2021年07月21日

◆ 遺伝子の発現

 遺伝子の存在だけでなく、遺伝子の発現もまた、生物に影響する。

 ――

 生物に影響するのは、遺伝子の存在の有無だけだ、と思われがちだ。だが、遺伝子の発現の有無もまた、影響する。

 最もわかりやすいのは、第二次性徴の遺伝子だ。この遺伝子は、誰にも存在しているが、思春期になるまでは発現しない。思春期になって、性ホルモン(エストロゲンやアンドロゲンなど)が分泌されると、遺伝子が発現するようになり、体に第二次性徴の形質が備わるようになる。

 このように、単に遺伝子が存在するかどうかでなく、遺伝子がその機能を発現させるかどうかが、重要な問題となる。

 ――

 では、遺伝子が発現するとは、どういうことか? 
 DNA はもともと、長い塩基の列だ。その列が折り畳まれていて、(クロマチンからなる)染色体となっている。
 この折り畳まれた状態では、遺伝子は発現しないが、その一部で、折り畳まれた状態がほどけると、遺伝子が発現するようになる。
 このとき、DNA から RNA への転写もなされる。

 ――

 ここで、遺伝子の発現を制御するのは、DNA やヒストンの修飾状態(メチル化)であることが知られている。今回の理研の報告でも、この点が何度も強調されていた。「Mpst遺伝子の発現」というふうに。(文中で何度も用語が出てくる。)
  → 硫化水素の産生過剰が統合失調症に影響 | 理化学研究所

 ――

 一方で、前に私は、次のことに言及した。
 「遺伝子の発現を制御するのは、DNA のガラクタ部分(非・遺伝子部分)である」


 詳しい話は下記で。
  → ゲノムの非・遺伝子部分: Open ブログ
  → ゲノムの非・遺伝子部分 2: Open ブログ

 同趣旨の話は、ネット上にもたくさんある。特に、次のページが好適だろう。
  → 理化学研究所: 哺乳動物のトランスクリプトームの総合的解析による「RNA新大陸」の発見

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 以上をまとめると、次のように言える。
 遺伝子については、遺伝子の存在の有無だけでなく、遺伝子の発現の有無も重要だ。
 遺伝子の発現には、DNA やヒストンの修飾状態(メチル化)が重要である。(エピジェネティクス)
 遺伝子の発現には、DNA のガラクタ部分(非・遺伝子部分)が重要である。


 ――

 さて。統合失調症については、DNA やヒストンの修飾状態(メチル化)が重要であることがわかった。(理研の報告)
 では、DNA のガラクタ部分(非・遺伝子部分)は、どう影響しているか? ……それは、未解明であるようだ。
 そこでとりあえずは本項で、その重要性を「着目点」として指摘しておこう。いわば「考えるヒント」ふうに。

 ※ 「そんなことは言われなくてもわかっているぞ」と専門家に怒られそうだが。  (^^);  …… ま、専門家向けの話ではなく、初心者向けの話ということで。
 

posted by 管理人 at 22:39 | Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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