2021年06月25日

◆ 憲法を否定する最高裁

 最高裁は「憲法なんか守らなくてもいい」と言っているのも同然だ。(前項のことから。)

 ――




 前項では、最高裁の判決を批判したが、実は、これはかなり大きな問題であると言える。なぜならこの判決は、
 「憲法なんか守らなくてもいい」
 と言っているのも同然だからだ。司法の最高機関が、憲法そのものを否定しているのだ。

 ――

 前項の1番目の章では、最高裁の判決を批判した。そこでは、こう述べた。
 (i) 「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とあるのに、それ以外の条件を政府が勝手に押しつけるのは、上記規定に明白に矛盾する。仮に最高裁の言い分が通るなら、「夫婦同姓」のほか、さまざまな条件を政府が勝手に押しつけてもいい、ということになる。しかし、それでは憲法に反する。

  ̄ ̄ ̄ ̄
 (ii)憲法24条には、こうある。(再掲)
 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」
 とある。ここでも「夫婦同姓を押しつける」というような国家権力の横暴は禁止されていると理解するべきだ。
 こういうふうに、立法府が法制化する枠組みには、慎重に制限がかかっている。なのに、最高裁が「国会で議論し、判断すべき事柄だ」というふうに白紙委任をしているのは、憲法の上記規定を無視しており、明らかに違憲の主張をしていると言えるだろう。
   ……(中略)……
 この件を「国会で議論し、判断すべき事柄だ」というふうに白紙委任するのは、憲法24条の第2項に違反しており、憲法違反の判断だと言える。

 ここでは、「憲法よりも国会の判断が優先する」という最高裁の方針を示した。つまり最高裁は、「法律よりも憲法を優先するという憲法の規定なんか、守らなくていい」という形で、「憲法違反の法律を許容してもいい」と示したことになる。つまり、「憲法を無視していい」と示したわけだ。(

 これは、憲法24条に限った話ではあるが、話は一事が万事であろう。今回の最高裁の方針を取るなら、あらゆる場面で、「憲法違反の立法が許される」ということになる。なぜなら、今回の最高裁の判決では、そう書かれているからだ。( ※ 詳細は前項で示したとおり。)

 ――

 たとえば、参政権がある。これは次のように規定されている。
第四十四条
 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

 この規定を思いっきり無視することができる。たとえば、次のようなことだ。
  ・ 性別では、男性のみに限り、女性や性転換者には認めない。
  ・ 居住地は、地方のみに限り、都会の居住者には認めない。
  ・ 収入は、年収 1000万円以上に限り、それ未満は認めない。
  ・ 職業は、雇用者に限り、被雇用者(労働者)は認めない。
  ・ 財産は、土地の所有者に限り、借間人は認めない。

 このような法律を立法化することで、なるべく自民党支持者ばかりに参政権を与えることができる。
 なぜか? 憲法自体は、そのような偏向を禁止しているが、憲法に反する法律を議会が成立させたなら、憲法違反の法律は認められるというのが、最高裁の判断だからだ。

 もちろん、それは非常識の極みである。そんなことを言い出したら、「おまえは馬鹿か気違いか?」と疑われたことだろう。
 ところが、二日前(23日)の最高裁判決は、そういう狂気的な判断を是認してしまったのである。なぜなら、「憲法24条の規定をまるきり無視していい(憲法24条に反する法律を是認する)」という方針を打ち出したからだ。
  → 上記の (

 そして、このことは一事が万事であるから、民法の規定に関係なく、どんな分野でも、「憲法違反の法律をいくらでも立法化していい」ということになる。つまり、「立法府で過半数を取れば、憲法違反の法律をいくらでも量産できる」というわけで、もはや独裁制を認めているのも同然だろう。
 換言すれば、「政府といえども法律を守らなくてはいけない」という法治主義を否定して、「憲法違反の好き勝手をいくらでもやり放題」という独裁制を容認しているわけだ。

 それが今回の最高裁判決の核心だ。まことにひどいことだと言える。

 菅首相が独裁者としてふるまっていると思ったら、最高裁が今度は独裁制にお墨付きを与えたことになる。
 日本はもはや中国や北朝鮮みたいな独裁国家に近づいたと言えるだろう。
 


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  ※ 以下は読まなくてもいい。


 [ 付記 ]
 この問題を裁判所で争うことはできるか? これについて考えてみよう。(訴訟マニア向け。)

 まずは、「訴えの利益」がないと却下されそうなので、「不合理な法律」というのを、うまく見つけ出さないと、裁判に訴えることができない。
 そこでいろいろ探してみたら、「不合理な法律」というのを、うまく見つけ出すことができた。それも、憲法24条との関連で。次のことだ。
 「夫婦が離婚したあとの元妻は、元夫の父(舅)と結婚したくても、結婚できない」
第735条【直系姻族間の婚姻の禁止】

