――
「その理由は、日本という国が衰退したことだ」
というふうに考えて、日本の質的な低下が起こった理由を探ろうとする人々がいる。
だが、これは日本人の質的な低下が理由ではない。単なる量的な変化が理由だ。
では、量的な変化とは? 「生産者人口の低下」である。
要するに、働き手となる人口が減ったから、国全体の経済力(GDP)が低下したのだ。それでほとんどの説明が付く。
――
具体的には、次のグラフを見ればいい。(クリックして拡大)

出典:総務省|平成28年版 情報通信白書
黄緑色の部分が生産年齢人口(15〜64歳人口)である。その量は 1990年と 1995年をピークに、以後はどんどん減少している。(以前は急激に増えていたのだが。)
その一方で、65歳以上人口は急激に増加している。これは、年金や医療費などの社会保障負担という制度を通じて、増税の形で実質所得減をもたらしている。
※ 「人口オーナス」という語でも説明される。
――
要するに、経済悪化の理由のほとんどは、人口の増減で説明が付くのだ。これほどの急激な人口構造の変化があると、あとは生産技術の進歩が少しぐらいあってもなくても、ほとんど焼け石に水ぐらいの効果しかない。
――
そして、以上のことからすると、対策もまたわかる。それは、
「日本経済の質を抜本的に改革すること」
なんかではない。小泉純一郎ならば「構造改革!」と唱えるところだろうが、そんなことをいくらやっても無駄である。
なすべきことはただ一つ。こうだ。
「少子化の解消」
つまり、生涯出生率(合計特殊出生率)を 2.0 以上に引き上げることだ。そうして若者人口の減少を食い止めることだ。……これこそが最大の経済対策なのだ。
【 関連項目 】
ではどうやって少子化対策をやるんだよ……という疑問が生じるだろう。それについては、下記項目を見るといいだろう。そこにちゃんと正解が書いてある。
→ 少子化の原因は意外にも……: Open ブログ
※ これを読むと、「ニワトリと卵」の話を思い浮かべる人もいそうだが、別に、そういうことではないので、素直に読むだけでいい。
【 関連サイト 】
野口悠紀雄の論説。
→ 日本人は国際的に低い給料の本質をわかってない | 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」 | 東洋経済
日本人の実質賃金が低下したのは、円安のせいだ。アベノミクスが円安に導いたのが良くない……という主張。
たしかに円安のせいで実質賃金は低下したが、だからといって円高にすればいいというものでもない。そうすれば労働者の生活の質は上がるが、景気が悪化して失業率が上がる。痛し痒しである。
この件に対する正しい経済政策は、こうだ。
「為替に介入して強引に円安に持ち込むのではなく、輸入関税を引き下げて、物価を下げることで、実質賃金を上げる」
この方法は、前に別項で論じた。
→ 野党の取るべき公約: Open ブログの 4。
※ なお、経済政策の正しい方法は、為替の介入で円高にすることではなく、景気の回復で経済力を強化することで自然に円高をもたらすことだ。そのための方法は、上の 【 関連項目 】 に書いてある。
【 追記 】
人口減を補償する(穴埋めする)要因もある。それは女性就業者の増加だ。
・ 無職でなく有職になる女性が増えた。
・ 未婚率が上昇して、結婚退職する女性が減った。
・ 結婚退職後に復帰する女性が増えた。
この3点で、女性就業者が増えたので、生産人口減をいくらか補っている。とはいえ、その規模は小さいので、生産人口減を完全に補うには、まったく不足している。
【 関連サイト 】
【 追記 】
『日本経済の問題はデフレではなくwageless growth』(note)
https://note.com/prof_nemuro/n/n454d2e26738e
後20年ぐらいの人口がどうなるかもうわかってます
生まれてますから。ずっと減少が続き悪化する一方の日本から出て出稼ぎに行くのも10年、20年後あたりには普通になりますね。日本にいるのは行き場のない老人ばかり
現状維持が続くと思ったら甘い。
どうしようもないと思って、放置すれば、このあと、奈落の底に落ち込む。それを食い止める意思があるかどうか。
ちなみに、立憲の対策:
立憲、子ども関連予算を倍増 児童手当拡大や給食無償化 :朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASPB36TZVPB3UTFK00F.html
クルーグマンが管理人さんと同じこと
(生産人口の低下が原因)を仰っています。
ただクルーグマンは移民(や外国人労働者)を
増やしてカバーする方法もあると
述べていましたが管理人さんはその点はどう
思いますか
クルーグマンはそこを区別していないんだよね。
https://president.jp/articles/-/46006?page=1