――
モナリザの原画は黄ばんでいる。そこで、これを補正した画像というのが、ネットに出回っている。先に紹介したものを、ふたたび紹介しよう。二つある。
第1に、CG で補正した画像というのが、すでに知られている。

(出典:絵を見よう)
第2に、Britannica の画像がある。

一方、私の作成した補正画像もある。これは Wikipedia の黄ばんだ画像を色補正したものだ。

縮小前の画像は、次の3通りだ。(サイズは 横×縦 )
→ 中 : 603× 900
→ 大 :1207×1800
→ 特大:2469×3679 (Webp形式)
《 追加 》
→ 顔部分のアップ:1410×999 (Webp形式)
ブログ用に加工して、ヒビ割れを大幅に除去した。
――
私の補正画像を見ると、モナリザの微笑がはっきりとわかるはずだ。なぜなら、肌の微妙な階調が表現されているからだ。(特に口元のあたりで。)
一方、最初の CG 画像では、あまりにものっぺりとした画像になっている。口元のあたりで、肌の微妙な階調は見出されない。微妙な階調はすっかり消失してしまっている。まるでマネキンのようにしか見えない。(人間らしさがない。)
二番目の画像( Britannica の画像)は、どうか? CG 画像に比べれば、はるかにマシである。口元のあたりで、肌の微妙な階調は見出されるようにも見える。
しかし、私の示した補正画像に比べると、肌の微妙な階調がかなり消えてしまっていることがわかる。これはどうしてかというと、コントラストを強めたからだ。
コントラストを強めると、ぱっと見た感じでは、鮮やかな感じがして、きれいな絵だという感じがする。しかしそのかわり、微妙な階調がかなり消えてしまっている。その絵だけを見ても、消えてしまったものはわからないが、私の示した画像と比べると、消えてしまったものがわかる。私の示した画像には、口元の豊かな階調がありありと残っているからだ。

こうして豊かな階調で示された微笑こそ、レオナルド・ダ・ビンチが何よりも追求したものだった。他の絵画にも、似たものが見て取れる。
また、この技法は、スフマートという名前で知られている。
スフマートとは?
レオナルド・ダ・ヴィンチが発明した技法で、簡単に言うと「ぼかし技法」のことです。
では実際にどうやってやるのでしょう?
それは描画用オイルで絵具を薄く解き、下の絵具が透けて見えるように薄く塗る(かける)のです。
それを何層も何層も乾かしてはかけ、乾かしてはかけすると、独特のつやと深みが生まれます。
そうして色と色の境目が見えなくなり、柔らかで自然なグラデーションが出来るのです。
オイルは乾くのに時間がかかりますから、レオナルドが制作に時間がかかった理由の一つがこのスフマートをやっていたからなのです。
( → 【レオナルド・ダ・ヴィンチの技法】その技法の謎に迫る! | 白いキャンバス )
薄い絵具を何度も何度も塗り重ねることで、独特の微妙な階調を生み出す。……それは、気の遠くなるような多大な手間をかける必要があったが、そのことによって、独特の質感を生み出したのだ。
ダ・ビンチは生涯ずっと、モナリザの画像を身のそばに置いていた。なぜなら、その1枚には、他の絵画の何倍か何十倍かの手間をかけたからだ。
そして、その微妙な階調を見るということが、ダビンチの天才性を見るということだ。
ひるがえって、コントラストを強めることで、微妙な階調を消してしまうというのは、ダビンチの絵画の意味をまったく理解できていないことになる。
( Britannica、おまえのことだ。)
[ 付記 ]
もっとはっきりと知るには、私の画像(なるべく大きな画像)をダウンロードして表示してから、それを、画像ソフトで「コントラストを強める」という加工をするといい。
そうすると、コントラストが強まるにつれて、画像はキリッとして、きれいになるが、そのかわり、微妙な階調が消えていくのがわかる。
コントラスト調整の可能な画像ソフトで、確認するといいだろう。
※ 画像ソフトの使い方のわからない人は、下記で。
→ Windows10標準ソフト「フォト」を使いこなそう(2) 明るさや色調の補正もお手のもの!
メーカー出荷の初期設定では、コントラストが異常に強くなっていることが多い。そのせいで、なだらかな階調を表示できないことが多い。(つまり、明るい部分はすべてしろになり、暗い部分はすべて黒になり、細かな変化が塗りつぶされてしまうわけだ。)
これではまずいので、ディスプレイの設定を変える必要がある。画面右下(底面)のボタンを押して、数値を変更するわけだ。
モナリザの微笑の微妙な階調が表示されていれば、あなたの液晶モニタは正常だ。