2021年07月14日

◆ 土砂災害の話題 2件

 土砂災害の話題を二つ。「降水量」と「サイレン」。いずれも避難に関係する。

 ――

 降水量


 避難するに当たっては、降水量が大きな目安となる。
 では、降水量はどうだったか? 下記記事に詳しい話がある。
  → 熱海市の土石流災害 解析雨量から分析 土石流発生の可能性は広い範囲にあった(07月05日) - tenki.jp
 ここには、地理的な降水量 と 時間的な降水量 がある。

 (1) 地理的な降水量

 前項では、次の図を示した。(再掲)


weather20210703.jpg

 一方、()のページには、次の情報もある。


tenkij-01.gif


 いずれにせよ、土砂崩れの現場には大量の降水量があったことがわかる。
 ただし、前者は(事前の)予報値であり、後者は(事後の)測定値である。


 (2) 時間的な降水量

 上の ()のページには、次の情報もある。いずれも時間的な降水量を示す。


tenkij-02.gif

tenkij-03.gif


 記事には次の記述もある。
 熱海市の土石流発生地点の降水量を時系列で見ると、降り始めてから48〜72時間にわたって時間雨量20mm以下の比較的弱い雨が降り続いていたことがわかりました。
 ただし、土石流が発生した10時30分の2時間半ほど前には1時間40mmの激しい雨が降り、さらに土石流発生直前の10時台にも1時間30mmの雨が降っていたことがわかり、この比較的強い雨が引き金になった可能性があると考えられそうです。

 今回の事例のように、2〜3日かけて10〜20mm程度の長雨が続いたときは、避難のきっかけがつかみにくいという性質があります。しかし、長時間の雨で地盤が緩んでいると、短い時間のやや強い雨が降っただけでもそれが土砂災害の引き金になることがあります。

 降水量は、単にその数値だけを見ればいいのではない。48〜72時間にわたって長い時間をかけて降水量が増えていたら、そのあとで土砂崩れが起こりやすいのである。
 だから、避難するべき時期があるとしたら、「豪雨が予測された時点」ではなくて、「降水量がある程度の大きさにまで蓄積された時点」である。特に、「長い降雨のあとで大雨が予想された時点」である。今回の事例で言えば、豪雨が予想されたとはいえ、1日、2日の時点では、まだ避難するべき状況ではなかった。しかし3日の朝になると、すでに長い降水量の蓄積があり、さらに、3日の午前中には大雨が予想されていた。8時20分には土砂崩れの警告が出ていた。(本項の冒頭の図。)
 とすれば、降水量の情報からして、3日の朝(8時30分ごろ)には避難指示を出すべきだった。そうしておけば、今回の被害は生じなかっただろう。
  ※ 前項も参照。避難するべき地域がちゃんと判明していたので、避難指示が出ていれば助かった、という話。

 サイレン


 避難するに当たっては、サイレンが大きな役割を果たす。

 朝日記事の記事を見ていたら、消防団を呼び出すサイレンが鳴った、という話がある。それを聞いて、やや離れた土地から、被害の出た土地まで、消防団員がやって来て、「避難しろ」と声をかけていたそうだ。
 分団員の建築業一木(いちき)航太郎さん(21)は小高い場所にある自宅で画像を受け取った〈図〈1〉〉。
 150メートルほど離れた分団の詰め所から、「出動」を意味するサイレンが鳴り響いていた。
 一木さんは4月に入団したばかりで、出動はこの日が初めて。
 「避難してください!」
 土砂が川を下ってくると考え、川沿いの住民たちに高台にある伊豆山神社や寺院をめざすよう大声を上げながら走って回った。
 10分ほど経った頃、「ゴー」という音が急に大きくなった。振り返ると、猛スピードで襲ってくる2〜3メートルほどの高さの茶色い「波」が目に飛び込んできた。あと数メートルに迫っていた〈〈2〉〉。
( → 「避難して」目の前に土石流 初出動の消防団員は叫んだ:朝日新聞

 安全なところから、最も危険なところに飛び出して、まわりの人々に避難を呼びかけた。そのあげく、死ぬ寸前になったが、実に運良く、九死に一生を得た。(詳しい話は記事で。)

 ――

 さて。それで思うことは、こうだ。
 「出動」を意味するサイレンが鳴り響いていた、ということだが、どうせサイレンを鳴らすのであれば、消防団員に呼びかけるためのサイレンではなく、住民に避難を呼びかけるためのサイレンを流すべきだ。それも、ものすごい大音量で。

 この件は、前にも述べたことがある。
 とにかく、こうでもしないと、強制的に追い出すことができない。となると、次の震災でも、数万人の死者が発生するだろう。
 それを避けるためには、このようなスピーカーがぜひとも必要なのだ。必要なのは、巨額の土木工事じゃなくて、デカい音量なのである。








  こんなふうに。









[ 逃げろ! > 





 【 関連項目 】

 本項と似た趣旨の話。
 豪雨の被害をいかになくすかという対策は、下記。
  → 集中豪雨の予測という研究: Open ブログ
  → 豪雨の気象予想は誰がやるべきか?: Open ブログ

 逆に、対策ができないで、大被害を出した事例。(伊豆大島)
  → 伊豆大島の台風災害: Open ブログ


posted by 管理人 at 21:57 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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