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このプランがあることは、朝日新聞が報じている。
有楽町線の延伸(豊洲駅―住吉駅)と、品川駅―白金高輪駅をつなぐ「品川地下鉄」と呼ばれる延伸計画が進んでいる。国交省が来年度予算の概算要求に費用の一部を盛り込んだ。
品川地下鉄は、品川と白金高輪の約2.5キロを結び、所要時間は約4分。羽田空港に近い品川駅と都心へのアクセスを充実させる狙いがある。
品川駅で聞いた。会社員の女性(46)は「高輪方面まで本数が少ないバスを使うこともあり、ニーズが無いわけではなさそう」。別の港区の女性(35)は「たまに麻布十番に行くのであれば便利。ただ延伸は最優先事項ではないと思う」とも語った。
( → 地下鉄2新路線、構想の行方は 豊洲―住吉・有楽町線延伸、品川―白金高輪「品川地下鉄」:朝日新聞 )
最後に地元民の声があるが、たいして喜んでいないようだ。実際、この路線にはたいして意味がないのだろう。
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はっきり言おう。私はこの新路線を史上最悪レベルの愚案だと評価する。理由は以下の通り。
(1) 北方住民
南北線の白金高輪よりも北側から来る住民にとっては、この新路線はほとんど意味がない。なぜなら、(Yahoo 路線情報 を見ればわかるが)、南北線の王子や駒込から品川に向かうときには、JR経由の方が便利だからだ。JRならば駅は1階にあるので、簡単に乗降できる。一方、南北線の新駅(特に品川の地下鉄新駅)は、深い地下にあるので、乗降が不便だ。
また、乗り換えなしで南北線で一発で品川に行ける場合には便利さがあるが、そうだとしても、現状に比べて格段に向上するわけではない。最善でも、現状と同程度か、ちょっとマシになるだけだ。大幅に向上するわけではない。
そもそも、北方住民にとっては、(都心の東京駅を横切って)品川に行くというケースは少ない。なぜなら、東京南部にある品川に通勤するのなら、東京南部や川崎・横浜に住む方がいいからだ。北方住民が品川に通勤するというケースがもともと少ないのだから、もともと需要が少ないわけだ。
なお、南行きの電車で、「白金高輪〜目黒」の乗客が非常に少ないということは、下記ページで評価されている。( ★ ひとつという評価だ。)
→ 東京メトロ南北線の朝ラッシュの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査! | たくみっく

(2) 南方住民
南方住民はどうか? 東京南部や川崎・横浜に住む人々が品川に通勤することはあるか? もちろん、たくさんあるはずだ。品川と言わず、東京駅や銀座駅のあたりに通勤する人々はたくさんいるだろう。
ただし、これらの人々にとっては、
目黒 → 白金高輪 → 品川
という路線を取るのでは、白金高輪で乗り換えが必要なので、手間と時間がかかって、大幅に利便性が落ちる。いくら距離が短くても、「1駅だけ乗って、乗り換えて、また1駅だけ乗る」というのは、ものすごい無駄手間だ。これでは利便性が大きく落ちる。
(3) 代案(目黒発)
そこで、代案を取る方がいい。つまり、
目黒 → 品川
というふうに直行する路線だ。品川と白金高輪を結ぶかわりに、品川と目黒を結ぶ路線を採用するわけだ。
これならば、利便性が格段に上がる。南方住民が都心に来るときの利便性が大幅に上がる。上の図を見てもわかるが、目黒から品川や東京に向かうときには、山手線で南方面に大きく迂回する必要がある。ものすごい遠回りをする必要がある。これは東京の鉄道の路線の大きな欠陥だった。そこで、都心に直行するために、銀座線や日比谷線ができたが、これらは不十分だった。
・ 銀座線は、渋谷と直結するが、目黒は関係ない。
・ 日比谷線は、中目黒と直結するが、目黒は関係ない。
目黒方面の客が、東京駅に行くには、現状では山手線に乗って南方向に大きく迂回するのが最善なのである。それ以外にはないのだ。これは大きな無駄だと言える。
そこで、南北線で目黒から品川へ行けるようにすれば、大幅な時間短縮ができる。
《 現行 》
目黒 → 五反田 → 大崎 → 品川
《 新案 》
目黒 → 品川
いずれにしても、乗り換えは目黒駅で1回だけだ。乗り換えの回数は同じである。しかしながら、途中の停車駅の数が大幅に減る。現行の2駅から0駅へと数が格段に減る。その分、利便性が向上する。
以上に加えて、さらに大きな効果がある。新案では、JRという別の路線に乗り換えずに、同じく地下鉄(営団)の路線になるので、料金が格安で済むのだ。南北線の乗客が JRで「目黒 → 品川」に乗ると 157円を取られる。だが、地下鉄のままなら、0円または 40円ぐらいで、目黒から品川へ行けるのだ。(距離も 1駅分の距離だけなので。)
こういうふうにメリットがいっぱいあるので、「だったら南北線に乗って都心に通おう」と思う南方住民が増えるだろう。そうすると、南北線の乗客が大幅に増えるようになるだろう。このことで営団の全体的な採算性が向上する。
ちなみに、次の記述がある。
東急目黒線からの乗客の半数近くは目黒駅にてJR山手線へ乗り換える。乗ってくる乗客もいるが、人数はそう多くはない。
さらに、目黒→白金高輪までは都営三田線と同じ線路を共有する。本数の半分は南北線、残りの半分は三田線へ向かう。
南北線単独も白金高輪始発の電車が多く設定されている。都営三田線直通列車と接続するものの、ここから先は空いている。
( → 東京メトロ南北線の朝ラッシュの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査! | たくみっく )
