2021年09月04日

◆ 菅首相を評価する

 菅首相が退任するので、その業績や人物を評価する。

 ――

 まずは二つの評価を紹介しよう。

 (1) ホリエモンの評価

 ホリエモンは菅首相を高く評価している。
 「個人的には評価しておりまして、ワクチンを優先的に確保できたのは、素晴らしい政治的な成果だと思いますし。後期高齢者の医療費を1割から2割に上げたりとか、携帯電話の料金を下げたりとか、公約はほとんど実行できている。歴代首相の中では非常に優れた首相だったと思っております」と、その功績を称えていた。
( → ホリエモン、総裁選不出馬の菅首相は「非常に優れた首相だった」「公約はほとんど実行できている」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 これに対しては、はてなブックマークで辛らつな批判が寄せられている。
  → はてなブックマーク
  
 ま、いかにもホリエモンらしい偏った評価だ、とは言える。(マスクをしないで飲食店に入ろうとして、その店主を攻撃した人物らしい。)

 (2) 望月衣塑子記者(東京新聞)の評価

 菅首相の天敵とも言える、望月衣塑子記者(東京新聞)の評価もある。
 ――結局、菅義偉という政治家はどのような人だったと思いますか。

 菅さんは権力を維持するために人事を操り、頂点まで上り詰めた人です。
( → 菅義偉とは何者だったのか 望月衣塑子記者が語る「権力に酔って、権力に負けた」悲しき首相の最後 (3/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

 この記事には、「人事権」という言葉が何度も出てくる。やたらと人事権に着目しているようだ。




 以上で、二つの評価を紹介した。一方、私の見解を言えば、以下の通り。

 (01) 多くの業績

 ホリエモンは「菅首相は多くの仕事をした」というふうに評価しているようだ。(好意的)
 なるほど。多くの仕事をした、という点では、同意できる。ただし仕事には、悪い仕事と良い仕事がある。

 悪い仕事と言えるのは、
  ・ 学術会議の任命拒否
  ・ GoTo イート
  ・ ワクチン対策の遅れ(昨年)
  ・ ワクチン接種の大幅遅れ(今春)
  ・ 五輪開催
  ・ 国会開催の拒否

 など、たくさんある。
 特筆すべきは、コロナについては、ずっと無策であるどころか、GoTo イートや五輪開催で、多大な死者を出すような推進策を取ったことだ。このせいで、無為無策よりもずっと多くの被害が出た。もちろん、死者も多く出た。その意味で、殺人数の部門ではダントツの戦後トップだ。どこかにいる大量殺人犯よりも圧倒的に多くの命を奪ったと言える。(死者総数が 1.6万人超で、そのうち 7割ぐらいが、菅首相の政策失敗による死者だ。1万人以上になる。)
  ※ Wikipedia を見たら、戦後最大の殺人犯は、京アニの放火魔で、死者数は 36人 だ。その次が、相模原障害者施設殺傷事件の犯人で、死者数は 19人だ。1万人以上を殺した菅首相は、大幅に上回る。

 良い仕事と言えるのは、
  ・ デジタル庁の設置
  ・ スマホ料金の引き下げ

 ぐらいだ。数少ない。
 なお、この二つの業績があったのは、菅首相が立派な首相だったからではない。独裁強権的な首相であったから、独裁強権的にこの二つの事業をなし遂げたのだ。
 デジタル庁の設置というのは、普通はもっと時間をかけて、民意を集めて、ゆっくり着実にやるものだ。ところが菅首相は、鶴の一声で、1年足らずで設置にこぎ着けた。
 スマホ料金の引き下げも、独裁強権的な恫喝で実現した。普通は民間企業の経営問題には政府は口を挟まないものだし、そもそもそういうやり方が悪であるとわきまえているので、そんなことはしないものだ。ところが菅首相は「結果良ければすべて良し」という方針で、独裁強権的な恫喝で実現した。許認可権をちらつかせて、強引に「料金を引き下げろ。さもなければ ××を認めないぞ」と恫喝した。
 結局、その二つのいずれも、独裁強権的に実現した。こういうのは、普通の民主主義的な手法ではできないものだ。「悪しき体質が良い結果をもたらした」と言える。

