2021年07月20日

◆ 介護のヘルパーの問題

 介護産業では、訪問ヘルパーの待遇が非常に悪い。介護のキャンセルがあると、その分の給料ももらえない。月収 6.5万円にしかならない。極貧だ。
 
 ――
 
 朝日新聞が報じている。介護産業では将来、人手不足が問題となる。その理由は賃金が低いことだ。そのまた理由のひとつは、キャンセルで賃金未払いになることだ。
 厚生労働省は、全国の65歳以上の高齢者数がほぼピークになる2040年度に介護職員が約280万人必要になり、現状と比べると約69万人が不足するとの推計を公表した。
 ■低賃金・厳しい労働、背景
 「介護報酬の改定などの処遇改善は一定の効果はあったが、介護自体の社会的評価が低いのが根本的原因だと思う。そこを変えていかない限り、深刻な人材不足は解決しない」
 求職者1人に対し、求人が何件あるかを示す有効求人倍率を見ると、20年度は平均で 1.10倍なのに対して介護関係職種は 3.86倍で、とりわけホームヘルパーは 14.92倍だった。
 担い手がいない背景には、介護職全体の賃金水準の低さもある。介護職の平均給与(19年度、賞与含む)は28.8万円と全産業(役職者抜き)の平均37.3万円よりも 8.5万円低かった。
 19年の年収を尋ねたところ、150万円台以下が7割近くを占めた。低賃金の背景として考えられるのが、訪問のキャンセルや移動・待機時間についての「賃金未払い」だ。訪問の予定がキャンセルされた時でも、休業手当が出るとの回答は19%にとどまり、51%は無給の空き時間になってしまうと答えた。
( → 介護職員、69万人不足 高齢者数ピーク、2040年度推計:朝日新聞

 これを読むと、「おかしい」と感じた。「介護がキャンセルされたからといって、労働者に賃金を払わないということは、ありえない」と思ったからだ。
 たとえば、コンビニの店員として働いたときに、「客が来なかったので、給料は払いません」なんてことは、あるはずがない。客が来なければ、店員は暇なので、楽をできるし、働かなくて済む。しかし、だからといって、「給料を払わなくていい」ということはない。
 とすれば、介護士だって同様だろう。いったい、どういうことか? 

 ――

 そこで調べると、次のことがわかった。
 訪問介護をする人は、一般の労働者(時給や月給で雇用されている労働者)ではない。「登録ヘルパー」という、一種のバイトなのである。そのバイトは、仕事量に応じて賃金をもらう、という形態だ。だから、仕事量が減ると、もらえる賃金も減るわけだ。(ウーバー・イーツに似ている。)

 その結果、どうなるか? ものすごく賃金が低い。
  ・ 移動時間は、無給である。
  ・ キャンセルが生じたときの空き時間も、無給である。
  ・ 賃金は6万4,647円。(常勤ヘルパーなら 22万3,317円 )
  ・ 月収10万円以下が 83.3% だ。

    → ヘルパーの移動時間にも賃金支払いを!厚労省が全国の自治体に通知

 あまりにも低すぎる額に、愕然とする。「これなら生活保護の方がよほどマシだ」というくらいの低賃金だ。

 ――

 ではなぜ、本人はその低賃金に甘んじるのか? 
 その疑問に対して、「たぶんこうだろう」と推測したら、まさしくそうだと判明した。理由はこうだ。
 「小さな子供がいて、育児に時間を取られるので、フルタイムの勤務ができない。子供を幼稚園に預けていられる時間帯である 午前9時〜午後4時ぐらいしか、働けない。また、子供が病弱なので、看護のために、しょっちゅう仕事を休む必要がある。……そこで、働く時間を自由にできるように、バイト感覚の勤務形態を選ぶ。そのせいで時給が低くても諦める」

 これが理由だ。情報は下記。
  → 登録ヘルパーは自由度の高い働き方ができる!

 ――

 とはいえ、こんな現状に甘んじていいわけがない。結果的には、登録ヘルパーは圧倒的な人手不足になっているからだ。
 そもそも、移動時間に賃金を払わないというのは、不適切であると厚労省が指導している。
  → ヘルパーの移動時間にも賃金支払いを!厚労省が全国の自治体に通知

 キャンセルだって、同様だ。そもそも、直前キャンセルには、キャンセル料を取るのが普通だ。客からはキャンセル料を取るくせに、ヘルパーにはそれに相当する金を払わないというのは、二重基準であって、おかしい。自分勝手にもほどがある。(ヘルパーに金を払わないのなら、客からもキャンセル料を取るべきではない。だが、実際には、たいていの業者はキャンセル料を取る。)

 いろいろとおかしいことがまかり通っている。いったいどうして、こうなるのか?
 思うに、「登録ヘルパー」という、バイト感覚の雇用形態がおかしいね。ここに根源があると認識するべきだ。


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 では、この問題を解決するには、どうすればいいか? もっとまともな雇用形態を普及させたいのだが、何かうまい方法を見出せないか?
 そう考えると、思い浮かぶことがある。先に述べた話だ。
  → 介護事業でボロ儲け: Open ブログ

 ここでは、次のように結論している。
 「零細事業では、非効率なせいで、高コストになり、事業は赤字になる。大規模事業では、効率的なせいで、低コストになり、事業は黒字になる。だから、事業規模を大きくするといい」

 このことを、介護産業にも適用すればいいのだ。

 今の介護産業は、零細業者がひしめいているから、非効率になる。業者は赤字になり、労働者は低賃金になる。(ただし会社のオーナーだけは、贅沢三昧(ぜいたくざんまい)ができる。)
 こういう構造を抜本改革するといい。零細業者を一掃して、少数の大手会社に集約すればいい。そうすれば、事業の効率化によって、労働者に高賃金を払うことができる。そのことで、人手不足も解決する。

 たとえば、どこかの訪問介護がキャンセルされたなら、そのための人員を、どこか別のところで活用すればいい。その「別のところ」というのは、別の訪問介護でもいいが、介護施設の臨時職員という形でもいい。どうせ介護施設は、どこもかも人手不足なのだから、よそから助っ人が一時的に来てくれるのなら、ありがたい。……こういう形で人員を無駄なく利用できるように、あらかじめシステム化しておけば、「人員を遊ばせる」という無駄がなくなる。そのことで、業務を効率化できる。(すると、会社は黒字になるし、従業員は高賃金をもらえる。)

 介護産業で何よりも大切なのは、「事業の効率化」なのである。そして、そのためには、「事業規模の大規模化」が是非とも必要なのだ。
 ここまで理解して初めて、介護産業の将来に見通しが付く。



 [ 付記 ]
 そこまで考えられない朝日新聞は、かわりにこう提案する。
 「労働者の給料を上げるしかないが、介護料金アップは、介護保険料アップを通じて、国民負担が増える。これを解決するには、公的負担の拡大しかない」
 いかにももっともらしい話だ。だが、「公的負担の拡大」というのは、国庫の金で払うということなのだから、そのためには、国庫の金を増やすことが必要であり、消費税の増税が必要となる。これでは結局、国民の負担が増えることになるのだから、介護保険料アップと実質的にはほぼ同様である。)どっちにしても国民の負担となる。)

 国民の負担を増やさずに問題を解決するには、「事業の効率化」しかないのだ。そのためには、「事業の大規模化」が必要なのだ。
 そこをきちんと見通さないと、朝日新聞みたいな半可通の結論を出してしまうものだ。

posted by 管理人 at 22:12| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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