2021年07月30日

◆ 五輪で「日本は暑すぎる!」

 五輪で来た外国人が「日本は暑すぎる! 快適だと言ったのは嘘だ!」と批判しているが……

 ──

 この件はあちこちで話題になっている。たとえば朝日新聞。
 「五輪が開催される東京の夏は温暖で、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候です」。東京大会の招致委員会が2013年、国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルでこう説明していたことに、現在、海外メディアから批判の声が相次いでいる。というのも、開催中の東京五輪では、酷暑に苦しむ選手の姿が目立っているからだ。
 米ネットメディアのデイリー・ビーストは26日、立候補ファイルの説明について、「この時期の東京に行ったことがある人なら誰でもわかるように、それはよく言えば楽観的、最悪な言い方をすればウソだ」とする記事を配信した。
 そして記事の末尾には、スポーツコラムニストのダン・ウェツェル氏の言葉を引用した。「日本は天候について謝る必要はない。しかし、アスリートがこの環境で疲弊し続けることについては、全ての人に謝らなければならない。地獄のようにウソをついたのだ」
 米ウォールストリート・ジャーナルは25日、「東京の、時に過酷な夏の気候は、大会招致が決まった2013年当時から心配されていた」と指摘。その上で、「今まで経験した中で最悪の暑さ」「この湿度は残忍だ」などとするアスリートの言葉を紹介した。
 さらに「東京大会の主催者は、暑さの問題を小さく扱おうとしてきた」と、招致委を批判した。
 英紙ガーディアンも20日に配信した記事で、……前回の1964年東京五輪では、暑さを避けて10月開催だったと指摘した。
( → 東京の夏は理想的?「うそつき」と海外メディアから批判 - 東京オリンピック:朝日新聞

 ネット上では前から話題になっていた。
 フロリダ州出身の友人が「日本に来るまで私は【humid(湿度が高い)】の意味がわかっていなかった」と言っています。

 日本で働いてるヨーロッパの方が「ヨーロッパから知人を呼ぶ時は冬を選ぶ。たいがいの人は『過ごしやすくて良いところだ』と言ってくれる。6月とか7月に呼んでしまうと『地獄のようなところだ!』とクレームの嵐が来る」と書いてました。今回はその駄目な方
( → フロリダ州出身の友人「日本に来るまで私は【humid(湿度が高い)】の意味がわかっていなかった」 - Togetter

 選手もまた訴えた。
 テニスの男子シングルス3回戦に勝利した世界ランキング2位のダニル・メドベージェフ(ROC)が試合中、暑さに耐えかねて審判に「試合は終えられるが死ぬかもしれない。死んだら責任を取れるのか」と詰め寄る場面があった。
( → メドベージェフ、暑さで「死ぬかも」と審判に訴える/テニス - サンスポ


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 確かに日本は蒸し暑いし、試合の時間もできれば変更した方がいいだろう。
 また、日本政府が招致のときに嘘をついたというのも事実だろう。
 ただ、それはそれとして、別の視点から物事を見てみたい。「日本はひどい国だ」と批判するだけでは一方的なので、別の観点から見るわけだ。

 コロナの感染者数


 暑くて湿度が高いというのは、コロナの感染を抑止する面では、好ましいことだ。
 コロナは呼吸器を通じて感染することが多い。マスクが有効だということからもわかる。また、特にデルタ株は、空気感染(エアロゾル感染)することもあるようなので、呼吸器を通じて感染することが多い。
 そして、呼吸器を通じて感染するからには、「温度が低くて、空気が乾燥している」という状況は、好ましくない。なぜなら、そういう状況では、呼吸器の免疫力が低下して、感染しやすくなるからだ。
 鼻からノドまでは鼻腔といって、外の空気を肺に取り込む通路になっています。そこは沢山の繊毛がついた粘膜細胞で覆われていて、通過する空気を温め、湿度を上げます。その繊毛で小さなごみや化学物質、細菌やウィルスを絡めてとって、ノドや気管支、肺まで届かないように防御しています。
( → 口呼吸と鼻呼吸: Open ブログ