 なお、これと似ているのが、プーチン大統領のいるロシアと、習主席のいる中国だ。いずれも独裁者が国民を弾圧して、民主主義は崩壊しているが、国民の生活だけは安定しているので、人々はとりあえずは満足している。「今さら文句を言っても、投獄されるか殺されるだけだし」と思って、諦めている面もある。
 菅首相に対しても、そういうふうに思っている人が多かったようだ。いや、今でもまだ、2割以上の人がそういうふうに思っているので、菅首相を支持している。冒頭のホリエモンもまた、その一人だろう。

 (02)独裁体質

 望月衣塑子記者(東京新聞)の評価では、「人事権」という言葉が何度も出てきた。
 しかし人事権というのは、物事の核心や本質ではない。人事権というのは、何かをなすときの手段である。それは目的ではない。手段を語るだけでは、本質は見えてこないのだ。

 では、本質とは? それについては、菅首相の本質を探るために書いた、過去記事がある。そこから一部抜粋しよう。
菅首相はどうか? 彼の方針は、こうだ。
 「ふるさと納税 / GoToキャンペーン / 学術会議の任命拒否」
 そこに共通する方針は、こうだ。
 「うまいアイデアを出しているように見えるが、実は、自分の権力を通すことだけを最優先とする。そのために、反対者を粛清する」

 これを換言すれば、こうだ。
 「国家をどうこうする(強化する)ということは目的にはなっていない。自分の権力をどうするかだけが関心だ。そして、そのために、反対者をできるだけ排除しようとする」
 学術会議の任命拒否も、その一環だ。自分の方針にたてつく学者を排除することが最大目的となっている。ここでは「学術会議を利用して、国家を強化する」というようなことはまったく念頭にない。あくまで自分の権力のことばかりが念頭にある。

 菅首相は非常に頭が悪いのだが、頭の悪い人間の常として、「自分は利口だ」と過剰に自惚れている。(その点ではトランプと同様だ。)
 かくて、自分の出したアイデアに、過剰に溺れる。
 「ふるさと納税 / GoToキャンペーン / スマホ料金引き下げ」
 こういうアイデアを出して、それを遮二無二 実行しようとする。逆らうやつがいれば、さっさと左遷しようとする。自分は利口だと自惚れており、自分のやることに逆らうやつはすべて粛清しようとする。ここでは、
 「利口な自分がやることは正しいことだから、正しいことを阻止するやつは悪人だ。悪人は排除するべきだ」
 と思い込んでいるのである。そして、「目的のためには手段は正当化される」という主義なので、その手法が違法であっても、その手法を取ろうとする。「何をするにしても法律を守った上でのことだ」という常識が通じない。だから人々が「違法だ」と指摘しても、その違法行為を貫こうとする。
 そして、違法行為を違法でないと見せかけるために、「違法だ」と指摘する人々を排除しようとするのだ。
( → 菅首相の問題を四つ: Open ブログ

 これは、菅首相が学術会議の任命拒否をしたときに、法律違反をしてまで自己の方針をゴリ押ししたことを巡って、書いた記事だ。だが、そこには、菅首相の本質が見て取れる。それはひとことで言えば「独裁体質」だ。そして、そのために「人事権」を駆使しているのである。次の形で。
 「逆らうやつはクビ」というのが、菅首相の方針だ。だからこそ学術会議の件では、絶対に譲ろうとしない。

 そのわけは、これが「見せしめ」であるからだ。つまり、「おれに逆らうやつは処罰してやる」ということだ。
 任命拒否とは、一種のクビのようなものである。つまり、菅首相は「逆らうやつはクビ」ということを誇示したいのだ。そこであえて見せしめのようなことをしたがるのだ。
( → 逆らうやつはクビ(菅): Open ブログ


