2021年10月13日

◆ 欧米人がマスクを嫌がるわけ

 欧米人がマスクを嫌がるのは、どうしてか? ただの気分ではなく、現実的な理由がある。

 ――

 この件については、「欧米人がマスクを嫌がるのは、どうしてか?」をそのままググると、情報が見つかる。
  → マスク戦争勃発?なぜアメリカ人はマスクを嫌がるのか:時事ドットコム
  → これだけ言われても欧米人がマスク着用を嫌がる社会的事情 公衆の場でのマスクが気持ち悪い

 理由としては、「とにかく嫌がるんだ」「文化的な理由があるからだ」「マスクがあると表情が読めなくなるからだ」というような説明があるが、説明としては若干、弱い。特に欧米に限ることを説明できないからだ。
 ただし、次のページには、より詳しい説明がある。
  → なぜ欧米人はマスクを嫌うのか?
 
 一部抜粋。
 推測するに、顔の表情、特に口元の筋肉の動きが発するメッセージは、我々日本人が考える以上に、コミュニケーションの受け手側にとっては大事なのだろうということが推察されます。
 スムーズに欧米人とコミュニケーションを取りたいのであれば、単語を覚えたり、文法を学習するといった言語的トレーニングはもちろん必要なのですが、同時に口元の動かし方などの非言語チャネルもトレーニングした方が良いのかもしれないと思います。そして、口元を意図的に動かして、メッセージを伝えることができるようにするということが大事になるのかもしれません。

 これはヒントになる。

 ――

 一方、文化的な説明も見出される。

 会話をするときに、日本人は相手の目を見るが、アメリカ人は相手の口を見る。
  → 日本人の視点:「日本人は目を見て、アメリカ人は口を見る」

 そのことは、顔文字でも明らかだ。日本の顔文字は  ^_^ や >_< などだが、アメリカの顔文字は :-) や :-( だ。日本の顔文字は目で表現して、アメリカの顔文字は口で表現する。
  → 日本人は目で、欧米人は口で感情を読み取る…顔文字に文化の違いが出ていると話題に

 物語のヒーローでも、隠す部分が違う。アメリカのヒーローは、隠すとすれば目だが、日本のヒーローは、隠すとすれば口だ。つまり、アメリカのヒーローは口を隠さないし、日本のヒーローは目を隠さない。どちらにしても、大事なところは隠さずに見せる。(さもないと、怪しい奴になる。)
  → 目元を隠す欧米人、口元を隠す日本人 - COVID-19雑感
  → 欧米人はなぜマスクをしないのか? 古今東西のヒーローから読み解く?



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 ――

 では、どうしてそういう文化差が生じたのか? その理由は、言語学的に求められる。
  → 会話理解、日本人は「聞く」英米人は「見る」: 日本経済新聞

 一部抜粋。
 人の話を聞く際に、日本人と英米人とで脳の情報処理のやり方が違うことが、熊本大学のグループの研究でわかった。日本人は聞くことに集中するのに対し、英米人は相手の口の動きを見て音を予測しているという。
 英語が母語の留学生は視線を話者の口に集中させるのに比べ、日本人学生の視線は口元には集まらないことがわかった。また留学生は口の動きから推察して短時間で音を判断しているが、日本人学生は口の動きに視線を集中させると逆に判断が遅くなった。英語母語者は口の動きを見ながら一瞬あとに聞こえる音の候補を絞り込んでいるが、日本語母語者はそうした予測をしないようだ。

 これはどういうことか? 私の解釈を言えば、こうだ。
 母音に比べて子音の強さは弱い。


boin-siin.png
出典:テルモ株式会社(特許)


 子音は弱くて聞き取りにくいのに、欧米では子音単独で発音されることがあって、余計に聞き取りにくい。しかも、よく似た子音が多くある。カタカナでは同一になってしまうので、日本人には区別できないこともあるほど、よく似た子音だ。
 それに加えて、欧米では無声子音が単独で発生されることもあり、これも聞き取りにくい。というか、そもそも最初から発音されない無声子音もある。
 では、発音されない子音が、どうして聞き取れるのか? それは、声でなく、息で聞き取るからだ。
  → 英語の無声子音の発音: Open ブログ

 ここでは、息というものが重視されている。その息というのが、たぶん、口の動きで見て取れるものだ。

 つまり、英語の無声子音の有無や、有声子音の微妙な差は、実際に耳で聞いて聞き分けるのではなく、口の動きを見ることで、息の具合として理解するわけだ。

 とすれば、欧米においては、会話を成立させるためには、単に音声だけを伝えるのでは不十分であって、口を見せ合うことが必須であるわけだ。
 
 ここまで理解すれば、欧米人がマスクをこれほどにも嫌がる理由が判明するだろう。



 [ 付記 ]
 同じ理由で、次のことが結論できる。
 「大学入試のヒアリングの試験では、スピーカーまたはイヤホンで音声を聞くだけでは不十分であり、動画によって相手の口の動きを見られるようにするべきだ」

 現状では、録音機器を使って音声だけ意を聞く。しかし、スマホのような動画再生機器を使って、動画と音声を同時に見せるべきなのだ。さもないと、ヒアリングの試験としては不十分だ、と言える。現実よりも過剰に聴覚能力の高さを必要とする試験になってしまうので、特に聴覚能力の優れた人が有利になるからだ。英語のヒアリング力の試験というよりは、聴覚能力の試験になってしまいがちだ。(半々ぐらいだろうか。)
 これでは学力試験としては、判定能力がズレている、と言えるだろう。



 [ 余談 ]
 おまけで珍説を示す。

 「欧米人が口を隠さないのは、口でキスするためである」


kiss-illrst.jpg


posted by 管理人 at 23:12 | Comment(2) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
欧米人はラジオや電話が苦手ということになるのでしょうか
Posted by 単純脳 at 2021年10月19日 07:44
 原理的にはそうなんですけど、比較対象がないから、単に「ちょっと聞き取りにくい」と感じる程度でしょう。通常、文脈から自動的に(自分の頭で)欠落を補うので、特に不便は感じていないようです。
Posted by 管理人 at 2021年10月19日 12:41
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