2021年06月22日

◆ ソーシャルレンディングの破綻

 ソフトバンクの子会社と見える会社(ソフトバンクから派生した SBIHD)が、ソーシャルレンディングという金融事業を営んだ末に、破綻した。

 ――

 初めて聞く話で、私はちっとも知らなかったが、朝日新聞の社説が論じている。
  金融庁が、SBIソーシャルレンディング社に業務停止を命じた。第三者委員会の調査でずさんな経営実態が明らかにされており、処分は当然だ。親会社のSBIグループの責任と、不正の舞台になった仕組みの不透明さも、問う必要がある。
 日本でソーシャルレンディング(社会的融資)と呼ばれているのは、ネット上でファンドへの出資を集め、それを事業者が企業などに貸す仕組みだ。投資と貸金業の組み合わせで、2年前までは具体的な貸出先を明示しないことになっていた。融資が焦げ付いても、事業者には元本償還や利益分配の義務がなく、預金保険のような制度もない。過去にも別の事業者が問題を起こしている。
( → (社説)SBI子会社 見逃されたずさん経営:朝日新聞

 何だかよくわからない話だし、ただの放漫経営かとも思ったが、調べてみると、そうではなかった。

 まず、元社長が自殺するという怪異。
  東京・霞が関の日比谷公園内多目的トイレで、6月8日、maneoマーケット元社長の瀧本憲治氏(49)が、遺体となって発見されたニュースは、金融界に衝撃をもたらした。
 「瀧本さんといえば、ソーシャルレンディング(SL)というビジネスモデルを、金融界に確立した人。先が見えてアクティブでポジティブ。自殺するとは思えないのに、いったい何があったのか…」(SL業者)
( → 「金融界の革命児」の死…ソーシャルレンディング大手・元社長に“何が”あったのか(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 その背景は? 記事はこう続く。
 SLが限界に達していた。ネット上に開示された情報をもとに、投資家が企業に事業資金を貸し付け、配当を得るのがSL。金融機関が二の足を踏むリスクの高い案件が多く、その分、配当は10%前後と高い。

 親会社・SBIホールディングスの信用で業界ナンバー1となったSBISLは、今年5月末、廃業を明らかにした。
 その原因となったのは、プラットフォームを提供していたテクノシステムが経営破たんし、刑事事件化したこと。

 高利については、次の記事もある。
 富士キメラ総研によると、SLの国内市場規模は2018年の1280億円から、21年はほぼ倍増が見込まれているという。
 この投資手法が個人投資家の人気を集めてきた理由は、高い利回りにある。大手銀行の普通預金の金利が年0・001%という超低金利時代にあって、5〜10%程度の高い利回りをうたってきた。ただし、高利回りの源泉は高いリスクだ。投資家はまずSL業者が設立したファンドに「出資」を行い、そのファンドが事業者などに融資を行う。預金保険機構による1000万円の保証がある銀行預金と違って、元本は保証されておらず、借り手やSL業者自体が破綻すれば全額が焦げ付くリスクもある。それでも、高利回りと手軽に申し込めることが人気を呼び、受け付け開始後間もなく申し込みが殺到して、受け付けを締め切るケースも相次いでいた。
 人気が過熱する中で、業界最大手に成長したのがSBISLだった。ソーシャルレンディングの運営会社には新興企業が多い中、投資家は「SBIHDの子会社」というネームバリューに飛びついた。
( → 高利回りの罠 ソーシャルレンディングの危うい実態 | 毎日新聞

 ここまで見れば、本質がわかる。
 この業種は、低金利の時代にあって、5〜10%という異常な高金利を掲げた。こんな高金利を払えるはずがないのだから、自転車操業のすえに、やがては破綻するのは自明である。
 なのに、ありえそうもない高利回りの事業(貸出先)があると宣伝して、多額の資金を集めた。その際、誰もが信用しそうにないという疑心暗鬼を抑えるために、(ソフトバンクから派生した)SBIHD の看板を利用した。

