2021年08月04日

◆ ロボットと小脳

 ロボットで生物を模倣するとき、脳のかわりに小脳を模倣することができる。

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 Boston Dynamics のロボットや、ホンダの ASIMO では、コンピュータが足の動きをすべて制御する。これはその場その場で足の動きをすべてコンピュータで計算して制御するわけだが、人間(または生物)で言えば、「随意運動」に相当する。「随意運動」は意識のコントロール下にある運動である。その動きを制御するのは、大脳である。(運動野と補足運動野)
 一方、いちいち意識されない運動というのもある。たとえば人間が歩行するときは、足の動き(腿・膝・足首などの動き)を、一つ一つ細かく意識して制御しているわけではない。漠然と「歩こう」と思うだけで、あとは体が自動的に歩く運動を始める。このような運動は「パターン運動」と呼ばれる。その動きをコントロールするのは、大脳ではなく、小脳である。

 従来の二足歩行ロボットは、前者のタイプ(すべてを大脳が制御するタイプ:随意運動のタイプ)のものばかりだった。
 一方、後者のタイプ(一定の動きを小脳が制御するタイプ:パターン運動のタイプ)のロボットも考えられる。このロボットでは、「体が倒れかける」というような突発事象が起こったときには、自動的に「随意運動」に切り替わるが、それ以外の単純な安定的な二足歩行は、「パターン運動」だけで済ませることができる。

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 以上のことを、私は前から考えていたのだが、特に公表はしないでおいた。
 ところが、これに似た話が、新たに報道された。下記記事だ。
「猫歩きロボット」というタイトルで記されている。 
 大阪大の研究チームは猫が歩く様子を再現するロボットを作り、ちゃんと歩くのに不可欠な神経回路の候補を特定した。
 四足の動物が歩く仕組みはこれまで、脳や脊髄(せきずい)の神経回路が複雑に関係すると考えられていた。
 しかし最近の研究で、簡単な反射だけでうまく歩けることがわかってきた。反射とは、意識や意志とは関係なく刺激に対して体が反応すること。神経の司令塔である脳は関与せず、「現場」のみの判断で動くことを意味する。
 工学研究科の大学院生だった谷川豊章さん、増田容一助教らの研究チームはこれまでの猫の歩き方の研究から、ひざがぐっと伸びてくると腰を伸ばし、逆に腰が伸びるとひざが伸びる、という「反射回路」が重要ではないかと考えていた。
 そこで、猫の神経回路や筋肉の特性を再現できるロボットを作り、この反射回路の仕組みを足に入れた。
 すると、反射回路があるとちゃんと歩けるのに、回路の一部を切ると足並みが乱れてしまい、うまく歩けなくなることがわかった。
 また1990年代に猫を使って行われた実験で、足首を伸ばす筋肉の神経を電気的に刺激すると、脚が地面についたままになり、次の一歩が踏み出せなくなる現象が起きたが、これもロボットで再現できた。
 今回の猫型ロボットは動物が歩く仕組みを知るのが目的で、体の節々の反射回路のそれぞれは勝手に動いており、「脳」に相当する仕組みはない。
 「歩き方が猫と完全に同じというわけではないが、これこそが猫の歩行を生み出すものという回路の候補を見つけた」と増田さんはいう。今後も同じような手法で四足動物の歩き方に迫っていきたいという。
( → (ぶらっとラボ)“猫歩き”ロボットで解明:朝日新聞

 ここでは、「小脳」よりもさらに下位の「末端神経」レベルにおける「反射」が関与している。この「反射」と「小脳」とをうまく組み合わせることで、自然な「歩行」ができることになる。

 なお、上の記事では「足首を伸ばす」という点に触れられている。これは大切だ。「足首を伸ばす」というのは、前項で言う「(くるぶし)」に相当するからだ。踝の部分を回転させるときに、「足首を伸ばす」という動きが生じる。
 このような動きは、踝を固定したタイプ( Boston Dynamics のロボットや、ホンダの ASIMO )では、ありえないことだった。しかるに、前項のダチョウ型ロボットや、本項の猫歩きロボットでは、「足首を伸ばす」(踝が回転する)という動きが生じるのだ。



 [ 付記 ]
 ただし、この大阪大のロボットは、以上の観点からすると、きわめて未熟なものである。というのは、関節部分が2箇所しかないので、下半分が「スネ」なのか「 foot 」なのか、区別しがたいのだ。





 この大阪大のロボットは、本項の話題で扱うには不十分な例であって、ASIMO と(原理的には)同レベルの例と見なした方がよさそうだ。
 


 【 関連サイト 】

 → 【大阪大学】歩くネコをロボットで再現、反射回路を新発見 〜四脚歩行ロボットで動物の生体解明へ〜 - 大学プレスセンター
 
posted by 管理人 at 21:33| Comment(0) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
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