2021年08月27日

◆ 水素製鉄に巨額補助金

 炭酸ガス削減のために、炭素を使わずに水素で製鉄する。そのための技術を開発するために、政府が巨額の補助金を投入するそうだ。ここには原理的な倒錯がある。   重要 

 ──

 「水素製鉄に1935億円」というタイトルの記事が掲載された。
 脱炭素社会に向けた技術開発を後押しする政府の2兆円基金について、経済産業省は24日、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を使った製鉄法の実用化に向け、10年間で最大1935億円を配分すると発表した。
 鉄鉱石と水素を化学反応させて鉄を取り出す技術の研究が進むが、技術的課題が多く、実用化のめどは立っていない。
( → 水素製鉄に1935億円:朝日新聞

 同趣旨で下記記事もある。
  → グリーンイノベ基金 鉄鋼分野の水素活用 技術開発に1935億円支援 | 鉄鋼・非鉄金属業界の専門紙「日刊産業新聞」

 ──

 「実用化のめどは立っていない」というのだから、MRJ に巨額補助金を投入して、金をドブに捨てたのと同様に、ここでもまた、巨額の金(約 2000億円)をドブに捨てるのも同然だろう。
 そもそも、これが実現可能なら、製鉄業界が自前で開発すれば済む問題だ。なのに、こんなところで政府が補助金を投入するのは、不公正も甚だしい。不当な産業補助金であり、GATT 違反の疑いもある。

 ──

 はっきり言おう。水素製鉄というのは、原理的に不可能である。なぜか? たとえそれが可能だとしても、そのための水素がないからだ。遠い将来ならば、太陽光発電の電力がありあまって、その電力で水素を製造できるかもしれない。しかしそれが可能になるのは、はるか先のことだ。そうなるまでは、水素はどこにも存在しないのだから、水素製鉄というのは絵に描いた餅であるにすぎない。
( ※ しいてやるならば、化石燃料で発電して、その電気で水を電気分解して、水素を作ることになる。しかしそれでは、元も子もない。炭素を増やすからだ。)

 ──

 さらに言おう。仮に水素ができたとしても、その水素を使って製鉄するというのが、原理的にナンセンスである。なぜか? 製鉄においては、炭素が使われるが、その理由は、炭素そのものが役立つからではなく、炭素と酸素の化合物である一酸化炭素が役立つからだ。
 一酸化炭素は、強い還元作用があり、これが鉄の酸化物を鉄に戻す。この原理が製鉄で使われる。
 一方、ただの水素は、強い還元作用がないから、製鉄をすることができない。
 つまり、「炭素のかわりに水素を使って製鉄する」という発想そのものが、根源的にナンセンスであって、原理的に不可能な妄想なのである。(それは原理的に不可能な錬金術を求めるのと同様だ。)

 ──

 しかし、それに対しては、次の反論が出るだろう。
 「水素では製鉄ができないからといって、炭酸ガスの排出を容認するのでは、地球温暖化が進んでしまう。それは容認できない」
 なるほど。
  ・ 炭素を使わないと、製鉄ができない。
  ・ 炭素を使って炭酸ガスを排出すると、地球温暖化が進む。

 というわけだ。
 あちらが立てば、こちらが立たず。困った。どうする?

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。論理的に考えて、うまい案を出そう。こうだ。
 「製鉄のために炭素を使うが、炭酸ガスを排出しない」


 ここでは、次のことに注意。
 「炭素を使うことと、炭酸ガスを排出することは、等価ではない」

 換言すれば、次のようになる。
 「炭素を使うが、炭酸ガスを排出しない方法がある」


 これならば、何も問題はないわけだ。
 そう言うと、反論が来そうだ。
 「論理はそうだろうが、そんなうまい方法があるのか? 炭素を使うのに、炭酸ガスを排出しないなんて、いったいどうやるんだ?」

 そこが頭の使いどころだ。ヒラメキというのは、こういうところで使うものだ。
 方法はこうだ。
 「製鉄という過程単独では、炭酸ガスを排出する。だが、そこで発生した炭酸ガスを、水素によって還元してしまえば、発生した炭酸ガスは消えてしまう」