 以上を一言でまとめれば、こうだ。
 「これは、高利回りで金を集める、よくある金融詐欺の一例であるにすぎない。ただし、(ソフトバンクから派生した)SBIHD の看板を利用したのが、普通とは違う」


 これに似た話は、本サイトの前身である「泉の波立ち」(小泉の波立ち)で、「マイカルの破綻」という話でも論じたことがある。
 この件は、Wikipedia でも紹介されている。
 マイカルは経営破綻前に約3,500億円の国内普通社債(SB債)を、他に転換社債や外債を発行し償還前となっていたが、マイカルに関わるこれら全てが債務不履行(デフォルト)となり、多くの投資家が被害を受けた。
 破綻間際まで格付け機関による信用格付けは各機関とも、一定の信用リスクがある「B」以上としていたものの、(見せかけの)企業の安定性と高利回りが両立して謳われていたことから、機関投資家以外の地方公共団体や第三セクターなども資金運用手段としてマイカル関連の債券を幅広く保有しており、億単位で損失を被ったところでは運用先選定などの責任追及が問題となった。
( → マイカル - Wikipedia

 高利の社債は紙屑になったかと思えたが、幸い、そうではなかった。
 会社更生計画によって個人などの小口債権者に対しては額面の30%、大口債権者は10%を上限に弁済することが決定し、債権は無価値の紙屑とはならなかった。

 このときは、(ソフトバンクから派生した)SBIHD の後ろ盾の代わりに、格付け機関による信用格付けで安全性が保証されていた。ところが実際には、高利の社債を償還できるはずもなく、あっさり破綻した。
 「特別に高利の社債」という時点で、もはやヤバい商品だとわかるし、破綻はほとんど必然なのだが、目先の利益という餌に目を釣られた強欲な人々が、せっせと社債を購入して、ひどい目に遭ったわけだ。

 マイカルの社債の破綻も、ソーシャルレンディングの破綻も、どちらも似たようなものだと言える。事業として成立しないのに、高利で金をたくさん集めた末に、破綻したわけだ。……これは最初から詐欺であるのだが、多くの人々が(強欲であるがゆえに)だまされて、引っかかって、大損をするわけだ。


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 ここまで見ると、この件を本サイトがどうして扱ったか、わけがわかるだろう。
 この件は、本サイトが大好きな「詐欺」の話なのである。「人をだまして儲けよう」という詐欺。それを扱うのが、本サイトの眼目の一つだからだ。

 ではなぜ、本サイトは「詐欺」の話が大好きなのか? それは、本サイトの狙いが「真実」だからである。「真実」を狙うがゆえに、それとは正反対の「詐欺」「嘘」「ペテン」もまた、対極的なものとして扱うのだ。

 物事の真実に到達するためには、偽りのものを見抜くことが必要だ。詐欺を見抜く目を養えば、それがすなわち、真実にたどり着くための「よすが」となるのである。


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posted by 管理人 at 22:55| Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「日本の金融企業であるSBIホールディングスのSBIは、元々はソフトバンクグループの金融関連部門として設立され「SoftBank Investment」の略として定義されていたが、後にソフトバンクグループから離脱したため、新たに「Strategic Business Innovator(戦略的な事業の革新者)」の略と定義している。」wikipediaより
Posted by 渡辺 at 2021年06月23日 01:54
 ご指摘ありがとうございました。文中の記述を
  誤: ソフトバンク 
  正: (ソフトバンクから派生した)SBIHD
 と訂正しました。

 ※ 私も区別ができなくて、両者を混同していました。これでは、だまされる人が続出するのも、当然ですね。

> SoftBank Investment」の略として定義されていたが、……新たに「Strategic Business Innovator(戦略的な事業の革新者)」の略と定義している。

 だますつもり、満々ですね。会社側がだまそうとしている。
Posted by 管理人 at 2021年06月23日 04:05
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