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次の記事がある。
→ 「ダチョウのように走る下半身だけの二足歩行ロボット」 - GIGAZINE
動画はこれだ。
ここから一部の画像を切り取ると、下記になる。

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さて。これは人間や哺乳類と違って、膝が(前でなく)後ろに折れているように見える。だが、そう思うのは誤認である。実は、膝のように見える部分は
上の画像で言えば、
・ 灰色部分 …… 大腿部(太腿)に相当
・ 赤色部分 …… 下腿部(スネ)に相当
・ 黒色部分 …… foot(足指〜踵)に相当
となるので、
・ 灰色と赤色の交点が、膝。
・ 赤色と黒色の交点が、踝。
となる。
黒い部分は、膝下(スネ)であるように見えるが、実は、巨大な足(足指〜踵)なのである。
なお、ダチョウと人間の骨を対応させた図もある。
→ 対応図
人間だけなら、下図だ。

出典:goo国語辞書

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さて。この二足歩行ロボットは、従来の二足歩行ロボットとは原理が異なる。そのことを理解するには、私が前に書いた項目を見るといい。
→ 二足歩行ロボットの原理: Open ブログ
ここでは次のように記している。
ASIMO を初めとする二足歩行ロボットを見ると、原理的な難点があるとわかる。
ASIMO の歩行は、……こうだ。
「足首を固定する。くるぶしから下を回転させない。体の上下動の吸収は、足首を使わずに、膝下と膝で吸収する」
同様のことは、Boston Dynamics が開発したロボットにも当てはまる。
いかにも自然な歩行のように見えるが、常に膝を曲げており、足首を回転させることがない。人間の歩行とはまったく別の歩行である。
従来の二足歩行ロボットは、「くるぶしから下を回転させない」というものだった。くるぶしは固定されていた。
このような方式は、人間や動物の二足歩行とはまったく異なるものであって、エネルギーの消費量が非常に大きいものだった。(エネルギー的に非効率なものだった。)体を支えるには莫大な電力を消費するので、背中に巨大な電池を背負う必要があった。
私はこれを批判して、「このような二足歩行ロボットは原理的に成功しない。まともな二足歩行ロボットは、
人間の歩行と同じ原理による歩行(膝を伸ばす歩行)を目指せば、二足歩行ロボットはやがては実用化するだろう。……ただし、そのためには、ASIMO とはまったく異なる原理の制御技術を開発する必要がある。
ASIMO の開発の歴史は、ただの無駄だった。まったくの無意味だった。初めの方向性がまったく狂っていたからである。
ここでは、まったく別の原理による二足歩行ロボットが将来実用化するだろう、と予言している。1年前のことだ。
そして、それから1年たった現在、まさしくその予言通りのロボットが出現したことになる。「踝が(固定式でなく)可動式である」というタイプだ。つまり、「踝を中心に、その下の足部分を回転させることができる」というタイプだ。
ここでは踝を回転させることで、体の上下動を吸収している。足を後ろに蹴ったときには、foot 部分(足首〜踵)が垂直になるので、腰を上に持ち上げる効果が生じて、体の上下動を吸収する。
このとき、体重を支えるのは、垂直になった foot 部分(足首〜踵)である。これが杖のように働くので、体重を支えることができる。そのためのエネルギー消費は少ない。
一方、ASIMO のような従来型のロボットでは、膝を曲げながら動力によって体重を支える。このとき、体重を支える杖のようなものはないので、電力エネルギーで体重を上に持ち上げていることになる。これでは電力消費が莫大になりすぎる。非常に非効率だ。
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以上の点からして、このダチョウ型のロボットは、とても大きな意義を持つロボットであると言えるだろう。二足歩行が初めて実用的に可能になったロボットだと言える。
このようにまったく問題なく実用化が可能となる。
ひるがえって、従来の二足歩行ロボットは、まったく実用にはならなかった。実際、ASIMO は開発中止となり、Boston Dynamics は Google から見捨てられてしまった。(会社売却された。)
そういう失敗した先行者の例とは違って、今回のダチョウ型ロボットは、大いに前途が有望であると言える。
ただし、その本質は、「ダチョウ型であること」にあるのではなく、「踝を持つこと」(踝から下を回転させること)にある。そこを見誤らないようにしよう。
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従来の二足歩行ロボットが失敗して、ダチョウ型の二足歩行ロボットが成功したのは、なぜか? 違いはどこにあるか? それは「生物を模倣するか否か」ということにある。
ASIMO のような従来型の二足歩行ロボットは、「工作しやすいか」「制御しやすいか」というふうに、人間の開発の都合で設計方針が決められた。そのせいで、本質的に重要なものが見失われて、「先は袋小路となる」(どんづまりになる)というような道に踏み込んでしまったのである。
ロボットのように生物を模倣する機械は、原理そのものにおいて生物を模倣する必要があるのだ。「生物よりも優れた機械を構築しよう」などという自惚れを持っていると、生物よりもはるかに低レベルなものしか創造できないのである。
まずは生物を模倣しようという謙虚さがないと、たいていのロボットは失敗するだろう。
※ ASIMO の設計者は、ガンダムみたいなものでも作りたかったのかもね。それじゃ失敗するしかないのだが。
※ 踝の部分を人間そっくりにするというのは、工作精度の点で難しいのかもしれない。しかしそれを、ダチョウ型にすることで克服したのが、今回の新型ロボットだ。そこでは、工作の難しさを克服するために、うまくアイデアを使ったことになる。そのとき、鳥という生物を見習ったのだろう。うまいアイデアだと言える。
[ 付記 ]
このダチョウ型のロボットの爪先部分は、可動式になっている。

ここが可動式である(回転可能である)ということは、この図で二つの箇所を比較するとわかる。二つの足で該当箇所を比較すると、角度が違っていることがわかるだろう。
これは何を意味するか? 実は、特に大きな意味はない。「接地するときの地面との角度を調整する」というぐらいの意味でしかない。
ちなみに、この爪先部分を大幅に省略して、ただの点のようにしてしまっても、二足歩行にはほとんど影響しない。ただし、点のようにすると、そこに体重が集中してしまって、足が地面に埋もれてしまうだろう。それではまずい。だから、点のようにはしないで、こういう可動式のものにしたわけだ。
ただし、そのことは、二足歩行そのものには、ほとんど影響していない。二足歩行に付随する、オマケふうの話題であるにすぎない。
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005300376_00000
中でもネコは、以下のサイトの骨格図のとおり、踝と爪先の間隔が長く、普通に直立している時にも踝の関節(足根関節という)の曲がりが大きいです。このロボットの開発者は、絶対ネコを飼っていると思いますね。
https://www.konekono-heya.com/byouki/kinkokkaku/arthritis.html