2021年09月28日

◆ 所得税減税は金持ち優遇

 「年収1000万円程度以下の所得税実質免除」という公約を、立憲民主党が打ち出した。だが、これは金持ち優遇である。(党の方針と矛盾する。)

 ※ 最後に 【 追記・訂正 】 があります。

 ――

 「年収1000万円程度以下の所得税実質免除」という公約を、立憲民主党が打ち出した。
  → 枝野代表が「分配なくして成長なし!みんなを幸せにする経済政策」を発表 #政権取ってこれをやる Vol.6 - 立憲民主党

 これを聞いて、「所得税減税は素晴らしい」と思う人が多いようだ。実際、はてなブックマークでは、大絶賛である。
  → はてなブックマーク

 だが、それは勘違いだ。所得税というものは、大部分を金持ちが負担しているのであって、中所得以下の庶民が払う所得税の額はたかが知れている。そんなものを減税しても、喜ぶのは(少数派である)金持ちだけであって、(多数派である)一般庶民には恩恵はわずかしかもたらされないのだ。つまり、立憲民主党の政策は、ただの「金持ち優遇」であるにすぎない。

 ――

 このことは、次のグラフを見ればわかる。


 年収 1000万円以下の人の払う所得税の割合は、かなり少ないとわかる。
 年収 500万円以下ならば、なおさらだ。ごくわずかの所得税しか払っていない、とわかる。

 それに対して、「いや、おれは税金をいっぱい取られているぞ。毎月の給料で、税金を天引きされた残りの額は、かなり少なくなっているぞ」と思う人もいるだろう。しかし、グラフを見てほしい。天引きされている額の多くは、住民税(灰色)と、社会保険料(橙色)なのだ。所得税(青色)は、ごくわずかでしかない。
 一方、高所得者では、所得税(青色)の比率が半分以上となる。だから、富裕層にとっては、所得税減税の効果がすごく大きい。

( ※ 上のグラフは、比率を示しただけだ。実際の額は、「比率×金額」になるので、高所得者層のもらえる額は、上のグラフよりも圧倒的に多くなる。)

 ――

 もっと細かく見るために、実額で調べよう。


shotokuzei-hyo.jpg
出典:ネイチャーグループ


 年収 500万円では、所得税が 14万円弱。それに対して、住民税は 25万円弱、社会保険料は 71万円弱。所得税の占める割合はごくわずかだとわかる。だから、所得税が免除されても、減税の額はたいした額にはならないのだ。所得税減税で潤うのは、金持ちばかりであって、一般の庶民にはたいして恩恵は巡ってこないのだ。
 「所得税減税で大儲け」というのは、(ただの)ぬか喜びなのである。

 ――

 では、かわりにどうすればいいか? 
 そのことは、最初の図を見ればわかる。所得税よりも、住民税や社会保険料の方が多いのだから、こちらを免除・減額すればいいのだ。その方がはるかに効果的である。

 ※ 減額の形は、税や社会保険料のうちのどれを選んでもいいようにするといい。それには、マイナンバーに連動した「ID口座」を使うといい。この件は、前に述べた。
   → ID番号と ID口座: Open ブログ

 ――

 だが、もっといい方法がある。それは、こうだ。
 「一律で定額を給付する」
 これは前に「一律で 10万円を給付する」というのと同様である。ただし、今回は所得補償の意味があるので、子供は除いて、大人だけとする。また、定額の所得が保証されている年金受給者(65歳以上)も除くことにする。(ただし子供については、半額を給付することにしてもいい。)
 その場合、一人あたりの額はどのくらいになるか? それを知るには、日本全体の所得税収を見るといい。


shotokuzeishu.jpg
出典:所得税収の推移:内閣府


 所得税収は 20兆円である。対象となる人口を1億人としよう。(日本の総人口は 1.263億人である。)
 20兆円を1億人で割れば、1人あたり 20万円の給付となる。夫婦ならば 40万円だ。これが「一律で定額を給付した場合」の額だ。(子供二人に半額給付ならば、さらに 10万円+10万円が追加されて、60万円となる。)

 一方、所得税減税では、どうか? 世帯収入の中央値は 437万円(出典)であるから、その所得税額は 10万円である。
  → 所得税額 早見表

 結局、対比すると、こうなる。
  ・ 所得税減税では、1世帯につき 10万円の還付
  ・ 一律給付では、1世帯につき 40万円の還付。( or 60万円)


 一般庶民にとってはどちらが有利かは、自明だろう。
 しかし、立憲民主党は違う。この党は、金持ちに 100万円や 200万円もの高額の減税をなして、その分、一般庶民の減税を削り取ろうとする。つまりは、金持ち優遇をしようとする。

 しかも、呆れたことに、自分で自分のやっていることを理解できていない。自民党ならば、もともと「金持ち優遇」「資本家優遇」を標榜する政党だから、金持ち優遇をするのは不思議ではない。しかし立憲民主党は「庶民を優遇」「社会的格差の是正」を標榜する政党だ。それでいて、真逆の「金持ち優遇」となる「所得税減税」を実施しようとする。
 自分で自分のやっていることを理解できていない。自己矛盾であり、狂気の沙汰だ。まったく呆れたものだ。

