2021年08月07日

◆ 名誉白人バイアス

 日本人である自分を、白人の同類であると見なしたがることがある。これを「名誉白人バイアス」と呼ぼう。

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 日本人は有色人種なのだが、それを素直に認めることができない。自分は有色人種ではなく、白人の同類だと思いたがる。つまり名誉白人だと思いたがる。
 こういう思考の偏向がある状態を、「名誉白人バイアス」と呼ぶことにしよう。この概念を導入すると、物事がわかりやすくなることがある。

 一般に、白人へのコンプレックスが強い人ほど、自分が有色人種であることを認めたくないので、自分を白人と同類のものだと思い込みたがる。そこで「名誉白人バイアス」にとらわれるものだ。
 しかし、いくら思い込もうと、有色人種はしょせんは有色人種である。日本人が白人になるわけではない。「名誉白人バイアス」にとらわれると、事実を正しく認識することができなくなるものだ。
 こうして誤認が起こりやすくなることを、「名誉白人バイアス」という概念で理解できる。

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 先日、フランスのサッカー選手が日本人を差別する発言をしたと、話題になったことがあった。
  → 「完全に一線を越えてしまっている」 デンベレ差別発言: J-CAST
  → 「人種差別発言」とその「背景」を現地在住翻訳者が解読

 これに対して、作家の辻仁成と、(2ちゃんねる創始の)ひろゆきが、「差別ではない」という(擁護の)論陣を張った。
  → 退屈日記「仏サッカー代表選手が日本人大差別の報道を分析。くそ野郎は誰だ!」
  → サッカー仏代表の日本人差別、ひろゆきは擁護も“ネイティブ”ダバディ氏は憤怒

 このあと、F爺という人が批判した。
  → 論破王ひろゆきこと西村博之さん、在仏53年の言語学者(F爺)に論破されてしまう
  → 日本人・極東人差別者デンベレとグリズマンを擁護する不可解な日本人 - F爺・小島剛一のブログ
  → ひろゆき氏を論破した言語学者 在仏50年超の“F爺”| デイリー新潮

 他にも第三者の意見があった。
  → ひろゆきのフランス語レベルとサッカー選手の差別動画
  → 翻訳は難しい。。。デンベレ&グリーズマン選手の発言の日本語訳は、どう変だったか:サッカー界の差別問題(今井佐緒里) - 個人 - Yahoo!ニュース

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 ネイティブのフランス人は「差別だ」と見なす人が多いのに、なぜか日本人が逆張りふうに擁護をして、「差別ではない」と言い張る。これは不思議である。
 日本人ならば、自分たち日本人が差別をされたことで、怒るのが当然だ。なのに、怒るどころか、差別をした相手を(過度に)擁護する。それも、自分の稚拙なフランス語による誤読を根拠にして、理屈にもならない理屈を繰り出す。まったく不思議である。

 ──

 いったい、どうしてか? その謎は、冒頭の「名誉白人バイアス」という概念で理解できる。辻仁成と、ひろゆきは、自分のことを「有色人種」だとは思っていないのだ。自分のことを「名誉白人」だと思っているのだ。
 だから、差別をした文章を見ても、「これは差別じゃないんだ。日本人が差別されるはずがないんだ。だって日本人は名誉白人なんだから」と思うわけだ。

 ──

 これはどういうことか? なぜ彼らは自分を「名誉白人だ」と思いたがるのか? それは、「自分は有色人種だ」「自分たちは人種差別される側だ」「自分たちは黒人と同類扱いされる」ということを、認めたくないからである。自分たちはあくまでも白人と同じ側に立つと信じたいからである。

 もちろん、現実には、そんなことはない。フランスは人種差別の強い国であり、特に黄色人種には差別的だ。(フランスでは、黒人は国内にあふれかえっているが、黄色人種は少ないので、黄色人種には差別的だ。)
 こういう社会と直面していれば、「フランス人は人種差別をする」ということが、はっきりとわかる。F爺も言っている。
 私はフランスで働き、生活の糧を得てきました。極貧だった時期もあります。その頃は、市場で野菜を買うのにも、捨て値でもいいから売ってしまいたい様子の店で値切らなければなりませんでした。ありとあらゆる場面で、フランス語で意思疎通を行ってきました。差別されたことは何千回もあります。
( → ひろゆき氏を論破した言語学者 在仏50年超の“F爺”小島剛一氏が語る日本人差別 | デイリー新潮

 しかし辻仁成や、浩之は、そういう体験がないようだ。というのは、たぶん、引きこもっているからだろう。
小島:翻って、ひろゆき氏はどうでしょうか。氏はフランスに住んでいるのかもしれませんが、フランスで働いているわけではなさそうです。生活の原資は主に、日本での活動で得ているのでしょう。日々、どれくらいの頻度でフランス人と会話をしているのでしょうか。
 買い物でも、スーパーなら店員と話をする必要はありません。タクシーに乗る時でも、行き先は紙に書いたり、スマホに表示させたりすれば行ってくれます。お金さえあれば、フランス語が全くできなくとも、フランスでの生活は可能です。
 ひろゆき氏は相当に裕福な方だと聞いています。どこの国の人でも、金持ちには優しいでしょう。私は八百屋以外の商店でも、値切ろうとしたわけでもないのに、店員に人種差別的な嫌味を言われた経験がたくさんあります。一方のひろゆき氏は、パリで「この国が気に入らないんだったら、さっさと自分の国に帰れ」など、外国人差別・人種差別の痛罵を浴びせかけられた経験はお持ちなのでしょうか。
 氏がパリに建つアパートの一室に住んでいるのは事実なのかもしれません。しかし、それはフランス語を使ってフランスで働き、フランスで生計を立てているのとは違います。結局、ひろゆき氏は北海道や沖縄で暮らしているのと大差はないのです。
( → 同上

 辻仁成もまた同様で、作家としてほぼ引きこもり状態なのだろう。だから差別の言葉を浴びるという体験もしていないのだろう。

 こうして二人とも、「自分は名誉白人だ」と思い込むようになる。「差別を受けた」という体験もなしに。(現実に触れずに。)


mirror_man_sad.png


 人は鏡を見なければ、自分の姿には気づかない。
 フランスで暮らしているなら、毎日、鏡のなかの顔を見て、「自分は黄色いな。白人とはまったく違うな」と日々に理解するべきだ。
 なのに、そういうことをしないから、「自分は名誉白人だ」と思い込むような、思考のバイアスに染まってしまうのである。

posted by 管理人 at 23:03| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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