直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条【離婚等による姻族関係の終了】又は第817条の9【実方との親族関係の終了】の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
( → 民法 親族 第735条【直系姻族間の婚姻の禁止】

 この法律は、ちょっとおかしい。
 「義理の親と義理の子の結婚は許せない」というのは、それなりに理由がある。
  → 義理の兄妹は結婚できるのに、義理の父娘は結婚できないっておかしくないですか?
 こういうことが起こるのは、片方は大人で片方は子供だ、という不公平さがあるからだ。

 しかし、元妻と元夫の父(舅)とでは、そういう難点はない。「何となく漠然と公序良俗に反する」と思えているだけのことだ。だったら、これは「結婚の自由」を定めた憲法24条に反すると考えていいだろう。実際、そういう意見も多いそうだ。
  → 離婚後、元の舅と結婚できるか 【大阪弁護士会】Q&Aデータベース

 従って、これを違法と見なして、裁判に訴える……という手もある。
 とはいえ、よほどの訴訟マニアでないと、十年近くもかけて訴訟をやる気にはなれないだろうが。(現実的には無理、ということ。金と根気が続かない。……ただし、金持ちと結婚したい若い女ならば、あるかも。)

posted by 管理人 at 23:01| Comment(12) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近、読書メーターでナイスをもらった、別のブログにコメントしたら、投稿自体が消されていてショックを受けました・・・

それに比べると、ここは良いですね(笑)
多少、超真面目で、ツンデレな一面もあるけど、人情と皮肉の効いたユーモアに溢れてる?

今回の判決は、極端な社会的マイノリティーに対しては、妥当かなと思っていたところなので、こういう解釈も出来るのかとも思いました。
法律は意外にも曖昧なので、弁護士や裁判官は、私情を挟まず、独裁を許さず、明快な結論を出して欲しいものです!
Posted by Hidari_uma at 2021年06月26日 05:42
 前項のコメントでは、民法750条の条文解釈といった細かいとこころに議論がいってしまって失礼しました。それで、前項で書き洩らした大事な?ことが1点あったので、要点だけ取り急ぎ述べます。

> 前項の1番目の章では、最高裁の判決を批判した。そこでは、こう述べた。
>(i) 「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とあるのに、それ以外の条件を政府が勝手に押しつけるのは、上記規定に明白に矛盾する。(後略)
>(ii)憲法24条には、こうある。(再掲)
 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 上記の筆者主張に抵触するような日本法(の法体系)は、本件(夫婦同姓)以外にもあるように思います。例えば身近なところで、民法752条では、

 (同居、協力及び扶助の義務)
 第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

 として、同居義務があるとされています。これなんかは、「それ以外の条件を政府が(国会が?)勝手に押しつけること」のように見えますし、憲法24条の「〜、住居の選定、〜に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」に引っかかってくるように思います。

 さらに重要なことは、この民法752条が憲法違反か否かにかかわらず、国や自治体(役所)は、現状この「同居義務違反」を容認していることです。だって、(同じ戸籍に入っている)夫婦のいっぽうの住民票は、普通に抵抗されることなく移せますから。国や自治体が、「別居するなら離婚が前提だ」と言ったり、夫婦いっぽうだけの転出届や転入届を受理しなかったり、などの事例は聞いたことがありません。それなのに、「夫婦別姓(または筆者が提案したような、夫婦の姓と個々が名乗る姓とを区別する)」に関してだけは、同じ民法の750条や、戸籍法74条などの条文規定を盾に取って頑なに認めないというのは、おかしなことになりはしませんか? この点は、さらに論考を深める手掛かりになりはしませんか?
Posted by かわっこだっこ at 2021年06月26日 14:10
 すみません、上の私のコメントの一部を訂正します。

 誤:それなのに、「夫婦別姓(または〜)」に関してだけは、同じ民法の750条や、戸籍法74条などの条文規定を盾に取って頑なに認めないというのは、おかしなことになりはしませんか?

 正 それなのに、「夫婦別姓(または〜)」に関してだけは、同じ民法の750条や、戸籍法74条などの条文規定を盾に取って、「別姓」の婚姻届の受理を頑なに認めないというのは、おかしなことになりはしませんか?
Posted by かわっこだっこ at 2021年06月26日 14:17
> 同居義務

 うまい例を見つけましたね。私の例より、うまい。
Posted by 管理人 at 2021年06月26日 14:37
民法に夫婦の同居義務の規定があるなんて知りませんでした。

ということは、単身赴任は違法なのですね。

話が脱線してすみません。
Posted by 反財務省 at 2021年06月26日 16:07
菅さんが、夫婦別姓を容認して、新しい法律をつくる意思があれば、国会も司法も右へ習えになるんじゃないですか?

