2021年09月26日

◆ 日本独自の治験は不要だ

 コロナのワクチンの承認が遅れたことで、「速さと安全性をどう両立させるか」が問題となっている。

 ――

 朝日新聞が報じている。
 政府は、ワクチンの承認審査のあり方を見直す方向で近く本格的な検討を始める。新型コロナウイルスのワクチンの承認が欧米から2カ月ほど遅れたことが背景にある。これまでよりも迅速な承認をめざすが、安全性との両立が最大の課題だ。
 新型コロナのワクチンは欧米では昨年12月に米ファイザー製などの使用が認められ、接種が進んだ。一方、日本で新型コロナのワクチンが承認されたのは今年2月。審査を迅速に進める「特例承認」が適用されたが、それでも欧米から2カ月遅れになった。
 遅れの理由の一つとされるのが、厚生労働省が国内の治験データの提出を企業に求めたことだ。ワクチンの有効性や安全性には人種差もあるとし、国内でも治験が必要と判断した。
 ファイザーは海外で4万人あまりを対象にした臨床試験(治験)の結果をもとに昨年12月に承認申請。だが、アジア人のデータは少なく、日本人に限定して調べてはいなかった。このため、日本人160人を対象にした国内の治験データを同社が今年1月末、追加で提出。その後、承認された。
( → ワクチン承認、速さも安全性も 両立を模索、審査見直し検討:朝日新聞

 速さと安全性を、何とか両立させたいのだが、現実にはそうは行かない。双方は、あちらが立てばこちらが立たずで、排反的な関係にある。速さを優先させれば、安全性が下がってしまう。……というわけだ。
 では、どうすればいい?

 ――

 はてなブックマーク では、「安全性を優先するのが第一であり、そのためには承認が遅れても構わない」という意見が多い。つまり、現状追認である。しかし、そのせいで、日本ではコロナの感染者が急増した。仮に2カ月早く接種が進んでいたら、あれほどの感染爆発は起こらなかったはずだ。


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日本のコロナ感染者数(→ Worldometer


 コロナのように大量の死者や重症者を出す感染症では、「早く薬を出すこと」が非常に重要なのだ。安全性にこだわって、過剰に慎重にふるまっていると、自分の失敗では人を殺さないが、病気によって人が多大に死んでしまうのだ。……ここでは判断の遅れが致命的になるのである。(まるで戦争における司令官だ。)

 とはいえ、速さと安全性は両立しがたい。あちらが立てばこちらが立たずだ。困った。どうする? 


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 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「速さと安全性を両立させることができる。それには、次の事実を理解すればいい。……治験においては、人種差にこだわる必要はない」

 人々は人種差というものを過大にとらえすぎているが、それは一種の人種差別である。人間(ホモ・サピエンス)というのは、基本的には同一の種なのであって、人種差というものをことさら考える必要などはないのだ。
 この件は、遺伝子的にはっきりと判明している。詳しくは、下記項目で論じたので、そちらを読んでほしい。
  → 治験と人種差: Open ブログ



 [ 付記1 ]
 副作用における人種差というのは、あることもあるが、そうだとしても、せいぜい「頻度の差がある」というぐらいのことであって、「あるか・ないか」というような差は生じない。
 つまり、欧米では起こらなかった副作用が、日本人では起こる、というようなことはない。せいぜい、「欧米では起こりにくかった副作用が、日本人では3倍ぐらい多く起こる」というふうになる程度だ。(イレッサもそうだ。)
 コロナのワクチンで言えば、「ワクチンのせいで死ぬ」というような重篤な副反応はほとんどなくて、「痛みや発熱や倦怠感」という程度のことが多かった。後者は無視できるし、前者は頻度が低すぎる。その頻度は、ワクチンの効用に比べて、圧倒的に小さいものだ。その頻度がたとえ 10倍になったとしても、ワクチンの効用に比べて、圧倒的に小さい。
 ここを理解すれば、「治験で時間を無駄にすることこそが最も危険だ」とわかったはずなのだが。……野蛮人というものは、それが理解できないのである。科学的思考ができないせいだろう。

 [ 付記2 ]
 人々は人種差というものをやたらと過剰に考えがちだが、人種差のほとんどは、メラニン色素の量の大小というぐらいの差でしかない。(そのせいで黒かったり白かったりするが、それだけだ。)
 それ以外の差は、あるにしても、ほとんど無視できるぐらいの差だ。(個人差に比べれば人種差などは、ずっと小さい。)

