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「逆らうやつはクビだ!」というのは、独裁的な人がよく言うことだ。トランプも大統領になる前から、テレビ番組で「 You're fired!」(おまえはクビだ!)というフレーズを発し続けていた。
このことを頭に入れておくと、今回の開会式の不可解な「解任」の理由がわかる。
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そもそも、普通は担当者を解任するようなことはない。いくら気に食わないからと言って、きちんとした手続きで「最良」とされた担当者を、いきなり解任したりしたら、面倒なこと、このうえない。次の担当者が前よりも良くなる保証はまずないし、たいていはかえって悪化するものだ。また、新たに誰かを探すのも面倒だ。
だから、「あの部下はけしからん。だから、首をすげ替えよ」という進言を受けても、そうやすやすと解任したりはしないのが普通だ。まともな判断力のある上司(経営者・ボス)ならば、そうするものだ。
だが、菅首相だけは違う。
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今回はどうだったか? 先に次の項目で示した。
→ 開会式は簡素化?: Open ブログ」
ここで引用した記事を再掲しよう。
組織委や都の有力な関係者やJOC(日本オリンピック委員会)サイドから、唐突に有名人などの出演依頼が下りてくる。部内では有力者ごとに「○○案件」とささやかれた。
男性は「有力者が便宜を図った依頼は絶対。その度、無理やり演目のストーリーをいじって当てはめた」と明かした。
( → 東京新聞 )
この「有力者」が誰であるかについては、「森元首相と武藤事務総長(および息のかかった人)」と推定したが、下記の記事ではそれが明らかにされている。
→ 五輪開会式 初期のMIKIKO案が電通に潰された経緯 - Togetter
MIKIKO氏は自分で辞めたわけではなく、森会長や電通の意向に沿わないという理由で排除され、本人が知らないうちに電通出身の佐々木氏が新たに統括責任者に就任し、IOCに別案がプレゼンされた後だった。だがその佐々木氏も女性蔑視で辞任、そして現在の小山田氏や小林氏の辞任へ繋がっていく。 pic.twitter.com/06X0Xv0YVj
— えり (@GraceReason426) July 22, 2021
端的に言うと、森元が懇意にしてる海老蔵を入れてくれとか百合子の支援団体の江戸消防記念会を参加させろと要望出してきて、演出路線に沿わないMIKIKOを電通が排除して言うこと聞く演出家を据えた、みたいなことが今年の前半に行われましたって書いてあります。実現しちゃったね…
— フタガワカサラ (@FutagawaKasara) July 23, 2021
こういうゴリ押しがあったが、それを MIKIKO 氏が断ったから、MIKIKO 氏は解任されてしまったのだ。
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ただし注意。上の記事では「森元が懇意にしてる海老蔵を入れてくれ」というふうに記されているが、これはおかしい。仮にそうだとしたら、これは森元首相の個人的な好みであって、電通が介在していることにはならない。だから、そんなはずはないのだ。
では、正しくは? 論理的に考えれば、こうだ。
「森元首相が海老蔵を入れてくれと要求したのは、森元首相の個人的な好みではなく、電通が圧力を掛けたからだ」
そのまた理由は、こうだろう。
「開会式に海老蔵を使うことで、電通が金儲けをしようとした」
その方法は、こうだろう。
「海老蔵ならば、見映えがするので、高額の CM 契約を勝ち取れる。超一流企業と、超高額の CM 契約を結べる」
その具体的な相手企業は、五輪の協賛企業である。(スポンサー)

出典:五輪組織委
これらの超一流企業と、超高額の CM 契約を結ぶために、見映えのいい(最も高額の CM を結べそうな)海老蔵に白羽の矢を立てたのだ。だからこそ電通は、海老蔵を開会式に出演させようとしたのだ。
※ 仮にコロナがなかったなら、実際に海老蔵の高額契約 CM が日本中にあふれていただろう。(コロナのせいで、その狙いは海の藻屑となったが。)