 気管支の部分の表面には線毛という部分があって、これがウイルスのような異物をどんどん上方に運んで、体外に排出させているそうだ。ただしその機能は、湿度が下がると急激に低下してしまうという。
 意外だったのは、湿度が 80% や 100% という高い湿度のときにも、やはりこの排出力は大幅に低下してしまう、ということだ。湿度は高ければいい、というわけではないようだ。過ぎたるは及ばざるがごとし。適度な(中くらいの)湿度がいいらしい。
( → NHK のコロナ番組: Open ブログ

 ちなみに、東京の湿度は、日中は 50〜70% ぐらいであるようだ。(天気予報による。) いくら蒸し暑いといっても、70%よりは低い値で済んでいるようだ。
 ただし、夜間や明け方になると、湿度は 80% 以上になることもある。これは、空気中の水分が変わらないまま、温度が低くなるせいで、計算上の湿度が上がるせいらしい。だから、数字上の湿度は上がっても、気温が下がるので、かえって過ごしやすいと言える。(夏の明け方は過ごしやすい。)

 ともあれ、「蒸し暑くて困る」と言っている一方では、「蒸し暑いおかげで、感染者数が少なめで済んでいる」という面もある。この蒸し暑さがなかったら、日本では感染者数は大幅に増えていたかもしれないのだ。欧州諸国のように。

 ※ 英国、フランスの新規感染者数は、日本の約3倍である。人口は約半分なのだが。一方、ドイツは日本よりも大幅に感染者数が少ない。(対策がうまく進んでいるようだ。)
  → COVID Live - Worldometer

 ※ ドイツの状況はどうか? この春までは、日本を大幅に上回る感染者数があったのだが、この夏はデルタ株の感染爆発を抑止している。コロナの封じ込めに成功していると言える。

 ※ どうしてドイツだけが成功しているのかは、よくわからない。ワクチンの接種率が高い成果と思ったが、そうではない。その数値は、ドイツだけが際立って高いわけではない。英国、フランス、イタリア、スペインなどと同様だ。いずれもほぼ 50%である。
   → https://ggle.io/4CbZ

 ※ ドイツでは、医療水準がとても高いそうだ。( → 出典 ) しかしそのことは、感染者の死を減らす効果はあるが、感染者を減らす効果はないはずだ。病院が扱うのは、病院に来た患者であって、病院に来ていない市中の人ではないからだ。だから医療水準は、関係ないだろう。(理由は不明。)

 降水量で米作ができる


 欧州に比べて、日本や東南アジアは蒸し暑いが、それは降水量が多いということを意味する。(モンスーン気候)
 降水量が多いと、米作に適する。これは人類の歴史上で、大いなる恩恵をもたらした。結果的に、アジアでは豊富な米作で、多大な人口増加が可能となった。
 一方、欧州では、降水量が少ないので、米作はできなかった。米にはタンパク質が含まれるので、米だけでも人口増加が可能だったが、小麦にはタンパク質がろくに含まれないので、小麦では人口増加は不十分だった。(飢饉による餓死者も大量に出た。)


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 日本の蒸し暑さをもたらす多大な降水量は、日本をとても豊かにしてくれたのだ。人々は「梅雨時はジメジメして気分が良くない」「夏も水分が多くて蒸し暑い」なんて言っているが、仮に降水量が少なかったら、たちまち干ばつとなって、日本中は至るところで稲作ができなくなる。
 もしそうだったら、過去の日本は、これほどの人口を維持することもできず、これほどの文化を維持することもできなかっただろう。乾燥した土地で、少数の砂漠民だけがいて、今ごろは欧州諸国の植民地になっていたかもしれない。(その後に独立したとしても、アフリカ諸国のように、ひどい状況になっていたかもしれない。)


natu-yasai.jpg
出典:無料素材画像 写真AC


 なお、多くの降水量は、多くの農産物も与えてくれる。夏のさまざまな野菜や果物は、多くの降水量ゆえの産物なのだ。日本が欧州のように乾燥していたら、食べられる野菜も、ドイツのように、ジャガイモと根菜類だけだったかもしれない。その場合には、いかに悲惨な食生活になっていたことだろう。(毎日毎日、ジャガイモとソーセージだけだったかもしれない。いや、肉類はないので、魚肉ソーセージか、大豆によるオカラ・ソーセージか。)

 日程がこの時期だったのは?


