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トヨタ労組は、脱炭素時代の自動車産業を心配して、愛知県知事に要望した。「脱炭素時代に対応するための協議会を設置してくれ」と。( → 前項 )
なるほど、脱炭素時代には産業構造が変化するせいで、既存の自動車部品会社は、売上減少に陥り、首切りをするかもしれない。そうなるのが労組は心配だから、何とかしたい……と思うのは、理解できる。
だが、心配をするのはいいが、対応策がおかしい。そういうことは、行政(自治体や国)に頼むべきことではなく、経営者に注文するべきことだ。
なぜか? その理由は、前々項で述べたとおり。トヨタの社長が、経営方針をまったく間違えているからだ。脱炭素時代には、トヨタは率先して EV に集中するべきなのに、それに異を唱えて、水素エンジン車や燃料電池車に注力している。やるべきことをまったく間違えている。進むべき方向をまったく間違えている。
なるほど、トヨタも EV を重視する戦略を出すことは出した。
→ トヨタ、25年までにEV15車種 新ブランド設立: 日本経済新聞
→ トヨタ、25年までにEV15車種導入−新型を上海モーターショーで発表 - Bloomberg
しかし、「25年までにEV15車種」というのは、ペースとしては遅すぎる。
なるほど、中国ではとりあえずというふうに EV を 2車種投入した。
→ トヨタ、中国で「C-HR」「IZOA」の量産EVモデル発売 - Car Watch
だが、中国市場では、中国の国産 EV が圧倒的に強くて、外国勢は牙城を崩せない。もちろんトヨタの2車種もそうだ。
→ 中国のEV市場、外国メーカーは国内勢の牙城崩せず - WSJ
中国以外ではどうかというと、ほとんど何もやっていないに等しい。(少数の SUV を例外的に販売しているぐらいだ。)
かろうじて、21年中に新たに発売するのが、スバルとの共同開発車だ。
→ どうなるトヨタbZ4Xとスバルソルテラ 価格は500万円? - 自動車情報誌「ベストカー」
トヨタはこの車を大々的に宣伝しているようだが、どう見ても、日産アリアの周回遅れである。
→ 日産、ニッサン インテリジェント ファクトリー見学会 - Car Watch
→ 日産、栃木に「革新的」生産ライン 変化対応しやすく: 日本経済新聞
日産は EV の軽自動車も発売すると発表して、安さで台数を大幅に稼ごうという方針も示した。
→ 軽EV、22年度初頭に発売 日産、三菱自が共同開発 | 山陰中央新報
その一方で、トヨタは何をしているかというと、お遊びみたいな中途半端なもの(2人乗り)を、少数だけ生産している。(2020年12月25日〜 )
→ トヨタ、価格165万円のEV『C+pod』を発売…2人乗りの超小型 | レスポンス
これを見て、「ふざけているのか」と思ったね。自動車会社が今どき本気で生産するようなものではない。
同様のものは、日産が「チョイモビ」という名で生産したことがある。
→ 日産自動車、超小型モビリティを活用したラウンドトリップ型カーシェアリング 「チョイモビ ヨコハマ」を横浜市と開始(2017/03)
→ カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」が3月に終了 - ヨコハマ経済新聞(2021.02)
つまり、日産が 2017.03 に始めて、2021.02 に終了したような、実験的な2人乗りの超小型車を、トヨタは 2020.12 になって始めているのである。周回遅れどころか、3周遅れといってもいいぐらいだ。ひどいものだ。
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結論。
トヨタは EV 軽視という社長の方針の下で、EV 開発が圧倒的に遅れている。2025年には多くの車種を発売すると言っているが、それでは遅すぎる。ドイツの会社や日産は 2022年中に多くの車種を出すからだ。こんなことでは、会社の将来が傾いてしまいそうだし、トヨタの本社や関連会社の雇用を守ることもできないだろう。
とすれば、トヨタ労組がなすべきことは、トヨタの経営者に「馬鹿たれ」と言うことだ。「他社を見習って、EV 開発に注力しろ。水素エンジン車や燃料電池車なんかは筋違いだから、こんなことに注力するのはやめろ。とにかく EV の開発予算を 10倍ぐらいに増やして、技術者も 10倍ぐらいに増やせ」と。
どうせ金はあるんだから、その金を EV 開発のために投入するべきなのだ。
そして、そのためには、今の馬鹿社長を首切りするのが、最も手っ取り早いだろう。
だから、労組としては、こう要求するべきだ。
「 EV 開発に徹底的に注力せよ。それができないのなら、社長は辞任せよ」
こういう要求をすることこそ、トヨタ労組が雇用を守るための、最善の手段なのである。
※ とはいえ、ネズミが猫に鈴を付けることは、まず無理である。もともとネズミ(= 御用組合)なんだから。トヨタ労組ができることは、尻尾を振って、ご主人様のご機嫌取りをすることだけだ。