これぞ自民党の独裁(最近の流行り)・・・
Posted by Hidari_uma at 2021年06月26日 16:11
 ついでですが、「夫婦別姓(氏)」をどのように実現するかについても、私の最終結論を書きます。

 (以下結論)

 これには、現在認められている「婚氏続称」制度がヒントになります。

 離婚をしたときには、または配偶者と死別したときには、婚姻時に姓を変更した側の人は、原則として婚姻前の旧姓に戻ります(これを「復氏」といいます)。しかし、婚姻を機会として配偶者側の氏を長く使用している場合には、旧姓に戻ることによって社会生活に支障が生じることも多くあります。このため、婚姻期間中の氏を離婚後にも継続して使用できる法律上の制度があるのです。これを「婚氏続称」といいます。

 <関係法令>

 〇 民法(明治二十九年法律第八十九号)
(離婚による復氏等)
 第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
 2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
(生存配偶者の復氏等)
 第七百五十一条 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。

 〇 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)
 第七十七条の二 民法第七百六十七条第二項(同法第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

 つまり、解決策として、この民法767条2項を参考にして、民法750条にも「2項」を作ってしまえば(改正してしまえば)いいのです。

 <民法750条の改正の例>
 (夫婦の氏)
 第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
 2 前項の規定により氏を改めた夫又は妻は、婚姻の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻の際に称していた氏を称することができる。

 いかがでしょうか? この私の案のミソは「ほとんど誰も傷つけない」という点です。「これまでのやり方を真っ向から否定しない」というところです。そもそも、今回の最高裁判決で反対意見を述べなかった裁判官らのホンネは、おそらく以下のようなものでしょう。

 「一部の個人(今回訴えを起こした人たち)の利益なんかのために、民法750条が憲法違反だとか、これまでの判例は間違っていたと認めるような判決を出すことはできない。それでは、明治以来ずっと、国家が間違ったことを国民に押し付けていたことになってしまう。先輩裁判官を始めとする先人たちの面子をつぶすことはできない。司法の権威を維持するためにも、これまでの法解釈の中身は大きく変えられない。」

 つまり、これが日本の「司法」の限界です。ですから、彼ら(最高裁裁判官ら)は「これは政治マターであり、立法の仕事だ」と言っている(謎をかけている)のではないでしょうか。そこをくみ取るしかないと思います、そうでないと、日本社会は変わらない構造になっているのでしょう。
Posted by かわっこだっこ at 2021年06月27日 15:27
 「ほとんど誰も傷つけない」という点は、選択的別姓制度も同様なのですが、それだと自民党が反対しています。

 「別姓論者を傷つけてやろう」というのが、自民党の方針なので、彼らのイヤガラセ欲を克服するのは、政治的には無理です。
 だからこそ、憲法の出番なんですけどね。
Posted by 管理人 at 2021年06月27日 15:47
 (訂正と補足)

 上の私のコメントで、死別したときには「復氏」が原則、と書きましたが、これは間違いでした。正しくは、既出の民法751条の規定にもあるとおり、それを希望して届け出れば、「復氏」して結婚前の戸籍(親の戸籍など)に戻ることができる、です。
 また、死別して「復氏(旧姓に戻る)」を選択しても、配偶者と「離婚」したことにはならないそうです。当然に配偶者の遺産を相続する権利は奪われませんし、姻族(配偶者の血族のこと。義父母など)との法律上の関係は変わらずに扶養義務も残ります。もしこの関係を解消したい時には、「姻族関係終了届」を提出する必要があります。

 また長くなりましたが、このポイントは、「離婚しなくても旧姓に戻せる」制度が既にある、「夫婦が法的に別姓を名乗っている」ケースは数限りなくある、ということです。よって、一部の輩が言っている「夫婦別姓は、家族の一体感が失われるから認めることはできない」式の論理は、木っ端みじんに粉砕されます。
Posted by かわっこだっこ at 2021年06月27日 16:06
こんなのもあるんですね?
https://note.com/konotaro_info/n/n673257702212
Posted by Hidari_uma at 2021年06月29日 07:26
 Posted by Hidari_uma at 2021年06月29日 07:26

 「選択的〜」ではなく、「例外的夫婦別姓制度」ですか。家庭裁判所の許可云々の部分を別にすれば、上の私の「結論」とほぼ同じですね。私としては、河野太郎氏と同じ考えというのは業腹ですが。しかし、やはり、まず先に民法750条や戸籍法74条を憲法違反だとねじ伏せようとするやり方は、夫婦別姓の実現を目指す上でうまいルートだとは思えません。
Posted by かわっこだっこ at 2021年06月30日 01:07
 河野太郎の案は、戸籍名は戸籍に乗せるだけであって、一切使われなくなる、というものです。戸籍名以外では、結婚後の姓はまったく使われません。実質的な夫婦別姓です。これでは家族の一体性が保たれないので、同姓論者としては受け入れが不可能です。妥協の余地なし。却下。

 一方、前項の案ならば、新姓と旧姓は併用されるので、同姓でもあり別姓でもあることになる。これなら家族の一体性が保たれるので、同姓論者としては受け入れが可能です。妥協できる。合意。
Posted by 管理人 at 2021年06月30日 06:21
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