2021年07月14日

◆ ベースロード電源という概念をやめよ

 電力分野では、ベースロード電源という概念が使われるが、やめるべきだ。

 ――

 電力分野では、ベースロード電源という概念が使われる。「安定的で低コスト」という意味でだ。特に、原発電力を意味するのが普通だ。
 経産省は電力を安定的に供給できる「ベースロード電源」として原発を重視してきた。太陽光は夜間に発電できないこともあり、コストが上がっても原発の重要性は変わらないとの立場だ。
( → 発電コスト最安、原子力→太陽光 経産省試算:朝日新聞

 原発の発電コストは、試算のたびに高くなってきた。それでも、経産省は安定的に電力供給できる「ベースロード電源」だとして重視している。

 太陽光は夜間は発電できず、風力などは天候によって発電量が左右される。再生可能エネルギーが増えすぎると、悪条件が重なったときに大規模な停電が起きる恐れもある。

 原発と同じくベースロード電源とされてきた石炭は、脱炭素の流れのなか縮小している。経産省や大手電力会社は脱炭素と安定供給を両立させるため、原発を活用すべきだと主張。自民党内にも原発のリプレース(建て替え)や新増設が必要だとの意見は根強い。
( → 原発、消えた優位性 重い安全対策・事故費:朝日新聞

 だが、この概念は、原発を正当化するための概念であるにすぎない。昔はともかく今では時代に合わなくなってきている。次の3点で。
  ・ コスト的に最安でなくなった。
  ・ 安定性よりも可変性の方が重要だ。
  ・ 深夜電力割引との整合性

 以下で説明しよう。

 (1) コスト

 原発はもはやコスト的に最安ではなくなった。賠償費・除染費・廃炉費・安全費用などがかさんで、以前よりもコストはかなり上がった。
  → 原発の発電コスト上昇、太陽光などより高く コスト優位性揺らぐ | 毎日新聞
  → 発電コスト、最安は原発から太陽光に 経産省が試算発表:朝日新聞

 (2) 安定性よりも可変性

 太陽光発電は夜間にはゼロになり、雨天時には半分になる。こういうふうにいろいろと変動が起こるので、その変動を埋めるための電力が必要だ。それは、安定的な原発ではなくて、いつでも可変的に発電量を変えられる火力発電が担う。安定性よりも大事なものがあるのだ。(個別電源の安定性よりも、システム全体の安定性が大事だ。それをもたらすのは何か……ということ。)

 (3) 深夜電力割引

 家庭用に 深夜電力割引を契約すると、1kWh あたり 12円48銭 となるが、これは通常の電力価格の約半額である。(送電費用や小売り手数料を含む。)
 ここまで価格を下げると、原発の電力を売っても、赤字になってしまうだろう。(送電コストや手数料コストなどがかさむので。)
 こんなに安値で電力を売るくらいなら、むしろ、発電を止めてしまった方が安上がりだ。(そうすれば赤字が出なくなる。)
 しかし、発電を止めたくても、止められない。それが原子力発電というものだ。となると、ここでは、発電力が一定である(安定的である)ことは、有益であるどころか、有害であることになる。(赤字を出すからだ。)
 このような有害な性質を、さも有益な性質であるかのように見せかけるのが、ベースロード電源という概念だ。だから、こんな概念は使うべきではないのだ。この概念はあくまで、「原発は素晴らしい」と見せかけるための、詐欺的な概念なのである。(人をだますための概念。)

 ――

 では、かわりにどうするべきか? 私としては、次の三つの概念を推奨する。
 (i) 「安定電源」…… 原発のように一定の発電量を維持する電力。(従来の「ベースロード電源」に相当する。)
 (ii)「不安定電源」…… 太陽光や風力のように、天候や気象という外部要因によって変動する電源。人間が制御できない要因で変動する電源。不安定な電源。
 (iii)「可変電源」…… 不安定電源が勝手に変動した分を補うだけの発電をする電源。通常、火力発電であるが、水力発電も含まれる。将来的には、EV の充電池の電源も含まれるだろう。

 ――

 以上の三つに応じて、価格もそれぞれ変動させるべきだ。
  ・ 安定電源 …… 普通  10円/kWh 程度
  ・ 不安定電源 ……  安価   5円/kWh 程度
  ・ 可変電源 …… 高価  15円/kWh 程度


 上の数字は、ごく大雑把な数字だが、おおよその目安にはなるだろう。
 ともあれ、こんな感じで、電力価格に差を付けるべきだ。

 「太陽光発電は原発よりも低コストだから素晴らしい」なんて言っていると、夕方から深夜にかけての時間帯に、冷房や暖房の電力が莫大に必要になったとき、「太陽光発電が止まっている!」と知って青ざめるハメになる。
 かといって、原発がそれに相当する電力を、四六時中、発電しているわけにも行かない。
 太陽光発電という不安定電源を使うためには、(安定電源でなく)可変電源がどうしても必要なのである。これこそが最も重要であり、これこそを最も優遇するべきなのだ。

 一方、原発のような安定電源は、普通であって、特に重要ではないのである。こんなものを特別に重要視する概念は、ただの詐欺概念であるにすぎない。



 [ 付記 ]
 「火力発電は炭酸ガスを出すぞ!」
 という批判もあるだろうが、炭酸ガスならば、他にも排出するものはいっぱいあるのだから、特に火力発電だけをやり玉に挙げる必要はない。自動車でも、調理用ガスでも、暖房用ガスでも、あちこちでいろいろと炭素燃料は使用されているのだから、それらと同様に扱えばいい。つまり、炭素税などを導入すればいい。
 火力発電を用意しないまま、太陽光発電ばかりに注力すると、夕方から深夜にかけての夜間には、日本中で大停電が起こりかねない。現実を無視して太陽光偏重になるわけには行かないのだ。

 ※ 風力の方がまだしも安定性はある。



 【 関連項目 】
 1日の電力量の変動は、どんなフラフになるか? これについては、2011年のグラフがある。
  → 東電の電力状況(2011年): Open ブログ

 そのうち、特に7月9日のグラフを示すと、下記だ。


denryku0709.gif


 ※ 青線は前年同月の数値で、ピンク線は前日の数値。
   上記のリンクで解説しているとおり。
 
posted by 管理人 at 22:50| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
高レベル放射性廃棄物の処理費や廃炉費は現時点で算定不能なので、原発のコストはもっと上がっていくことと思います。
電源種別ごとに料金に差をつけたくても、送電線や配電網が一緒なので難しのでは。周波数も保たなくてはならないし。太陽光の発電状況に合わせて需要家開閉器を遠隔でON-OFFしてしまいますかね。
Posted by けろ at 2021年07月16日 10:14
 料金は、送電会社が発電会社から買うときの料金です。需要家への小売り料金のことではありません。

 ※ 舌足らずでごめんなさい。

 なお、小売り料金は、5〜15円ということはありえず、24円前後となります。さらに基本料金を追加。
Posted by 管理人 at 2021年07月16日 12:13
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