2021年09月09日

◆ 車椅子への乗車拒否

 車椅子への乗車拒否をするタクシーがあることが問題視されている。だが、悪いのはタクシーの側でなく、制度の方だ。

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 パラリンピックで身障者への配慮が話題になっている。そのさなかで、車椅子への乗車拒否をするタクシーがあることが問題視されている。
 東京五輪開幕直前の7月20日、帰宅途中だった地方公務員の大迫敦さん(43)は神奈川県内の自宅近くの駅から車いすでタクシーに乗ろうと列に並んだ。「荷物もあるし、バスに乗ると迷惑かも」と考えた。車いすを折りたたんで積めるセダン車の運転手に「乗りますよ」と目で合図した。だがその直後、タクシーは止まらずに走り去ってしまった。
 五輪・パラリンピックを前に、タクシーのバリアフリー化は一気に進んだ。車いすのまま乗れるユニバーサルデザイン(UD)タクシーは急増し、国土交通省によると、全国で約2万2千台(2020年3月)あり、1年で1・7倍になった。
 国や自治体の補助金が導入を後押しした。

( → (つながる空の下 第16部:下)いつもの日が、変わるまで 今もタクシー乗車拒否「わかりあう機会を」:朝日新聞

 ここで、ユニバーサルデザイン(UD)タクシーというのは、特定の車両を意味する。トヨタのジャパンタクシー(商品名)だ。

 しかしながら、この車には、大きな問題点があった。車椅子のためにスロープなどを出すと、1回に 15〜30分もかかってしまうのだ。しかも、その作業は無償奉仕であり、手数料を徴収してはいけないのだ。
  → タクシーにおける乗降介助は、介助料をとることは認められていません!

 そこで、この問題を解決するため、トヨタは装置を大幅に改良して、1回に 4分で済むようにした。
  → 20分から4分へ短縮! JPN TAXIが車いすの乗降性を大幅に改善
 さらに2019年3月に発売予定のマイナーチェンジモデルでは、車いす乗降用のスロープ構造の見直しに合わせて車両側にも改良を加え、作業時間を3分程度に短縮できるという。

 これは素晴らしいことだ。だが、逆に言えば、それまではあまりにもひどすぎたのだ。
 そして、(ここが重要なことだが) 1回に 15〜30分もかかるような古い車種は、いまだにたくさん走っているのである。とすれば、これらの車種の運転手が「 30分もかけて無料奉仕するのはイヤだ」と思うのは、当然のことだろう。
 



 
 実は、国や自治体は、このタクシーを普及させるために、莫大な補助金を出した。国は 20万円、自治体は 10〜40万円を出してきたようだ。東京都の場合は、合計で 60万円の補助金が出る。
  → クール・ネット東京 :東京都地球温暖化防止活動推進センター | 「次世代タクシーの普及促進事業」
  
 ただし、である。この補助金が出るのは、2021年までだ。つまり、 1回に 15〜30分もかかるような古い車種には、(2019年までf莫大な補助金を投入してきたくせに、 1回に 3分しかかからないような新しい車種には、(2022年以後は)補助金を出さないのだ。……時期的には、少しはズレがあるとはいえ、駄目な方には多額の補助金を出して、良い方には補助金を出さない、というふうになっている。
 
 その一方で、身障者の方には、まったく補助金を出さない。
 また、1回に 15〜30分もの手間をかける運転手にも、まったく補助金を出さない。
 補助金を出すところと出さないところを、完全に間違えている。
 結局、国や自治体が推奨したことは、こうだ。
 「 1回に 15〜30分もかかるような古い車種を購入した上で、それを一切使わないのが、最善の行動である」
 こういうことを推奨する制度があるから、運転手はそれに従ったのである。つまり、「購入するが、身障者を乗せない」というふうに。
 
 冒頭のような乗車拒否が起こるのは、もともとそういう制度設計になっていたからだ、というしかない。
 制度設計の失敗が、こういう結果をもたらしたのである。
 
 ※ どうせなら、購入時に補助金を出すのでなく、車椅子の利用の1回ごとに補助金を出すべきだった。そのためには、車椅子の利用のときには利用料を徴収するべきだった。「車椅子の利用者からは利用料を取らない」という「善意の押しつけ」が、結果的には乗車拒否を引き起こしているわけだ。
 


 [ 付記1 ]
 実は、次の情報もある。
 トヨタ自動車は2月4日、一部改良車を3月に発売することを発表。さらに、すでに販売した約1万台に対し、乗降作業を簡素化する交換部品を無償配布することを明らかにした。一部改良車では、一連の作業を3分程度まで短縮するという。
( → 車いす利用時の作業を3分に短縮、トヨタ JPN TAXI 改良車を3月に発売へ…既存車にも部品配布 | レスポンス(Response.jp)

 「交換部品を無償配布」というので、これで済んでいるように見えるが、そうではあるまい。
  ・ 交換部品を受け取っても、交換せず、古いままにしている人もいる。
  ・ 新しい部品の使い方がわからない運転手もいる。
  ・ たとえ3分でも、余計な手間(無償奉仕)をかけたくない運転手もいる。


 というわけで「部品を無償配布すればそれで解決」という具合には行かないのだ。世の中、そんなに甘くない。善意の人ばかりではないからだ。
 
 [ 付記2 ]
 では、どうしたらいいか? 私としては、こう提案する。
 「車椅子の利用には、1回 300円を徴収する」
 これならば、運転手としても無償奉仕(≒ 所得減)にならないので、十分に商売になると考えるだろう。
 「3分で 300円は高い。200円にしろ」
 という声もありそうだが、乗車時と降車時の2回があって、合計6分間がかかる。それに対して 300円なんだから、1回は 150円になる。そのくらいは払うべきだろう。
 そもそも運転手は、車椅子のストッパーを掛けるなど、人命に関わる細心の操作を強いられる。さんざん気を使うし、責任も重大なんだから、本来ならば 1000円ぐらいを徴収してもいいところだ。それを 300円(1回 150円)ならば、大バーゲンだろう。

 車椅子の利用者は、サービスがほしければ国や自治体に求めるべきなのであって、タクシーの運転手に犠牲を強いるのは筋違いだ、と理解するべきだ。自分が弱者だからといって、他の弱者を犠牲にしてもいい、と思うのは傲慢すぎる。自分が弱者であるなら、他の弱者に対しても、優しくあってほしいものだ。
posted by 管理人 at 23:05| Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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