2021年08月28日

◆ 人工光合成が本命

 (前項の続き)
 炭酸ガスの排出を減らそうという方針がある。だが、排出の量(プラス)を減らすよりも、排出の量をマイナスにするべきだ。人工光合成によって。

 ──

 地球温暖化の阻止のために、炭酸ガスの排出を減らそうという方針がある。これは、プラスの量を少しでもゼロに近づけよう(減らそう)、という方針だ。
 だが、プラスの量を減らすだけでなく、プラスの量を一挙にマイナスにすることが望ましい。つまり、炭酸ガスを排出から吸収へと逆転させるわけだ。そのことは、人工光合成によって可能となる。
 そして、いったんそうなれば、温暖化の進行を抑制するだけでなく、逆に寒冷化をもたらすことができる。
 ここには壮大なる「発想の転換」がある。

 ──

 ではなぜ、そういう「発想の転換」が必要なのか? それは、いくら産業面で「炭酸ガスの排出の抑制」を推進しても、ろくに効果がないからだ。なぜかといえば、人間自身が(呼吸して)炭酸ガスを排出するからだ。
 人間はどんどん数的に増加している。(人口増加だ。)
 その人間が(呼吸して)炭酸ガスを排出するからには、人間が生きているということだけで炭酸ガスの排出量はどんどん増えていく。とすれば、産業面では「炭酸ガスの排出をゼロ」にするだけでは足りず、「炭酸ガスの排出をマイナス」にすることが必要なのだ。つまり、大気中の炭酸ガスをどんどん吸着することが必要なのだ。そのためには、人工光合成を推進するしかない。

 ──

 もう少し説明しよう。
 地球上で炭酸ガスの吸収をするというと、農作物による炭酸ガスの吸収の量がとても多いとわかる。穀物や、野菜や、果物など。これらの農作物を生産することで、大気中の炭酸ガスを多大に吸収する。
 では、それによって炭酸ガス濃度を下げる効果は、どのくらいか? 莫大な量になるか? 実は、効果はゼロである。なぜなら、それらの作物が炭酸ガスをいくら吸収しても、それによってできた炭水化物を人間や家畜が口に入れて食べてしまえば、それらは体内で分解されて、炭酸ガスと化して、口から排出されてしまうからだ。(一部は糞便になってから、微生物によって分解されて、やはり炭酸ガスと化する。)
 結局、人間が農作物の形で吸着した炭酸ガスは、やはり人間が食物の形で利用してから、最後には炭酸ガスと化して排出される。だから、めぐりめぐって、(農作物については)炭酸ガスの吸収量はゼロになるのだ。
 つまり、農作物がいくら炭酸ガスを吸収しても、それによる温暖化阻止の効果はゼロである。

 ──

 となると、森林による吸収に期待したいところだが、森林面積は減少の一途をたどっており、とうてい期待できない。
 となると、残るはただ一つ。人工的な手段による炭酸ガスの吸収だけだ。
 その方法は、主として二つだ。
  ・ 炭酸ガスを地中に閉じ込める
  ・ 炭酸ガスを炭水化物に転じる。(人工光合成)


 前者は、次に説明がある。
  → CO2を地下に閉じ込める「CCS」:日経ビジネス
  →  Vol.05 CO2を回収して地中に閉じ込める夢の技術って?

 後者は、前項でも説明したものであり、炭酸ガスを水素と化合させることで、炭水化物(「炭化水素」「有機物」「でんぷん」「オレフィンなど」ともいう)に転じることだ。(人工光合成)

 ──

 以上の二通りがあるが、そのどちらであってもいい。本項のタイトルは「人工光合成」だが、「人工光合成」でなく、「炭酸ガスの地中閉じ込め」であっても同様である。
 いずれにせよ、炭酸ガスを単に削減するだけでなく、炭酸ガスを吸着することで、最終的には炭酸ガスの排出量を(トータルでは)プラスからマイナスに転じることができる。……このような方針が是非とも必要になる。
 ※ 単に炭酸ガスの排出量の削減を狙うだけでは足りない、ということ。

 ここには、「発想の転換」があるが、同時に、「方針の転換」も必要となる。
 新聞やネットではしばしば、「温暖化の阻止のために、炭酸ガスの排出量を減らせ」という話が出るが、それだけではとても足りないないのだ。単に「排出を減らす」だけでなく、もっと積極的に「吸収を増やす」という方針を取る必要があるのだ。
 そして、そのことを理解すれば、前項で紹介した「水素製鉄」というような馬鹿げた方針を取ることもなくなるはずだ。「水素製鉄」という馬鹿げた方針が出るのは、単に「排出を減らす」ことばかりにとらわれて、「吸収を増やす」という方針を理解できないからなのだ。

