、かつてイギリス空軍の司令部が置かれており、1940年の戦時中はナチス・ドイツ軍により、何度も爆撃されたそうです。
そして、ここに配備されていた動かない戦闘機は、潜水艦や船で上陸しようとする敵軍を威嚇する目的で並べられていました。
( → 風船戦車にデコイなど、第二次世界大戦の驚くべきニセモノ集 )
より詳しい話は、下記の検索結果から。(英文)
→ https://u.to/o9KvGw
衆議院選挙2021 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/senkyo/#l_party
「ミサイル防衛網の設置」は、1兆円の無駄遣いなので、失格の判定が可能です。
つまり、駄目なのは自民党の方。1兆円の無駄遣いは、その分の防衛力の弱体化を招くので、取り返しが付かない。あとで巡航ミサイルや F-35 や国産戦闘機を購入したくても、その金がない。
それとも、大幅増税しますか。ミサイル防衛網で失敗した分、消費税の増税とか。
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そもそも敵基地攻撃能力は、相手基地を破壊するためにあるのではなく、自らがオトリとなって敵ミサイルに破壊されるためにあります。破壊するためでなく、破壊されるためにあります。その原理を理解しないのでは、何の意味もありません。自民党の方針は、てんで見当違い。
この点について同意します。
まあ、そもそも立憲民主党と日本共産党は防衛に関してあまり議題にしたくないような印象はあります。
ご回答いただき、ありがとうございました。
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