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前項では、公務員の残業代について論じた。それとの関連で、教員の残業代について述べる。
教員の残業代は、一律4%分の支給にすることが法律で決まっている。これを「不当だ」と訴えた裁判があったが、その判決が出た。形式的には原告敗訴だが、内容的には原告勝訴ふうに解釈できる点があった。
10月1日の朝日新聞記事は、下記の通り。
さいたま地裁は1日、男性の請求を棄却した。
一方、石垣裁判長は判決の最後で、公立学校教員に残業代を支払わない代わりに、月給4%分を一律で支給するとした教職員給与特措法(給特法)に言及。夏休みのような長期休業があることなど、教員の勤務の特殊性を踏まえた制度だが、給特法について「原告の勤務実態を見ると、多くの教育職員が学校長の職務命令などから一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況にあり、もはや教育現場の実情に適合していないのではないかとの思いを抱かざるを得ない」と指摘。「現場の教育職員の意見に真摯(しんし)に耳を傾け、勤務時間の管理システムの整備や給特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に進め、教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望む」とも述べた。
原告側は、17年9月〜18年7月にあった残業は「校長から命じられた業務で、勤務時間に終わらないほど膨大だった」と主張し、残業代の支払いを求めた。
判決は、始業前、休憩時間、終業後のそれぞれの勤務実態が労基法上の時間外労働にあたるかを具体的に検討。朝の登校指導や教室間の移動の引率などが、校長の指揮命令に基づく時間外労働であると認め、「労働時間が労基法の規制を超えている」と指摘。
国家賠償法上の違法性は認められないとした。
( → 教員の残業代支払いめぐる訴訟、原告の請求退ける さいたま地裁:朝日新聞 )
残業代を払えという原告の請求に対して、「払わないことが法律で決まっている」として、頭ごなしに請求を棄却している。その点では、原告敗訴の判決だが、「だとしても法律が駄目だ」と認めたことで、法律の改正を促している。この点で、画期的判決だということで、形式には敗訴でも、原告は大喜びだ。
判決後の動画は下記だ。喜びが描かれている。
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原告は喜んでいるようだが、それでいいのか? ちょっと欲が足りないのではないか?
私の考えを言おう。こうだ。
裁判所は、違憲判決を下すべきだった。教員に残業代を払わないのは、
・ 法の下の平等(憲法第14条)
・ 健康で文化的な最低限度の生活(憲法第25条)
の双方に違反するからだ。
とすれば、原告はそもそも、憲法違反を論拠にして訴えるべきだった。原告側の弁護士の法的判断ミスがあったと言える。
( ※ 原告側の弁護士は、国家賠償法上の違法性で請求したが、それは筋悪だ、ということ。現行法は、自民党の政府が作ったのだから、現行法への違反を理由にするのは、もともと無理がある。現行法ではなく、憲法への違反を理由とするべきだった。つまり、現行法そのものを無効化させようと狙うべきだった。)
《 加筆 》
仮に「一律4%は合憲」だということになったら、「一律1%も合憲」「一律0.001%も合憲」ということになって、実質的に「残業手当を払わずに定額働かせ放題」ということになる。教員の奴隷化だ。
これは明らかに上記の憲法2項目に違反する。さらに「公序良俗に反する」を加えてもいい。
だから、どこかで線引きをしなければならないわけだが、では、どこに? 4% という数字は明らかに低すぎるだろう。その意味で、法律に違憲判決を下すことは妥当である。
[ 付記 ]
私としては、まったく別の解決案を提案したことがある。下記。
→ 教員の応募倍率の低下: Open ブログ
要旨:
残業代を払えと言っても、その金がないのだから、もともと金を払えるわけがない。ない袖は振れない。「金を寄越せ」という要求そのものが筋悪である。
では、どうすればいい? そもそも、教師がほしいのは、金ではなくて時間だ。だから、金ではなく時間を要求すればいいのだ。「休みを寄越せ」と。
具体的には、「夏休み中には休みを寄越せ」と求めればいいのだ。学期中は残業だらけでも、夏休み中に休みを得られれば、マイナスとプラスの帳尻が合う。
現実には、「教師に長期間の夏休みを与えるのは
こういう愚行をやめれば、問題は解決するのだ。
教育への税金投入を大幅に拡充すべきところではありますが、現在の財務事務次官は、筋金入りのW渋ちんWのようです。
(以下、参考記事)
「このままでは国家財政は破綻する」矢野康治財務事務次官が“バラマキ政策”を徹底批判
https://bunshun.jp/articles/-/49082
【動画】財務省の事務次官がスーパーで「ポリ袋ハンター」になっていた
https://www.news-postseven.com/archives/20211001_1694916.html