――
地震で帰宅困難者が出たら、公民館や大学などが施設開放をする……という方針があったが、今回はろくに機能しなかったようだ。
国は震災を教訓に、今後予想される首都直下地震や南海トラフ地震などを想定した帰宅困難者対策のガイドライン作りを進めた。退社・帰宅時間の分散とともに力を入れたのが駅近くでの一時滞在施設の確保だ。公共施設のほか、民間企業などと協定を結び、災害時に場所を提供してもらう。
東京都は7月時点で1137カ所、横浜市でも現在232カ所が確保されているという。
ただ、内閣府によると今回は、自治体が開設した滞在施設は、東京、神奈川、千葉の1都2県で6施設にとどまったという。
東京都足立区は8日未明、小学校の体育館を一時避難所として開放。JR常磐線の北千住駅で帰宅できなくなった47人が利用したという。区の担当者によると、「駅周辺で途方に暮れたり、座り込んだりしている人に声をかけて歩いて移動してもらった」という。
横浜市は今回、民間への協力要請は見送った。担当者は「民間との協定では、開設基準は『公共交通機関が止まって人流が滞留した場合』とざっくりしている。今回は順次鉄道が動き出していたから」とする。
( → 電車動かず会社で仮眠…開かなかった待機施設、帰れない人の対策課題:朝日新聞 )
横浜があまり対処しなかったことには、理由がある。東急線がストップしなかったからだ。ツイッターで確認すると、速度は 25km/h に半減して、本数も減ったものの、運行そのものは停止しなかったそうだ。東急はまたしても名を上げた。
一方、JR東 は、あちこちで運行停止が続いた。動いたのは、翌日になってからだ。これでは大量の帰宅困難者が出そうだ……と思えたが、案外、そうはならなかった。地下鉄が動いたからである。いったん停止したものの、午後10時55分までにすべての路線で運転を再開した。
→ 都営地下鉄 午後10時55分までに全路線で運転再開 | NHK
つまり、地震発生から 14分後には、全線で動いていたわけだ。対応は速やかだったと言える。だから、大量の帰宅困難者は出なかったのだろう。
それでも、地下鉄でなく JR東 を使う通勤客は、帰宅困難になったこともあったらしくて、会社やホテルや友人宅や列車に寝泊まりした人もいるようだ。
→ 首都圏で震度5強 帰宅困難者、再び課題に 自宅に帰らぬ選択肢も(毎日新聞)
以上を見ると、こう言える。
地下鉄や私鉄が動いていたことが大きかった。おかげで、帰宅困難者の数は大量にはならずに済んだようだ。
しかしながら、自治体や企業の提供する宿泊施設は、まともには機能しなかった例が多い。それというのも、地震が夜遅くに起こったので、対処するための人員が不足したせいだろう。
もう少し前なら、対処する人も多かったかもしれない。もう少し後なら、人々はすでに帰宅して、就寝していたかもしれない。
午後22時41分というのは、どっちつかずで、ちょうど多くの人々があぶれてしまうような時刻だったのだろう。
ただし、今回は地震が震度5ぐらいに収まったおかげで、私鉄や地下鉄が止まらなかった。その点ではラッキーだった。
しかし次に来る東京直下型地震では、もっと大きな揺れが起こりそうだし、そうなると、地下鉄や私鉄もストップして、大量の帰宅困難者が出るだろう。そのとき、今回と同じように施設が開放されなかったら、とんでもないことになる。また、それが暖かい初秋でなく、寒い厳冬期だったとしたら、野ざらしになったあげく、死ぬ人も出たかもしれない。
今回の情けないありさまを見ると、10年前の 3・11 の教訓が全然できていないことに気づく。
※ やっぱり、防災庁を作らないと駄目だよね。
そのとき夜間塾から帰宅困難になった子供たちは、どうしたか?
→ https://togetter.com/li/1786875
今は(自動化が進んで)駅員の数も少なくて、自分の駅だけで手いっぱいでしょうから、駅員に委託するのは難しそうです。
確かに、乗務員は運転しなくていいが、どうせ電車は立ち往生しているし、乗客の誘導が必要になるかもしれないし、暇ではなさそうだ。
とはいえ、「誰かに委託する」というのは成立するそこで、「夜間でも働いている人」という面では、コンビニ店員が役立ちそうだ。……とはいえ、コンビニ店員も、自分の店で手いっぱいだろうから、無理っぽい。
となると、近所の住宅の在宅者(夜間のみ)というのがよさそうだ。その人自身も助かるかもしれないし、あるいは、ボランティアとして働いてくれるかもしれない。
だけど、一番いいのは、普通の公務員だろう。あらかじめ施設の鍵を預かっておいて、あとは自動車で移動すればいい。夜間ならば、自動車の通行量は少ないので、自動車で移動できる。
残る問題は、午後6時〜午後8時ぐらいだ。自動車の通行量はまだ多いが、公務員は退庁している。担当できる人が見つかりにくい。
また、大規模の地震だと、各地で通行止めになるので、自動車は動けなくなる。
こうなると、やはり、近所の住宅の在宅者というのが、最有力だ。駅のそばに限らず、すべての施設で対応できるのが強みだ。
鍵の無断使用を避けるには、封印をしておけば大丈夫だろう。地震以外のときに勝手に封印を破ると、すぐにバレる。そういう心理的抵抗感があるので、無断使用を回避できる。
本来なら、今のご時勢、施設の開錠や照明の点灯くらいは自動かリモートで行なえるようにしてもいいのですがね。現状はやはり公務員に頼らざるを得ないのでしょうが、少なくとも「都の施設だから、都庁の役人しか開けられず、各区・市の担当者はタッチできない(または、その逆も)」ということがないよう、都と区・市で連携体制を作っておいてほしいものです。