遺伝子の存在だけでなく、遺伝子の発現もまた、生物に影響する。
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生物に影響するのは、遺伝子の存在の有無だけだ、と思われがちだ。だが、遺伝子の発現の有無もまた、影響する。
最もわかりやすいのは、第二次性徴の遺伝子だ。この遺伝子は、誰にも存在しているが、思春期になるまでは発現しない。思春期になって、性ホルモン(エストロゲンやアンドロゲンなど)が分泌されると、遺伝子が発現するようになり、体に第二次性徴の形質が備わるようになる。
このように、単に遺伝子が存在するかどうかでなく、遺伝子がその機能を発現させるかどうかが、重要な問題となる。
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では、遺伝子が発現するとは、どういうことか?
DNA はもともと、長い塩基の列だ。その列が折り畳まれていて、(クロマチンからなる)染色体となっている。
この折り畳まれた状態では、遺伝子は発現しないが、その一部で、折り畳まれた状態がほどけると、遺伝子が発現するようになる。
このとき、DNA から RNA への転写もなされる。
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ここで、遺伝子の発現を制御するのは、DNA やヒストンの修飾状態(メチル化)であることが知られている。今回の理研の報告でも、この点が何度も強調されていた。「Mpst遺伝子の発現」というふうに。(文中で何度も用語が出てくる。)
→ 硫化水素の産生過剰が統合失調症に影響 | 理化学研究所
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一方で、前に私は、次のことに言及した。
「遺伝子の発現を制御するのは、DNA のガラクタ部分(非・遺伝子部分)である」
詳しい話は下記で。
→ ゲノムの非・遺伝子部分: Open ブログ
→ ゲノムの非・遺伝子部分 2: Open ブログ
同趣旨の話は、ネット上にもたくさんある。特に、次のページが好適だろう。
→ 理化学研究所: 哺乳動物のトランスクリプトームの総合的解析による「RNA新大陸」の発見
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以上をまとめると、次のように言える。
遺伝子については、遺伝子の存在の有無だけでなく、遺伝子の発現の有無も重要だ。
遺伝子の発現には、DNA やヒストンの修飾状態(メチル化)が重要である。(エピジェネティクス)
遺伝子の発現には、DNA のガラクタ部分(非・遺伝子部分)が重要である。
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さて。統合失調症については、DNA やヒストンの修飾状態(メチル化)が重要であることがわかった。(理研の報告)
では、DNA のガラクタ部分(非・遺伝子部分)は、どう影響しているか? ……それは、未解明であるようだ。
そこでとりあえずは本項で、その重要性を「着目点」として指摘しておこう。いわば「考えるヒント」ふうに。
※ 「そんなことは言われなくてもわかっているぞ」と専門家に怒られそうだが。 (^^); …… ま、専門家向けの話ではなく、初心者向けの話ということで。
2021年07月21日
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