 それにしても、「7月下旬〜8月上旬」というのは、日本でも最も暑い時期だ。どうせなら、「8月中旬〜8月下旬」にすれば、もうちょっと過ごしやすくなっていたはずだ。ではなぜ、そうしなかったのか? 

 それが疑問に思えたが、たぶん、こういう理由だろう。
 「8月中旬〜8月下旬だと、台風が来そうだ。台風が来ると、試合の順延で、予定が狂う。予定が狂うと、テレビ局の都合がよろしくない。テレビ局の意向が怖かったから、順延のない時期を選んだ。そのために、選手に犠牲になってもらうことにした」

 つまり、選手が犠牲になるのは、もともとの狙いだったのである。大切なのは、何よりもテレビ局の都合だったのだ。……それが、IOC と 日本政府と、米国の民放の、三者の共通する利害だったのである。

 しょせん世の中はすべて、金が大事だ。電通もそうだし。世界はすべて金しだい。オリンピックもまた、スポーツのためではなく、金のためになされるのだ。

 (きん) メダルのためじゃなくて、(かね) のためだ。
 
posted by 管理人 at 23:35| Comment(9) |  東京五輪・豊洲 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前回の東京大会の10月っていうのが、すごく妥当だったということですね。
欧米プロスポーツの都合上7〜8月じゃなきゃだめなのだったら、もう毎回ブリスベンでいいのでは。
または、放映権料なんて全部ぶん投げてしまって、本来のスポーツの祭典としてひっそりと続けるとか。
Posted by けろ at 2021年07月31日 01:19
 それほど極端なことをしなくても、「8月中旬〜8月下旬」というのが、私のお勧めです。日程を三日間ほど増やして、順延に対応すれば大丈夫。
Posted by 管理人 at 2021年07月31日 08:42
もう1回東京でオリンピックをやりたいって人、いるのかな?それに、やるとしても時期は米国のめぼしいスポーツがないこの時期に固定だろうし、考えるだけ無駄かと。
Posted by のび at 2021年07月31日 20:50
 本サイトのほとんどは思考実験です。
 現実に何かを変える権限はないので、あくまで知的好奇心で真実を探りたい人向けです。

 真実を知るよりも現実を変えたいのであれば、自民党の政治家になるのが最短でしょう。そうすれば、現実を変えることができます。(そのかわり真実からは遠ざかります。嘘ばかりつくようになる。)

 ※ 本項は、将来どうするべきかという実利のことを考えているのではなく、本来はどうするべきであったかという仮定の話をしています。
Posted by 管理人 at 2021年07月31日 21:23
Sの人にとっては、ジョコビッチの苦言はゾクゾクするかもしれません(笑)
Posted by Hidari_uma at 2021年08月01日 00:03
 ジョコビッチ
  https://www.afpbb.com/articles/-/3359484
Posted by 管理人 at 2021年08月01日 00:17
>本サイトのほとんどは思考実験です。
>現実に何かを変える権限はないので、あくまで知的好奇心で真実を探りたい人向けです。

以前からこのサイトを見ていましたが、はじめて知りました。
ブログを運営するポリシーの表明であり、誤読を未然に防ぐためにも、
流れしまうコメント欄に記載ではなく、
サイトのトップ「旧 meblog から 移転しました…」の欄に明記するべき内容ではないでしょうか。
Posted by そもそも at 2021年08月01日 11:44
 そんなことはいちいち書かなくとも、個人ブログだと判明している時点で、自明です。

 これはブログなのであって、政府や大学の公式サイトではありません。何の権限もないのは自明でしょう。そんなことをいちいち書いてあるブログはありません。誤解の余地もない。
Posted by 管理人 at 2021年08月01日 11:51
 最近では尾身会長が菅首相を動かそうとして、さんざん努力しています。(しかし菅首相は聞こうともしない。)
 https://dot.asahi.com/dot/2021073100017.html

 やはり政治を動かすためには、政治の場での行動が必要なので、それは「真実とは何か」を探るのとは別の分野のことです。
Posted by 管理人 at 2021年08月01日 14:36
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