――
前にも同様のことがあったので、そのときも解説した。
→ トヨタの時代逆行: Open ブログ
世界中が EV を推進しているときに、一人で逆らって、孤軍奮闘して、EV推進に抗っている。ドン・キホーテ並みの滑稽さだ。今回は、水素エンジン車を代替手段としながら、EV批判をしている。
朝日新聞の記事から一部抜粋しよう。
豊田社長はこう話した。「全部がEVになったら日本でカーボンニュートラル(脱炭素)は達成できない」
日本は欧州のように再生可能エネルギーの普及が進まず、電源構成の7割超を化石燃料由来の火力発電が占める。その電気を使ってEVを走らせても間接的にCO2を排出する。電力の脱炭素化が伴わないEVへの転換は、必ずしも脱炭素の実現にはならない。
EVは、電池製造時に大量のエネルギーを使う。現状で車両組み立て、走行、廃棄といった「車の生涯」を考えれば、EVはCO2を簡単には減らせない。脱炭素の切り札とは言い切れないというわけだ。
( → トヨタ脱炭素、水素エンジンから EV一辺倒の政策に警鐘:朝日新聞 )
「電力の脱炭素化が伴わないEVへの転換は、必ずしも脱炭素の実現にはならない」
というのはその通りだが、だからこそ、政府や世界各国は「再生エネ発電」に向かって努力しつつあるのだ。「2050年には化石エネルギーの使用ゼロ」をめざすという目標もある。こういう流れを前提とした上で、EV 推進がある。
トヨタ社長は、そういう長期的な流れを理解できていない。「今現在の発電状況(火力発電が多い)」ということばかりを見ていて、「将来どうなるか」ということをまったく理解できていない。
「全部がEVになったら日本でカーボンニュートラル(脱炭素)は達成できない」
というのは、今現在の日本ではその通りだが、将来の日本ではそうではないのだ。将来の日本では、火力発電はほとんどなくなるから、カーボンニュートラル(脱炭素)は達成できるのだ。長期的には、そう言える。
なのにトヨタ社長は、物事を長期的に見通せない。長期的な展望をできないという意味では、経営者としては最悪だとも言える。
さらにひどいのは、水素エンジン車なんかを推進しようとしていることだ。「水素エンジン車の熱効率がすごく低い」(燃費がすごく悪い)ということを、まったく理解できていない。
どうせ水素を使うのなら、燃料電池車の方がずっとマシである。こちらの熱効率は高いからだ。今すぐの実用化は無理でも、あと 10〜15年も後なら、実用化はできそうだ。
ただ、実用化はできても、コストや熱効率の点で EV に負けるので、乗用車としては主流にはならないだろう。それでも、バスやトラックのような大型自動車では、EV に比べて優位性が成立するので、バスやトラックでは燃料電池車は普及しそうだ。
いずれにせよ、水素エンジン車は、熱効率がすごく悪くて、省エネに反するので、実用化の見込みはまったくない。こんなものにのめりこもうとするのは、技術のことを理解できない技術音痴の発想だ。(トヨタの社長は、文系の出身だから、技術のことは理解できなくても当然だが。)
[ 付記 ]
そもそも「水素エンジンならば炭酸ガスを出さない」という理屈が成立しない。電気を作るのに化石燃料が必要なように、水素を作るのにも化石燃料が必要だからだ。特に、天然ガスがそうだ。
→ 水素製造とは 大部分は天然ガス由来: 日本経済新聞
結局、天然ガスで発電しても、天然ガスで水素をつくっても、どっちみち天然ガスを使って炭素を排出するのだから、同じことなのである。
なのに、EV についてはそれに着目して批判し、水素エンジン車についてはそれに着目しないで容認する、というのでは、論理が片手落ちである。ご都合主義と言われても仕方ない。
技術のことを理解できない馬鹿が社長を務めると、誰もその馬鹿さ加減を批判できないので、「裸の王様」になる。本人だけは大得意だが、まわりの人は(無言のまま)鼻で笑っているばかりだろう。
そこで私が「王様は裸だ!」「社長は馬鹿だ!」と指摘するのである。トヨタの社長は、私に感謝してもいいくらいだ。
【 関連項目 】
→ トヨタの時代逆行: Open ブログ