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岸田首相は、総裁選の前には「選択的夫婦別姓に肯定的」という方針を示したのに、首相になったら、党内右派(安倍)に配慮して、「選択的夫婦別姓に否定的」というふうに方針を転じた。
自民党そのものも、同様の方針を決めた。
自民党が12日に発表した衆院選公約の政策集で、選択的夫婦別姓制度を巡り、原案に記されていた「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方についてさらなる検討を進める」との一文が削除された。
高市早苗政調会長は……旧姓を通称として使用拡大する考えを重ねて示した。
( → 自民、公約の夫婦別姓検討を削除 慎重派に配慮か:東京新聞 /共同通信 )
選択的夫婦別姓に反対する、というのは、毎度のことだから、驚くほどのことはない。
問題は、「旧姓を通称として使用拡大する」という方針だ。そんなことは可能なのか?
高市早苗自身は、結婚して姓を変えたあとも、(国会議員として)旧姓を通称として使用しつづけた。なるほど、国会議員ならば、それも可能だったようだ。だが、一般人には、それは可能なのか?
具体的には、次のことは可能か?
・ 運転免許証を旧姓で取得する。
・ パスポートを旧姓で取得する。
・ マイナンバーカードを旧姓で取得する。
・ 健康保険証を旧姓で取得する。
・ 住民票を旧姓で取得する。
・ 銀行預金口座を旧姓で開設する。
これらのことができなければ、非常に不便になる。特に、パスポートを旧姓で取得できないと、外国に行ったときに、非常に不便になる。
マイナンバーカードも同様だ。
現実にはどうか?
できるのは、「銀行預金口座を旧姓で開設する」ことだけだ。これだけはできるようになっている。(銀行によって異なるらしいが。)
それ以外のこと(運転免許証・パスポート・マイナンバーカード・健康保険証)などについては、「旧姓の併記」がなされるだけであって、「旧姓だけの表記」はできないようになっている。(併記といっても、裏面に記載されるだけ、ということもある。)
そのせいで、外国でパスポートを見せても、併記された名前が本人の名前であると認識されないのが普通だ。氏名欄には戸籍の姓が記してあって、裏面に旧姓が記してあっても、旧姓が本人の姓であるとは判明しがたいからだ。
これでは何の意味もない。
※ 現状がどうかは、ググればわかる。たとえば、パスポートは
→ パスポート 旧姓
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では、「併記」ではなく、正式の欄に旧姓が書かれるようになったとすれば、それで解決するか?
実用的には、それで解決する。だが、それはもはや、「選択的夫婦別姓」を実現したのと、ほとんど同じことになる。単に戸籍簿における名称だけが新姓になるのであって、それ以外のすべての面では旧姓が使われるからだ。これでは事実上の「選択的夫婦別姓」の実現である。……しかし、それでは、保守派が許容するまい。
となると、「併記」ではなく、正式の欄に旧姓が書かれるようになる……ということは、現実にはありえないのだ。
だから、「旧姓の通称としての利用」は、現実的には不可能であり、あくまで「併記」という形で、「旧姓を副次的に使う」ということしか許されないのだ。
これでは現実的には不便すぎる。不便さがいくらかは緩和されるというだけのことであって、根本的な不便さは解消されていないことになる。
だから、「旧姓の通称使用を拡大する」という方針は、現実的には、まともな解決案となっていないわけだ。
なのに、「旧姓の通称使用を拡大する」という方針で物事が片付くかのように宣伝するのは、誇大宣伝であり、嘘である。
そして、嘘で相手の票や金を得ようというのは、詐欺である。つまり、自民党の方針は、詐欺なのだ。このことを理解しよう。
ともあれ、詐欺があるとき、詐欺師の嘘をあばくのが、 Openブログだ。
[ 付記 ]
以上の話を読んでも、納得できない人もいるだろう。
「それで自民党の批判はできるが、国民にとっては何の解決にもなっていないぞ。困ったときの Openブログなんだから、問題を解決しろ。うまい案を出せ。保守もリベラルも、ともに納得できるような、名案を出せ」
はい。それはごもっとも。
そこで、まるで打ち出の小槌を使うようにして、都合よく名案を出します。……といっても、すでに出した案の再掲だが。
例 山田太郎 + 鈴木花子 → 山田鈴木花子
山田太郎さんと結婚した鈴木花子さんは、山田花子にするかわりに、山田鈴木花子になる。ここで、姓は「山田」であり、名前は「鈴木花子」である。名前が「花子」から「鈴木花子」に改名される。同時に、姓は「鈴木」から「山田」に改姓される。日常生活や法的には、「鈴木花子」で通る。
公的書類の新規申請は「山田鈴木花子」であるが、民間の既存の契約書類などは、結婚前のまま(鈴木花子)でいいものとする。
( → 選択的夫婦別姓を諦めよ: Open ブログ)
詳しい話は、上記項目を参照。
※ この場合は、旧姓は裏面に併記されるのではなく、正式の欄に併記される。新姓の次に並んで記される。
[ 補足 ]
自民党の公約には、防衛費を2%以上にする、という方針をこっそり入れている。一般向けの公約には記さずに、細かな字を並べた政策集にこっそりと紛れ込ませている。
→ 一般向けの公約
→ 細かな字を並べた政策集
ところがそれはたちまち、目ざといマスコミに見つかってしまった。
→ 防衛費「GDP比2%以上も念頭」 自民が政権公約:朝日新聞
ちなみに、防衛費は年間5兆円。
日本の成年人口を1億人と見なすと、5兆円を1億人で割り算すると、1人あたり5万円となる。現在、1人5万円を負担しているわけだ。
これが倍増となると、1人あたりの負担金は5万円から 10万円に増える。となると、なんらかの形で1人5万円の増税が必要となるわけだ。
それが自民党の公約だ。黙って隠蔽しているけどね。
ともあれ、隠蔽があるとき、詐欺師の隠蔽をあばくのが、 Openブログだ。