 ここでは、発想の転換がある。
 「水素によって製鉄をするのではなく、炭素によって製鉄をするが、そのあとで、発生した炭酸ガスを水素によって還元する。そうすれば、トータルでは、水素で製鉄をしたのと同じことになる」


 鉄鉱石が酸化鉄であることに留意すると、次のような化学式が成立する。
 《 水素製鉄 》
 水素 + 鉄鉱石 ──→ 鉄 + 水

 《 新方式 》

 水素 + [ 鉄鉱石 + 炭素 ]
     ↓
 水素 + [ 鉄 + 炭酸ガス ] 
     ↓
   鉄 + 炭水化物

 上図では、
 [ 鉄鉱石 + 炭素 ]
 というのは、製鉄をすることによって
 [ 鉄 + 炭酸ガス ]
 となる。ここでは、鉄ができるが、炭酸ガスも排出される。
 そのあと、発生した炭酸ガスを水素と化合させることで、炭水化物ができる。これによって、炭酸ガスの排出を抑止できる。

 ──

 最後の過程では、炭酸ガスと水素を化合させることで、炭水化物を作る。これは、いわゆる「人工光合成」のことである。
     ※ 「炭水化物」とは、炭素と水素の化合物のこと。説明の仕方によっては、「炭化水素」「有機物」「でんぷん」「オレフィンなど」というふうに、他の用語で説明されることもあるが、実質的には同じである。具体的な製品名は、どのようにでもなるから、ここでは細かな種類は問題とならない。

 人工光合成については、ネット上に説明がいくつもあるから、それらの説明を読めばいい。
  → 人工光合成 - Google 検索
  → CO2を“化学品”に変える脱炭素化技術「人工光合成」|資源エネルギー庁

 最近では特に、人工光合成の新たな技術が開発されたと報告されている。
  → 世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功 | NEDO

 ──

 ともあれ、「水素製鉄」という馬鹿げた方法を取らなくても、「炭素を使いながら、炭酸ガスを排出しない」という製鉄の方法があるわけだ。
 そして、そのためには、「水素製鉄」という技術を開発すればいいのではなく、「人工光合成」という技術を開発すればいいのだ。しかも、その技術は、すでに開発が完成に近づいている。

 「水素製鉄」のために 2000億円を投入するというのは、馬鹿が金をドブに捨てているだけのことなのだ。


money_dobu_suteru_man.jpg

 「金なんか いくら捨てたっていいさ。どうせ他人の金だし。オレの知ったこっちゃない」




 [ 付記 ]
 この件は、第2の MRJ になるだろう。
 私が「 MRJ は駄目だ」と言ったのが 2007年(MRJ の開発開始時点)。それから 13年たった 2020年に、5000億円以上の無駄金を投じた末に、MRJ からの撤退が決まった。失敗に気づくのに 13 年もかかり、その間に巨額の金を投入した。
 水素製鉄もまた、同様だ。私が指摘してから、世間がその問題に気づくには、13年ぐらいかかりそうだ。その間に巨額の金が投入されるだろう。そして 13年ぐらいたったあとで、「 13年前に Openブログで指摘されていたのか」と気づくのである。



 【 関連項目 】

 → 製鉄の炭酸ガスを減らすには?: Open ブログ
 → 製鉄所の石炭の削減: Open ブログ
posted by 管理人 at 22:23| Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水素製鉄が机上の空論はは皆さんご存じであって
マヤカシ
皆さんブレイクスルーを待っています。

エネルギー換算でCHやCの持つエネルギーの
H2は4分の1以下
且つ運べない(運搬効率が数分の1)

石油運搬のメタンやアンモニアで三割程度
石炭もコークスになると半分

比較の対象はコークスとしても、
水素で賄うには数倍の水素等量数が必要

アンモニアで運んだとしても石炭の数倍の運搬
物流はエネルギー等量でコストが決まります

製鉄やセメントの石炭代替えの炭素中立材料は
バイオコークスくらいしかありません。

それ以上は無駄な議論

そもそも水素製鉄、水蒸気爆発の危険が一杯
危険であり、ロスも多大。
投資家を騙しているだけで
ブレイクスルー待ちが見え見え

水素製鉄を挙げる経産省、
原発頼みが見え見え。
水素FCと同じく、日本を海溝の底に沈める気か
Posted by メルカッツ at 2021年08月29日 21:26
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