というわけで、森元首相の圧力の背後には電通があり、電通の狙いは高額の CM 契約だったのである。それだからこそ、その障害となる MIKIKO 氏を排除しようとしたのだ。( MIKIKO 氏のプランに出てくる人物では、電通が超高額の契約をとることはできそうにないからだ。)
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そのあとは、どうしたか? 電通は野村萬斎と MIKIKO の両氏を排除しようとした。そのために森元首相に、「この二人を排除してくれ」と頼んだ。

そこでまず、森元首相は、武藤事務総長に「二人を解任しろ」と頼んだ。
武藤事務総長は、これを聞いたとき、たぶん反対したはずだ。残り期間が1年を切るなかで担当者の交替なんて、あまりにも馬鹿げていて、無謀だからだ。「任務を完璧に遂行する」というのが目的である官僚としては、「無茶を言うな」と思って、反対したはずだ。
ただし彼は、政界のなかで、うまく波乗りするのが上手な官僚だ。まずは反対するが、強くは反対しないで、判断を委ねたはずだ。
「事務局としては今さら担当替えは困難ですが、特別に政治案件とするのであれば、総理の許可を得てください」と。
これを受けて、森元首相は菅総理に頼んだ。「野村萬斎と MIKIKO の両氏を排除してくれ」と。
菅首相はそれを聞いて、「そんなの面倒臭い」と思ったはずだ。「そんなことは自分たちで勝手に決めろ。それは組織委の問題だ。いちいち総理の手を煩わすな」と。
このときは菅首相も、まともな判断力があったので、「末端の官僚の人事なんかに、いちいち介入しない」と思ったはずだ。ところが、話を聞くうちに、気が変わった。こう聞いたからだ。
「事務局長の武藤に頼んだんですが、武藤が言うことを聞かないんですよ。役人として威張っていて、政治家の言うことを聞こうとしない。困ったことだ」
「何だと。官僚が政治家の言うことを聞かないのか。それはけしからんな」
「武藤としては、菅首相の許可を得ればいいと言っていますが」
「むむ。なるほど。しかし首相がいちいち末端の人事に介入するというのもな……」
「野村萬斎と MIKIKO っていうのは、なかなか言うことを聞いてくれないんですよ。特に MIKIKO っていうのは、こっちの言うことにまったく従わない」
「何だと。女のくせに、男に逆らうのか。それは絶対に許せんな。日本の伝統の美徳を何と考えているんだ。女なら貞淑に従うのが当然だろ」
「この MIKIKO っていうのは、男よりも優秀だというのが定評で、このままでは、東京五輪の開会式は、女の開会式になってしまいます」
「何! 女のくせに、男よりも優秀だと? それはけしからんな。男の私よりも目立つわけか?」
「はい。そうです。開会式では、菅首相よりも、MIKIKO 氏の方が目立って、MIKIKO 氏のオリンピックと言われるようになるでしょう。特に、開会式が大々的に成功すれば、MIKIKO 氏の名声は圧倒的になるでしょう。他の男はみんな霞んでしまうでしょう」
「そいつは絶対に許せんな。五輪で一番目立つのは、私であるべきだ。そもそもそのために、コロナのさなかで強引にオリンピックを開くんだ。すべては私の名声と再選のためにあるのに、MIKIKO 氏の名声は圧倒的になったら、すべてはご破算になる。絶対に許せん!」
「では MIKIKO 氏は解任ということでよろしいでしょうか?」
「当り前だ。おれ様に逆らう奴は、みんなクビだ!」
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これを受けて、森喜朗は、「首相命令だ」と言って、「 MIKIKO 氏の解任」を武藤事務総長に命じた。
武藤事務総長は、「気に食わないからといって、優秀な人間をクビにしたら、あとはクズしか残らないんだが。クズの担当する開会式なんて、開会式自体がクズになってしまうんだが」と思ったのだが、「しかし、それもやむを得ない。首相が決めたら、その決定には
そう思ったので、「クズ担当者によるクズ開会式になる」とわかっていながら、あえてそれを無事に開催できるように、真面目にしっかりと勤め上げたのである。ああ、なんと健気なことか。

【 関連項目 】
→ 逆らうやつはクビ(菅): Open ブログ