2021年07月02日

◆ 国際デジタル課税

 巨大IT企業などを対象にした「デジタル課税」の導入が決まったが、中途半端だ。これを批判する。

 ――

 報道


 正式決定はまだだが、ほぼ合意に至った。
 多国籍企業の「課税逃れ」を防ぐ国際課税の新たなルールについて、日本など130カ国・地域は1日、国際的な法人税の最低税率を「15%以上」とすることなどで大枠合意した。巨大IT企業などを対象にした「デジタル課税」の導入も決めた。
 新ルールは、国境を越えて活動する多国籍企業への課税を強めるのが目的だ。具体的には、企業に課す法人税に共通の最低税率を設ける。多国籍企業が税率の低い国に設けた子会社に利益を移すなどして税負担を軽くする「課税逃れ」をしにくくする狙いがある。
 焦点だった税率は、主要7カ国(G7)が6月の財務相会合で一致した「15%以上」で合意した。
 もう一つの柱が「デジタル課税」の導入だ。巨大IT企業などを念頭に、工場などがなくてもサービスの利用者がいる国が利益の一部に課税できるようにする。対象は全世界の売上高が200億ユーロ(約2.6兆円)を超え、利益率10%以上の多国籍企業。米グーグルなどの巨大IT企業を中心に100社程度が対象とみられる。これらの企業のサービスの利用者がいる国が利益率10%を上回る利益に対し、20〜30%の課税ができるようにする。
具体的な配分割合は今後詰める。たとえば、利益率が20%で1兆円の利益がある企業なら、基準を超える10%分の利益5千億円に20〜30%を課税し、その税収である1千億〜1500億円を関係各国で分配するイメージだ。
 製造業を念頭に約100年前にできた現在の国際課税の原則では、子会社や工場などの物理的な拠点がなければ課税できない。だが、拠点の有無にかかわらず、SNSや動画配信、検索などのデジタルサービスで巨額な利益を世界で上げている企業が台頭し、利用者だけがいる国での課税方法が課題になっていた。
( → 法人税15%以上、大枠合意 130カ国・地域、課税逃れ防ぐ:朝日新聞

 前半は法人税の話だが、15%という数字はあまりにも低すぎる。
 後半はデジタル課税の話だが、こちらは(上のモデル例では)1兆円の利益に対して1千億〜1500億円の課税だから、10〜15%の課税となる。これも低すぎる。(別途、本社所在国の課税があるにしても、合計額はやはり低すぎる。)

 では、どうするべきか?
 後半のデジタル課税について、もっとまともな課税になるような代案を提出しよう。二通りあるので、順に述べる。

 売上げに比例


 原則として、「国別の売上げに比例する」という形で課税対象を決めればいい。
 たとえば、売上げ額の比率が次のようであったとする。

  ・ アメリカ 30%
  ・ 日本   10%
  ・ ドイツ   8%
   ……

 ここで、利益額が1兆円だとしたら、上記の比率で配分するので、

  ・ アメリカ 3000億円
  ・ 日本   1000億円
  ・ ドイツ   800億円
   ……

 という額が、それぞれの課税対象となる。その課税対象に対して、それぞれの国が、自国の法人税の税率で課税すればいい。
 たとえば、日本の法人税課税が 35% だとしたら、1000億円の 35%にあたる 350億円が法人税の額となる。この額を徴収すればいい。

 この本質は、次のことだ。
 「課税対象は、各国の売上げ額に比例して配分するが、課税の徴収額は、各国ごとに裁量して決める」

 なお、この方式だと、おおむね 35%前後の税率になるので、冒頭の記事の方式に比べて、約2倍の税率になる。また、国内の他の企業とは同等となる。つまり、現状のような「国際的な税逃れ」を完璧に封じることができる。

 ※ 逆に言えば、冒頭の記事の方式では、国内の他の企業に比べて半分ぐらいの納税で済むので、現状のような「国際的な税逃れ」を半分ぐらいしか阻止できていない。不完全な是正措置である。

 ※ 現状ではなぜそういうことができないかというと、記事にあるように、「製造業を念頭に約100年前にできた現在の国際課税の原則では、子会社や工場などの物理的な拠点がなければ課税できない」ということがあるからだ。逆に言えば、この原則を撤廃すれば、上記のように、「国別の売上げに比例する」という形で課税対象を決めることができる。

 ※ 実は、この方式は、前にも記したことがある。
    → タックスヘイブン対策 2: Open ブログ

 配当


 現状では、子会社から親会社への配当は非課税となっている。そこで、これに課税するといい。
 たとえば、Google の各国の売上げをアイルランドに集約して、5兆円の利益を計上したとする。その5兆円に対して、アイルランドの税制に従って、12.5%の額を納税する。残りの 87.5% の額は、Google の親会社であるアルファベット社(カリフォルニア)に移転する。ここで、この全額は、配当として支払われるが、全額が非課税となって、課税を免れる。
 そこで、この非課税という原則を撤廃して、配当にも課税できるようにすればいい。そうすれば、適切な課税がなされることになる。(つまり税のがれができなくなる。)

 ここで問題だ。なぜ現状では、そういう課税ができないのか? なぜ配当には非課税という原則があるのか? 
 それは、「すでにアイルランドで課税処分がなされているから」という理由である。いったん課税されたものに、またしても課税するのは、税の「二重課税」になるので、よろしくない、というわけだ。

 しかしここには誤解がある。
 二重課税というのは、どこかの国できちんと課税したあとで、さらに別の国で課税することだ。(税額は2倍になる。)
 ところが、今回のような税逃れの場合には、どこかの国できちと課税されているわけではない。アイルランドという特別な国で、特別な低税率で課税されているだけだ。わかりやすく言えば、「3分の1だけ納税でいる」という状態だ。とすれば、税逃れをしている残りの3分の2について追徴したとしても、合計額は2倍にはならずに1倍になるだけなのだから、二重課税をしていることにはならないのだ。
 このように「合計額が1倍になる」というような課税は、「二重課税」ではなく「二段課税」と呼ぶべきだろう。
 このような「二段課税」というのなら、あちこちでいくらでもなされている。たとえば、個人の所得に対して、「所得税と住民税の双方を追徴する」というふうにしても、これは別に「二重課税」ではない。個人に対して、「所得税を徴収したあとの所得に対して、さらに消費のたびに消費税を徴収する」というのも、形の上では二重課税も同然だが、「二重課税」と呼ばれることはない。
 要するに、「不当な課税」を避けるための概念が「二重課税」なのであって、「不当な税逃れに対して、正当な課税をすること」が「二重課税」と呼ばれることはない。そのとき、形式的には二段階の課税をするとしても、払う総額が2倍になるわけではないのだから、「二重課税」と呼ばれることはない。




 以上のように、新たな課税法を提案した。(二通り。)
 これによって正当な課税ができる。だから、現在決まりつつある方式よりも、ここで示した方式の方がいい、というのが結論だ。

 
posted by 管理人 at 22:05| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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