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各店が勝手にアクリル板を設置しても、効果が疑わしいので、まともに設置しているかどうかを第三者が検証して、認証する……というわけだ。これは厚労省が音頭を取っている。
立派なことのようだが、私が調べてみたところ、難点がある。それを指摘しよう。
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まず、典拠はこれだ。
→ 厚労省通達(事務連絡)
ここに、次の文面(規定)がある。
(1)アクリル板等の設置(座席の間隔の確保)
全ての座席について、@パーティション(アクリル板等)が設置されている(※)、又はA座席の間隔が1m以上確保されていること。
この規定には、二つの問題がある。
第1に、アクリル板設置と座席間隔とが「又は」という関係で結ばれていることだ。これだと、どちらか一方があれば、他方は免除されることになる。それはあまり好ましいことではない。席がちょっと離れていればアクリル板が免除される、というのは、妥当ではない。アクリル板の設置は、すべてにおいて義務づけるべきだ。
第2に、「間隔が1m以上」というのは、短すぎる。人と人との間隔が1メートルならば、正面の人と向かいあっているとき、相手の料理との距離は 60cmぐらいになる。この距離では、容易に呼気が届くから、距離的には不適切だ。正面にいる人との距離は、2メートル以上あけるか、アクリル板を設置するか、いずれかが必要だ。なのに、そのいずれも満たさなくても「合格」になるような制度は、甘すぎる。
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さらに、別の問題もある。
厚労省通達では、「座席の間隔が1m以上」とされているが、各県の要項を見ると、この「間隔」を「座席の中心間距離」として測っていることが多い。
→ 鹿児島県の規定
仮に座席(または人体)の幅が 60cm であるとすると、次のようになる。
人体 空間 人体
60cm 40cm 60cm
←――――→←――→←――――→
←――――――――→
100cm
人体の幅が 60cm であるとすると、隣の人との間の空間は、たったの 40cm しかないことになる。実際は 40cm の間隔なのに、1メートルの間隔がある、と見なされてしまうわけだ。それで、アクリル板の設置が免除されてしまう。
これではひどすぎる。
そもそも、間隔と中心間距離は、別の概念だ。厚労省では「間隔」と規定しているのに、自治体は「中心間距離」と解釈して、測定しようとする。
これは、解釈を曖昧にしている厚労省にも問題があるので、「間隔とは中心間距離のことではない」とはっきり明示しておくべきだろう。
というか、最初から「中心間距離を 2.5メートル以上」というふうに規定しておけば良かった。それなら「間隔が2メートル以上」というのとほぼ同義になるからだ。
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ついでだが、「2メートル」という距離の規定は不十分だ、という指摘もある。
→ 対人距離2mは“不十分”米科学誌「サイエンス」|テレ朝newsト
→ 神戸新聞NEXT|せきの飛沫は2m以上飛ぶ スパコンで予測動画
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そもそも、飛沫よりもエアロゾルが空中に浮遊するのが問題だから、換気が大事だ、という指摘もある。
→ 「コロナは空気感染が主たる経路」 研究者らが対策提言 :朝日新聞
まあ、「換気が大切だ」というのは事実だから、これはこれとして、別の話として受け入れておくといいだろう。
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一方で、逆のことを指摘する見解もある。「アクリル板は無益だ」と。
→ アクリル板はコロナ予防効果が低いどころか、感染リスクを上げてしまう可能性も | 米紙が指摘する「死角」とは | クーリエ・ジャポン
しかしこれには同意しかねる。
なるほど、側面にいる相手との関係でいえば、アクリル板はあってもなくても、あまり関係はないだろう。
だが、アクリル板が有効なのは、正面にいる相手の料理に、飛沫を飛ばさないことなのだ。このようなアクリル板が有効なのであって、側面にあるアクリル板が有効なのではない。

アクリル板の設置の仕方を、研究者もまた理解できていないようだ。正面において呼気を遮断するべきなのに、側面だけにアクリル板を設置して、「アクリル板なんか、あっても効果はない」と主張する。自分自身が愚かにも誤認識している。
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小話。
ある研究者が主張した。「自動車なんか無駄だ。アクセルを踏んでも、ちっとも進まないのだから」
それを見た人が指摘した。「エンジンのキーがかかっていませんよ。自動車が進まないのは当たり前でしょ」
別の人が指摘した。「そもそもこれは展示車で、ガソリンが入っていないんです。進むはずがありません」
しかし研究者は言い張った。「いや、自動車というのは、アクセルを踏んでも決して前に進まないものなんだ。私はそれを実証した。私は正しい!」
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あっちもこっちも、トンチキだらけだ。だから、コロナは蔓延する。飲食店ではアクリル板なしで食事のし放題だから。
( ※ 側面にアクリル板はあっても、正面にアクリル板がないから。)
※ 一番駄目なのは、この問題を指摘しない専門家だ。尾身会長の分科会も、岩田健太郎、西浦博、忽那賢志も、同罪だ。
【 関連サイト 】
→ 隙間パーティションの推奨: Open ブログ