こういう状況だから、南北線で、目黒から北に向かう乗客はあまり多くない。
その乗客を増やすためにも、目黒と品川を直結させる路線はとても有益なのだ。(新路線によって路線全体の採算性が向上する。)
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結論。
品川発の地下鉄をつくるのならば、白金高輪と結ぶよりも、目黒と結ぶ方がいい。
[ 付記1 ]
とはいえ、反論も考えられる。
(A)
目黒から品川に行く乗客にとっては利便性は高いが、目黒から品川に行く乗客というのは、そんなに多くはない。都心に向かう乗客の大半は、目黒で三田線に乗り換えるか、目黒で JR に乗り換えるだろう。
前者(三田線)は大手町や日比谷に向かう人々。後者(JR)は東京駅やお茶の水に向かう人々。いずれも新路線は使わないので、新路線の効果は限定的だ。
(B)
山手線は、途中駅が2駅あるので、余計な時間がかかるが、そのかわり、本数がとても多いので、待ち時間が少ない。新路線は、本数が少ないので、待ち時間が多い。乗車時間が短くても、待ち時間が長いと、効果は減じる。下手をすると、逆転する。
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まあ、そうなんだけど、それでも、目黒から品川に行く客にとっては、「料金が大幅に安い」というメリットは残る。といっても、その効果は全体としてみれば、あまり大きくはないけどね。
以上からすると、新路線は、なくてもいいのかもしれない。目黒と品川を結ぶ路線の必要性はあまり高くなさそうだ。白金高輪と結ぶ路線よりはずっとマシだが。
[ 付記2 ]
ただし、上の反論を一蹴する事態も考えられる。こうだ。
「品川駅および高輪ゲートウェイ駅が、再開発によって、超高層ビルが並ぶようになり、大きな人口をかかえるようになる」
こうなると、大きな人口による莫大な乗客をさばく路線が必要となる。それを、新路線が担当できる。新路線が効果を発揮して、南方住民をたくさん運んで、多大な乗客をさばくようになる。
なお、そのためには、新路線の駅を、品川駅と高輪ゲートウェイ駅の中間に設置することが必要だ。二つの駅は 500メートルも離れていないので、途中のどこに設置しても、たいして違いはないだろう。むしろ、大深度でなく、なるべく浅い地下に設置することの方が大切だ。(水平距離よりも垂直距離の短さが大切だ。)
この場合、新駅の設置場所は、いくらでもある。(現状では更地なので。)……ただし、グズグズしていると、JR が勝手にビルを建ててしまうので、地下駅が造れなくなる。
[ 付記3 ]
将来的には、目黒での乗り換えをしなくて済むようにするといいだろう。つまり、北行きの電車は、目黒から品川に直行するようにする。それにともなって、目黒から北行きの電車は廃止する。王子方面に行きたいときは、いったん目黒で下車して、北行きの電車に乗り換える。
南行きの電車は、王子方面から南下して、目黒が終着となる。さらに南下したいときには、目黒で乗り換えて、南下する。
これでいい。というのは、南北線で王子方面から川崎方面まで一挙に乗る人はほとんどいないからだ。(前述の通り。)
一方、南方住民が品川駅まで直行するというケースは、とても多くなるはずだ。特に、品川や高輪が再開発で発展すると、品川に通勤する南方住民が増えるだろう。一般に、東京の路線は、郊外と都心を結ぶ路線が多くて、それに乗る乗客が多い。とすれば、南方住民が品川に通勤するというケースは、とて多いのだ。だから、こういう乗客のために、(乗り換えなしで)品川に直行する電車があると便利だ。
※ 南北を結ぶ電車は廃止する、と上で述べた。だが、完全に廃止するのではなく、本数を減らして残すのでもいい。たとえば、北行きの電車は、品川行きと王子方面行きを、ほぼ半々にして時刻表に載せる、というふうに。この場合、南行きは、半分が目黒止まりになる。
[ 付記4 ]
別案だが、次の新路線も考えられる。
不動前 ―― 五反田 ―― 品川 ―― 白金高輪
このような路線を作ると、利便性は非常に高くなるだろう。
この場合には、次の現行路線は廃止される。
不動前 ―― 目黒 ―― 白金高輪
( ※ ただし、完全に廃止はしないで、独立した短区間の路線として残してもいい。利用者は非常に少ないだろうが。)
( ※ 「不動前 ―― 目黒」は、地上の路線なので、ここだけは廃線にして、土地を有効利用した方がよさそうだ。「目黒 ―― 白金高輪」は、地下鉄なので、廃線にするメリットはなさそうだ。)
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なお、このような新路線を採用すると、距離が倍増以上になるので、建設コストが大幅に上がる。すると、事業としてペイするかどうかは見通しがたい。(超長期的には、ペイするだろうし、有益だろうが。)
ただし、品川以南を東急に任せて、品川以北を営団に任せれば、事業主体が二つに分割されるので、事業規模が倍増することの問題は回避できる。また、金持ちの東急なら、資金調達も容易そうだ。
よく考えると、「目黒 ―― 品川」も「不動前 ―― 品川」も、距離は同じぐらいなので、ここで述べた新案が最善かもしれない。
そのへんは、低層のビルが多くて、昼間人口が少ないので、乗客となる人口(つまり路線の需要)が少ないでしょう。従って、採算性が疑問となります。
高輪や品川には、高層ビルがたくさん建つ予定なので、人口が圧倒的に増えます。そこに通うのは、麻布十番、六本木、赤坂、四谷、飯田橋……で暮らしている住民ではなく、南方地域の住民です。特に、東急線経由の住民です。(目黒と直結した場合には。)
この場合、南北線の南側の採算性が全体的に向上します。