――
もちろん、危険な場所なのだから、「警戒区域」と指定されていた場所に、入っているのが当然だ。
とはいえ、今回の土石流は、あまりにも規模が大きかった。山裾だけでなく、港の方にまで、大規模に被害があった。そのすべてが「警戒区域」に入っていただろうか? ひょっとしたら、一部は含まれていない(漏れていう)のでは?
そう疑ったので、調べてみた。
――
まずは、朝日新聞の連結写真で、土石流の流れの位置を確認する。( 別項 の 【 追記 】 で示した通り。紙面ビューアを使うと、より詳細がわかる。)
上の画像で知った土石流の位置を、 Google マップ で確認する。(図を重ね合わせる感じで。)
→ Google マップ
朝日の写真で確認しながら、Google マップの「距離の測定機能」で線を引く。
そのあと、Google 地図を「 3D 」から「平面」に戻す。(画像の描かれ方は変わるが、距離の線はそのまま残っている。)
それでできた新しい画像が、下記だ。

これは衛星写真だが、モードを普通の「地図」のモードに変える。すると、次の画像を得られる。

これと対比するために、同じ場所のハザードマップを見る。すると、次の画像を得られる。

※ 解説は → 前項
この三つの図の画像のうち、二つ目と三つ目を比較すると、次のことがわかる。
「土石流の流れた位置は、ハザードマップの警戒区域に、すっぽりと入っていた」(漏れはなかった)
――
上の事実から、次の認定を出せる。
「土石流の被害のあった場所は、ハザードマップの警戒区域に入っていたのだから、事前に危険を予知できたし、事前に避難させることもできた。なのに、熱海市は避難指示も出さなかったし、他の何らかの対策も取らなかった。危険が迫っているのに、無為無策だった。その責任は、きわめて大きい」
今回の災害では、次の被害が出ている。
→ 死者11人に、行方不明者は17人 … 熱海土石流 : 読売新聞
合計 28人というのは、とても大きな数字だ。
しかも、この数は、うまくやればゼロにできた数字なのである。なぜなら、豪雨はもともと予報されていたし、危険な地域も指定されていたからだ。
にもかかわらず、熱海市は避難指示も出さなかったし、他の何らかの対策も取らなかった。危険が迫っているのに、無為無策だった。その責任は、きわめて大きい。
――
では、どうすればいいか? そこで、私の「提案」を示そう。こうだ。
「豪雨が予想されたときには、危険な地域では必ず避難する。そのことを原則とする」
この原則を守ることが大切だ。たとえ予想にハズレがあっても、この原則を守ることが大切だ。この件は、前に述べたとおり。
→ 熱海では避難指示が出なかった: Open ブログ
さらに、無能な自治体のかわりに、防災庁が全国の各地を一元的に管理して、避難指示も防災庁の責任と権限で出すべきだ。
気象庁の気象情報と、事前のハザードマップ情報。この二つの情報の組み合わせを得て、防災庁として避難指示を出すべきだ。
簡単に言えば、「防災庁がやれ」ということだ。
※ 事前に防災庁を設置することが必要だが。
――
さらに、本サイトなりに頭を働かせて、「うまい方法」を示そう。こうだ。
すぐ上では、「気象庁の気象情報と、事前のハザードマップ情報。この二つの情報の組み合わせを得て、防災庁として避難指示を出すべきだ」と述べた。このことを、防災庁の職員がいちいち個別に判断するのでなく、全部をITで自動処理すればいい。
そして、この自動処理をブラックボックスとしたあとで、入力に対する出力を得るようにすればいい。
入力 → [ ブラックボックス ] → 出力
ここで、入力とは、住民の住所のことである。 : x
出力とは、その住所における危険度のことである。: f(x)
つまり、住民が自分の住所を入れると、自分の住居の危険度が自動的に表示される……というシステムだ。
(例)
住所は : 熱海市伊豆山3丁目2番地1号
結果は : その住所は非常に危険です。午前9時までに必ず避難してください。
――
なお、これと同様のことは、現在でも手動でできる。しかしその手間は、非常に大変だ。
(i) 気象庁の降雨予想と土砂災害危険度予想を、地域別に得る。下記のような。( → 前出 )

(ii) 自分の住所のハザードマップを得る。下記のような。
→ 熱海市土砂災害ハザードマップ
(iii) 双方のデータを、地図上で照合する。
上の三つのステップを実行する必要がある。
やってみればわかるが、そのすべてを遂行するには、かなりの手間と時間がかかる。大半の人は脱落するだろう。
しかも、その前に、上記のようなリンク先を、自分で調べて探し当てる必要がある。そんなことをうまく探し当てられる人は、半分もいないだろう。「土砂災害ハザードマップ」という言葉を知らない人も多いだろう。
というわけで、以上の処理を簡単に自動化するシステムを整備することが大切なのだ。
しかも、それは、各自治体ごとに整備するのではなく、防災庁のページにアクセスするだけで済むようにするべきだ。豪雨が予想されたときには、防災相のトップページで、その対処策が大きく表示される。だから人々は、「防災庁」という言葉を覚えておくだけでいい。あとはネットで「防災庁」という語をググるだけで、すぐに自分の居場所の危険度を知ることができる。
【 関連項目 】
このような自動化の必要性については、前にも述べたことがある。
→ 避難警報を自動化せよ: Open ブログ
[ 付記 ]
実を言うと、本項の方法だけでは「万全だ」とは言えない。なぜなら、避難先となる避難所もまた、土砂災害警報区域に入っていることもあるからだ。
今回の事例では、避難先である「伊豆山小学校」もまた、土砂災害警報区域に入っている。これではとても「万全だ」とは言えない。
とはいえ、この小学校は鉄筋5階建てなので、その3階以上にいるのならば安全だろう。一方、隣の体育館にいるのでは、危険性はかなりある。すぐ近くには山面が迫っているので、「絶対に安全だ」とはとうてい言えない。
[ 余談 ]
土石流の残土は、今もなお残っている。人々は途方に暮れているようだが、「あとでまたここに新居を建設しよう」と思っている人が多いようだ。
しかしここは最も危険な土地なのであるから、居住禁止にした方がよさそうだ。時価の半額ぐらいの価格で政府が買収するとよさそうだ。
と同時に、「どうしても売却したくない」という人には、「特別危険税」というような高額の税金を課するといいだろう。
その理由は、「将来にまた土石流が来たときの補償金払い。遺族年金払い」である。この件は、前にも述べた。
→ 土砂崩れに公的保険を
ただしあくまで、ドラマのなかでのことだ。現実には、これは実現されていない。