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 そもそも菅首相の目的は何か? 通常の政治家なら、その権力を用いて何かをするのを目的とした。たとえば安倍首相は、「美しい日本」を掲げて、日本を右傾化させることを目的とした。
 菅首相は違う。そういうふうに政治的意味での目的(政策)はない。では、何が目的だったか? 権力を駆使して何かをすることが目的だったのではなく、権力を維持することそれ自体が目的だった。

 こうして彼は(比喩でなく)真の独裁者としての性質を帯びた。憲法も無視するし、法律も無視するし、国会も無視するし、民主主義も無視する。そうして自分の権力維持だけを大切にする。
 その意味で、スターリンやヒトラーほどの巨大さはなかったが、規模はともかく精神的な傾向は、まさしく独裁者だったと言える。(プチ・スターリンとも言えるし、スガーリンとも言える。)



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 こういう人物は、まったくの無能というのとは違う。コロナの分野では何もできずに無能をさらしているようにも見えるが、あれは無能というよりは、無知に近い。何かをやろうとしてできないのではなく、あまりにも楽観主義であるがゆえにコロナの危険性を理解できないという無知なのだ。コロナの対策を取ろうとして失敗したのではなく、もともとコロナの対策をしようとしなかったのだ。( GoTo イートや五輪開催がそうだ。)……こういうのは、無能とは異なる。
 また、ずっとサボっていたわけでもない。まともに仕事をしようという意識は、ちゃんとあった。だから、デジタル庁の設置や、スマホ料金の値下げという実績を上げることができた。
 しかしながら、その手法が問題だ。手法は常に独裁的だった。我意ばかりを通して、民意に耳を傾けなかった。聞く耳持たずで、民主主義に反した。また、法律を守るという法治主義にも反した。およそまともな知性のある人間のふるまいではなかった。……そこでは、「知性の低さ」や「倫理観の欠如」が特質となっていた。

 こういうのは、特異な精神傾向である。狂人というわけではないが、人格障害だとは言える。まともな対人関係を結べない ADHD にも似たところがある。コミュニケーション障害の気もある。(だから、記者との質疑応答や、ぶら下がり取材に応じられなかった。また、国会質問では、正面から答えることができなかった。)
 このような歪んだ人間性がある。そこに特質があると言えよう。貧しい田舎の出身であることも関係しているかもしれない。生い立ちと関連があるかもしれない。仮に、都会の豊かな家庭の出身で、優しい友人たちとの豊かな交友関係があったなら、こういう歪んだ人間性にはならなかっただろう。

 「逆らうやつはクビだ」という彼の基本方針は、彼の貧しい悲しい人生ゆえの結果だったとも言える。そして最後に、彼は誰をもクビにすることができないまま、自らが国民によって「おまえはクビだ」と言われたのである。
 ちょうど、トランプのように。










 [ 付記 ]
 どうせ退任するのであれば、せめて最後には、国会開催をしてほしかった。そうすれば「憲法違反をした首相」という汚名をかぶることもなかっただろうに。
 退任の名分に「総裁選に出馬しないのはコロナ対策に専念するため」という嘘をついて格好を付けたが、それなら「コロナ対策」の一環として国会答弁で答えるべきだった。国会答弁をサボりながら、上の名分を掲げるのでは、自己矛盾というものだ。「仕事に専念するために、仕事をしません」ということになるからだ。



 【 関連項目 】

 下記項目ではいずれも、菅首相の独裁性に言及している。

  → 逆らうやつはクビ(菅): Open ブログ
  → 逆らうやつはクビだ!: Open ブログ
  → 菅首相の問題を四つ: Open ブログ
  → リーダーの要件: Open ブログ
  → トランプと菅が支持される理由: Open ブログ
posted by 管理人 at 23:18| Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「死者総数が 1.6万人超で、」

コロナの場合は、コロナが原因かどうかは無視して集計しています。
コロナになった人が亡くなった数、ということ。

Posted by カレー at 2021年09月05日 13:33
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