 前項で述べた話の奥には、もっと大きな原理的な話があるのだ……と理解しよう。



 【 補説 】
 「人工光合成」というと、「太陽光によって炭水化物を作ること」と理解される。その中核技術は、「太陽光によって水素を生産すること」である。

 ただし、注意。ここでは、原理的に二通りの方式がある。

 (1) 通常の人工光合成

 特別な金属パネルを利用して、太陽光と水から、直接的に水素またはギ酸を発生させる。たとえば、下記。
  → 世界最高効率の人工光合成に成功 CO2再利用へ前進 トヨタの研究所
 
 ここでは、植物以上の効率で人工光合成ができたと示されているが、その効率は 7.2%であるにすぎない。
 太陽光から直接的に分子化合物を生成するのは、エネルギーレベルで高いジャンプをなす必要があるので、効率的には、どうしても苦しくなる。(あまり高い値は望めない。)

 (2) 水の電気分解

 いったん太陽光発電で電気を発生してから、水の電気分解で水素を発生する、という方法もある。これは、
  ・ 太陽光からの転換は、電子だけで行う。(分子なし)
  ・ 分子の形成は、専用の高効率の装置を使う。

 というふうに分離することで、それぞれが高い効率を実現できる。前者は 30% 以上が望めるし、後者(水の電気分解)も 80%以上の効率が実現できている。たとえば、下記。
 太陽電池の発電効率は接続する機器の電気抵抗に依存する。今回は、太陽電池と水の電気分解装置の電流電圧特性を考慮して直列接続数を最適化することで、31%の高効率で発電した電力をほぼ損失ゼロで電気分解装置に導入できた。今後、集光型太陽電池の発電効率は 35%まで向上すると見込まれ、水の電気分解における電力から水素へのエネルギー伝達効率 80%を考慮すると、太陽光から水素へのエネルギー変換効率は 28%に達すると予想される。
( → 実際の太陽光下で世界最高効率の水素製造に成功

 ここでは「太陽光から水素へのエネルギー変換効率は 28%」という高い数値が示されている。水の電気分解という方式を使えば、これほどにも高い数値が望めるのだ。
 一方、水の電気分解という方式を使わずに、太陽光を吸収するパネルで直接的に水素を発生するという方式は、はるかに変換効率が低い。水素でなくてギ酸の場合には、 7.2%という数値になる。水素の場合には、7.0% ぐらいであるようだ。
  → 太陽とCO2で化学品をつくる「人工光合成」、今どこまで進んでる?|資源エネルギー庁

 ここには技術開発の将来的な予想が掲載されている。(下図)


kouritu99.png


  つまり将来的にも、効率は 10% ぐらいで頭打ち(または成長鈍化)になることが予想されている。

 というわけで、通常の「人工光合成」は効率的に見込み薄であり、「太陽光発電」と「水の電気分解」という組み合わせにするのが、有望だろう。
( ※ これは「広義の人工光合成」とも言える。)

 ──

 なお、炭水化物を生産しても、それを食べたり燃やしたりしてしまえば、それは結局は炭酸ガスになってしまうので、元も子もない。
 炭酸ガスを吸収するには、「地中埋め込み」のような方式が必要となる。

 炭酸ガスを吸収して、炭水化物にしてから、その炭水化物を地中に埋めるとしたら、人類は長い歴史のなかで、「石油や石炭を取り出してから、その代替となる同様のものを地中に埋める」というふうにすることになる。
 過去の先祖のツケ払いみたいなことをするわけだ。親の借金を子供が払う……みたいな。
 とはいえ、子は文句は言えない。親の借金のおかげで、自分は育てられたからだ。それに文句を言うとしたら、自分で自分の存在価値に文句を言うことになるから、自殺するしかなくなる。

 というわけで、親の借金を払うために、せっせと人工光合成をしましょう。それが我が身を救う。情けは人のためならず。
 


 [ 付記 ]
 「水の電気分解を吸うと、酸素も発生する。水素は炭水化物にするからいいとして、酸素がどんどん増えると、まずいのでは?」
 と思う人もいるかもしれない。だが、大丈夫。大気中における炭酸ガスの濃度は、比率的には急増しているとはいえ、絶対値では 410ppm ぐらいにすぎない。ほとんど無視できるぐらいの微小な量だ。その半分が酸素に化けたとしても、大気中における酸素の濃度はほとんど増えない。(無視できる程度の量しか増えない。酸素はもともと大量にあるからだ。)


posted by 管理人 at 23:27| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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