 《 注記 》

 「所得税減税では、1世帯につき 10万円の還付」
 と述べたが、これは話を単純化している。現実には、もっと少ない額となる。なぜなら、所得税は世帯に課税されるのではなく、個人に課税されるからだ。単身者は別だが、夫婦で共働きをしているなら、年収 440万円でも、妻が 110万円で夫は 330万円、というふうになる。この場合は、所得税は 10万円よりもずっと少なくなる。したがって、所得税免除で還付される額も、10万円よりもずっと少なくなる。
 「 40万円が還付されると思ったら、10万円しか還付されないのか。ぬか喜びだった」と悔しがっているところへ、追い打ちをかけて、「 10万円どころか、その半額ぐらいしか還付されませんよ」となるわけだ。
 その一方で、金持ちは 100万、200万、という還付を受けて、大喜びだ。



 [ 付記1 ]
 自民党の総裁候補はどうかというと、こうだ。
 総裁選の候補者4人はそろって、企業の粗利益に占める働き手の取り分を表す「労働分配率」を引き上げようと訴える。
 河野氏は、アベノミクスが「賃金まで波及してこなかった部分がある」と認め、労働分配率を一定水準以上にした企業には、法人税の負担を軽くする特例措置を設けるとする。
( → 総裁選、各候補が賃上げ策 税制で誘導/非正社員の格差解消:朝日新聞

 これは「法人税減税」という形だが、国が出した額の何倍かの金が賃上げとしてもたらされることになる。(企業が賃上げをするからだ。)
 その点では、レバレッジが利いている分、頭のいい方法だとも言える。少なくとも、立憲民主党の公約よりは、ずっとマシだ。
 ただ、もともと賃上げの余裕がない赤字企業に勤務する労働者は、賃上げができないので、給付の対象外となる。恵まれた労働者はますます恵まれ、貧しい労働者はますます貧しくなる。格差はいっそう拡大する。(労働者のなかで。)
 この政策は、単独の政策として小規模にやるのならば、好ましいものだが、20兆円というような巨額の規模でやるには、大いに疑問符が付くと言えるだろう。
( ※ 河野太郎は、「オレって頭いい」と自惚れそうだし、それに拍手喝采する人もいそうだが。)

 [ 付記2 ]
 立憲も自民も駄目なので、残るのは共産党だけか……と思ったが、共産党の公約には、減税のような項目はなかった。
 公明党だけは、「一律 10万円の給付」を公約としているが、対象は「 18歳以下の未成年」だけだ。
  → 公明、子どもに一律10万円支給 衆院選公約、0〜18歳
 
 「全国民に一律 10万円の給付を数回」というふうに公約しているのは、ただ一つ。理想党だけだ。
  → 理想党

( ※ 理想党は、私がつくった、ネット上の仮想政党です。)

 [ 付記3 ]
 立憲の公約には、「低所得者への給付金支給」という話もあるが、これはたいして意味がない。たぶん所得税還付とならない人が対象だろう。となると、「子連れで 200万円、単身で 150万を下回るような最底辺層に、給付金を5万円を出す」というような話だろう。……こういうのは、普通の人には関係がない。最底辺層への給付は、特別な例外にすぎない。

 [ 付記4 ]
 「勤労世帯ばかりが給付を受けて、高齢者に給付が来ないのは、不公平だ」
 と思う高齢者がいるかもしれない。だが、やむを得ないのだ。なぜなら、この給付の原資となるのは、「将来の所得税増税」だからだ。
 勤労世帯ばかりが給付を受けるとしても、将来は勤労世帯ばかりが増税を課される。だから、これはこれで仕方ないのだ。年金生活者は、あくまで一時的な増減とは無関係になるのだ。



 【 追記・訂正 】
 あとで考え直したら、本項の趣旨には誤りがあった。
 「所得税収 20兆円を免税にしたら、1人あたり 20万円の還付」
 というふうに試算したが、これは妥当ではない。立憲の公約は、(金持ちを含めた)全世帯の減税ではなく、もともと 1000万円以下の世帯所得のみ減税であるからだ。その場合には、対象の税収は 20兆円にはならず、もっとずっと少なくなるだろう。それが免税になっても、1人あたりの金額はかなり少なくなる。
 均等の還付額は、所得税の平均額になるが、その場合には、
  ・ 500万円以上なら、数万円の損
  ・ 400万以下なら、数万円の得

 というふうになるだろう。というわけで、あまり大きな差は付かない。すでに本文中で示した額よりは、損得の幅は大幅に縮小する。

 それでもまあ、「所得税の還付よりは、一律で定額の還付」の方が、低所得者には有利だ、とは言える。(額は先の試算よりも小さくなるが。)
     ※ 高所得者の損得は? 立憲の公約でも、一律で還付の場合でも、高所得者は対象から はずすことにすれば、どっちでも同じである。つまり、「現状通りであって、損得なし」となる。

 ――


 ただ、「所得税減税」という方式が、筋の悪い方式であることは、本文中の試算から明らかになるだろう。つまり、「 1000万円という限度を設けずに、所得税をすべて免税にすれば、金持ちばかりが莫大な利益を得て、一般庶民には恩恵が来ない」ということが、本文中の試算からわかる。

posted by 管理人 at 23:58| Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
国民民主党は一律給付を公約にしている。
https://new-kokumin.jp/policies

立憲民主党よりマシだ。
Posted by スライ at 2021年09月29日 06:40
 そうか。国民民主党というのもあったんだ。先日、悪口を書いたばかりだから、失念していた。

 国民民主党は、政策はいいのに、他の政党との関係が破壊的なのがまずい。
 あちらがよければ、こちらがまずい。ままなりませんね。
Posted by 管理人 at 2021年09月29日 08:00
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