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介護事業ではボロ儲けすることができるそうだ。業者のほとんどは中小企業で、経営が非効率だ。そこで、合併や買収で大規模化すると、スケールメリットを得て、コストが大幅に下がるので、巨額の利益を得ることができるそうだ。
介護事業は、最大手さえ数パーセントのシェアしかないほど中小零細がひしめく。ゆえに積極的なM&Aで規模を拡大し、スケールメリットを生かして経費を抑えると、高収益体質になるという。
かくして零細はカツカツでも、大規模事業者はもうかり、買収ファンドは日本の税金で巨万の富を得る。
( → (取材考記)福祉に投資、買収ファンド大もうけの現実 介護事業、経営の「見える化」早急に 大鹿靖明:朝日新聞 )
より詳しい話は、下記にある。
→ 「介護」に群がる買収ファンド もうけ追求できる理由は:朝日新聞

これを受けて、記事は次のように結論する。(大意)
「国の金を得て、ボロ儲けするのは、けしからん。大規模化して利幅が巨額になるのであれば、大規模事業をする大手会社の料金(国の払う料金)を引き下げるべきだ」
これはまあ、共産党がよく言う「大企業ばかりが儲けるのはけしからん」というのと、同様の発想だ。気持ちとしてはわからなくもない。
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だが、このような発想は好ましくない、というのが私の見解だ。事業が大規模化することで、大幅な利益を得ることができるとすれば、それは、悪によって利益を得たのではなく、無駄をなくすという善によって利益を得たのだ。とすれば、このような善を推進すれば推進するほど、国全体における善は拡大していく。だから、このような善については、懲らしめるよりも、もっと拡大するべきなのだ。
実際、たいていの介護事業者は、ろくに利益を得ていないので、ろくに納税もしない。一方、上記のような大規模化をした事例では、大幅な利益を上げているので、多くの額の納税をしている。ならば、その方が、他の国民にとっても有益なのだ。(また、従業員の給料も上がりやすい。)

だから、国としては、「儲かった大規模業者の利益をかすめ取る」というふうにするよりも、「こんなに儲かるんだから、他の企業もどんどん参加して、どんどん儲けてください」というふうに推奨するべきなのだ。それを聞いて、他の企業がどんどん参入すると、どうなるか? 非効率な小規模な事業者は一掃されて、少数の大規模事業者に集約されるだろう。そのことを通じて、国全体では、介護産業の効率が向上するだろう。それにともなって、介護事業者の低賃金状態も解消されていくだろう。
そして、そういうふうに「効率アップのメリット」を人々が享受するようになった時点で、そのときようやく、政府は「介護料金の引き下げ」を実施すればいいのだ。それも、「大手事業者だけを狙い撃ちにする」というような不公平な形ではなく、全員に平等な形で。
それこそが正しい方法なのである。ただの「悪平等」をめざすよりは、「国全体の効率向上」をめざすことこそが、真の目的であるべきだ。
[ 付記 ]
この話題では、前にも似たことを述べた。
「日本の中小企業は、税率などで優遇されているので、非効率な中小企業がやたらと多くなり、日本全体の経営効率を下げている。それが、日本人が長時間労働・低賃金である理由だ。
だから、むしろ、中小企業の優遇をやめるべきだ。そうすれば、日本から中小企業がなくなり、どれもこれもが大企業になって、誰もが大企業の社員になる。そうすれば、日本全体の経営効率もアップする」
詳しくは下記。
→ 中小企業の優遇は愚策: Open ブログ
【 追記 】
介護事業や保育事業では、オーナーが高級車や美食の
逆に言えば、こういうオーナーのピンハネ分を事業利益に計上すれば、その分、事業は利益率がアップするわけだ。
ま、零細企業や小企業というのは、脱税のための組織だと思った方がいいだろう。それで、ろくに納税しないで、オーナーばかりが贅沢をする。
次の証言もある。
大部分の社長さんは、高給取り(年収 1000万円超)で、ベンツやレクサス、ポルシェなどの高級車を乗り回していますが、それらの購入は会社の経費からの支出です。
例えば下記のようなことがあります。
・ 交際費として、会社の経費で飲み歩く、旅行やゴルフに行くなど。
・ 内外を問わず愛人を作って、その愛人に会社の経費でマンションを与える、高級車を与える、愛人を高いポジションにつける、幽霊職員として給与を支給するなど。
・ 経営者の親族に高いポジションを与え、高級車や高額給与を与える。
・ 天下りや系列企業から施設長や部長で来る人が多く、仕事をしない、できない役職が多い。そんなのに限って給料が高い。(高給で無駄な職員が多い)
・ 系列企業や付き合いのある会社から物品を購入するので、購入価格が異常に高い。
・ 社長や親族の給与が高額で、外車や高級車を乗り回すなど。
( → 怖い質問 | 有限会社第一介護サービス )
将来的には、参入者が大幅に増えて、大儲けする会社がたくさん出てくるでしょう。その時点で、(国の払う)料金引き下げなどをすればいい。
ただし、その前に、介護労働者の賃金引き上げが先決でしょう。今は他産業に比べて、月額で 10万円も低いので。これでは、そのうち、立ち行かなくなる。持続不能。
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> 買収ファンドは日本の税金で巨万の富を得る。
というのは、一種の誤認です。別に買収ファンドは、他のライバル企業に比べて、多くの税金をもらっているわけじゃない。(独り占めをしている電通とは違う。)
正しくは、
「買収ファンドは無駄をなくしたことで巨万の富を得る」です。
換言すれば、今の日本の介護産業は、それほどにも莫大な無駄にあふれているということです。その無駄をなくすことで利益を得るのは、ちっとも悪いことではない。
似た例で言うと、日本の農業は、高度成長期には農業人口が激減するという形で、大幅な効率アップを果たしました。それにともなって、大規模農家は莫大な利益を得るようになったけれど、ちっとも悪いことではない。農業でボロ儲けすることは、悪ではなく善です。(輸入規制のせいで、国民は損しているけれど、それはまた別の問題。)
https://nouest.com/survival/
零細の方は、税の減免(軽減税率)などを適用されて、国への納付金がごくわずかになっています。赤字企業なら、もともと法人税を払わない。こういうのはさっさと市場から退出してもらう方がいい。かわりに高利益で多額納税をする企業が伸びればいい。
人は、貧しい人を優遇する必要があるが、企業は、貧しい企業はさっさとつぶした方がいい。人の命は大切だが、赤字企業の命は有害なだけだ。……この違いを理解するべきです。
介護業界に限りませんが、どの業界も寡占にならない程度に集約されれば良いですね。
給料の高い大企業は自社社員数を抑えて、分野ごとの子会社(同じ仕事だけど給料が安い)を作ってコストカットしてますもん。
介護業界の内情は知らないのですが、どうなんでしょうね。
確かに現状ではそういう面もあります。だが、みんな大企業になったら、「中小企業やフリーランスに押し付ける」という方式が成立しなくなります。すると、高い金を払って委託するか、自分でやるしかなくなるでしょう。