 薬の薬効や副作用について、人種差のある例というと、イレッサがちょっと有名だ。遺伝子変異の差があって、日本人では欧米人よりも、イレッサの副作用の出る割合が大きい。
 そこで、「イレッサでは人種の差があったのに、ろくに審査をしないで早く特例承認した。そのせいで、多大な薬害が発生した」という風評が出た。だが、この風評は間違いだ。
  ・ イレッサはもともと薬効が証明されていなかった。
  ・ イレッサでは副作用が警告されていたのに、無視した。
  ・ イレッサは夢の薬だという多大なキャンペーンがなされた。
  ・ 危険性を無視して多大な使用が推奨された。
  ・ そのすべては製薬会社により利益狙いだった。


 要するに、金儲けのために、あれやこれやと原則を逸脱した大量使用がなされて、危険性を無視した。そのあげく、多大な被害が発生した。そのあとで、「人種差を無視して早期承認をしたのが駄目だった」という反省が出て、「だから人種差を考慮して、じっくり治験をしよう」という流れたできた。
 だがそれは、一種の冤罪なのである。本当の原因は、メーカーの利益体質による暴走だったのだが、それを無視して、人種差のことばかりにことさら着目した。こうして人種差の問題が血祭りに上げられるようになった。

 そして、その結果は? 
 「コロナのワクチンで、無駄に治験を遅らせて、2カ月の遅延を招いて、多大な感染者と多大な死者を出した」ということだ。
 あとになってわかることだが、コロナ・ワクチンの国内治験で新たに判明した事実など、何もない。すでに欧米で多大な治験がなされていたのだから、その治験のデータを利用するだけでよくて、日本で独自の治験をする必要などはなかったのだ。なのに、そういう余計なことをしたせいで、多大な感染者と多大な死者を出したのである。

 この愚かさに気づかないと、日本は今後も度々、無駄な感染者と死者を出すことになるだろう。ほぼ永続的に。

 無知は人を殺す。その事例だ。(野蛮人というのは、そういうものだが。)

 [ 付記3 ]
 イレッサの副作用はもともと判明していた。
 《 「イレッサ」原告、全面敗訴 最高裁が棄却 》
 訴訟では国が輸入販売を承認した2002年7月当時、医療機関向け添付文書に記載した副作用の注意喚起が不十分で、製造物責任法(PL法)上の欠陥に当たるかが争点になった。
 当初の添付文書には、死に至る間質性肺炎の危険性が「警告」欄ではなく「重大な副作用」欄の4番目に記載されており、原告側は文書に欠陥があったと主張していた。
 同小法廷は判決理由で、添付文書の記載が適正かどうかは「医薬品を処方する医師の知識や能力、記載の体裁などを総合考慮し、予見できる副作用の危険性が十分明らかにされているかで判断すべきだ」と指摘した。
 そのうえで「抗がん剤には一般に間質性肺炎の副作用があり、肺がん治療を行う医師が添付文書を読めば、危険性を認識できたのは明らか」と判断。製薬会社が、イレッサ特有の急速に重篤化する間質性肺炎を予見できたともいえないとして、添付文書の記載は不適切とはいえないと結論付けた。5人の裁判官の全員一致。
( → 日本経済新聞

 イレッサの副作用は判明していなかったのではない。もともと十分に判明していた。なのに、その評価を誤って、軽んじたのだ。そして、その理由は、製薬会社の金儲け狙いだった。
 詳しい話は、下記。



 【 関連項目 】

 イレッサの問題については下記項目で論じた。
  → イレッサ:医療詐欺: Open ブログ
  → イレッサ問題の根源: Open ブログ
 
posted by 管理人 at 23:24| Comment(2) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 本稿の主旨に賛同します。なお、冒頭の朝日の記事にもある「日本人での治験」についてですが、河野大臣は、9/8のラジオ出演で次のように述べているようです(下のスポニチの記事より)。

 https://www.sponichi.co.jp/society/news/2021/09/08/kiji/20210908s00042000233000c.html

 「ファイザーは、アメリカに住んでいる日本人を集めて国際治験の中に入れてくれていた。日本からアメリカに行っている駐在員や留学生など、日本人を百何十人集めて国際治験の中でやって、 “日本人で取ったデータがあるよ” ということだった」
 「しかし、厚生労働省が “アメリカと日本では食べ物なども違うからそれはダメだ” と主張して、治験データが不十分とみなされた。それで再度国内で160人の治験をやったので、接種のスタートが遅れた」
 ただし、これが真実かはわかりません(河野氏の発言のみで裏付けはなし)。興味深い内容ではあるので、お知らせします。
Posted by かわっこだっこ at 2021年09月27日 15:13
 ↑ すみません。河野大臣のラジオ出演(ニッポン放送)は 9/8 ではなくて 9/7 のようです。
Posted by かわっこだっこ at 2021年09月27日 15:16
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