2021年06月19日

◆ 動物は感情をもつか?

 動物は、喜怒哀楽のような感情をもつだろうか? さらには、(他者への)愛や優しさという高度な感情をもつだろうか? 

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 人間的な文化活動について言えば、「人間に特有のものであって、動物は文化活動などをしない。社会的な知の蓄積などはしない」というのが常識だった。ところがこの常識は、「猿がイモを洗う」という行動が発見されて、否定された。河合隼雄の有名な業績だ。
 河合さんらは 50年代に宮崎県の幸島(こうじま)でニホンザルを調べ、エサで与えていたイモを海で洗い出すサルを確かめた。「イモ洗い」は群れの他のサルにも広まり、ヒト以外で「文化」と呼べる行動があることを初めて報告した。
 河合さんらが研究を始めた当時、「文化」は人類特有で、動物の「社会」は研究対象とみなされていなかった。河合さんらは群れの一頭一頭を名付けて区別する「個体識別」の手法などで科学的に説得力のあるデータを集め、学問の地位を築き上げていった。今西さんらと 68年度の朝日賞を受賞した。
( → 河合雅雄さん死去 サルに「文化」発見 97歳:朝日新聞

 次の記事もある。
 ニホンザルの群れを観察し、海水でイモを洗う行動が1匹の子ザルから広がって次の世代に受け継がれていくことを確認した。人間に特有なはずの「文化的行動」がサルにもあったという報告は、国際的な反響を呼んだ。

 80年代半ば、霊長研で修士論文の指導を受けた東京大大学院教授の佐倉統(おさむ)さん(60)は、「サルの気持ちが分かるようになったかね」と聞かれ、戸惑ったという。「当時、サルの『心』に踏み込み、擬人化する河合さんの世代の研究に、若手の多くは批判的でした」
 私自身も2002年、犬山市から丹波篠山に転居されたばかりだった自宅を訪ね、そうした批判について聞いたことがある。「サルの行動は喜び、悲しみ、愛情など、人間が共感できる感情を抜きにしては理解できない」ときっぱり語り、「サルを理解することは、人間を理解することです」と熱く続けた。白ひげと和服姿が、まるで仙人のように見えた。
 サル学の擬人的な研究は現在、動物の心や認知について理解する上で国際的に再評価されているという。

 ここでは、猿に感情があることが強く指摘されている。一方で、それには納得しがたいと思う人も多いようだ。

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 そこで私は次の記事を紹介したい。
  → シャンプーされて怒ってるのに、腕の中には収まりに行く猫さん→お気持ちがめっちゃ伝わる画像たちも「耳ピーン」 - Togetter

 シャンプーされた猫が怒っている。猫も「怒り」という感情をもつようだ。(ま、いやがることをされたら、不快になるのは、当然かも。)

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 さらに、次の記事を紹介したい。
  → 湖で溺れそうになっていた子鹿を救った犬の元へ、母鹿と子鹿が会いに来た! : カラパイア

 溺れかけた子鹿を見て、犬が一目散に駆け寄って、助け出した。
 その後、母鹿と子鹿がいっしょに訪れて、犬に感謝の意を伝えた。犬は子鹿の尻を舐めて、愛情を伝えた。(尻を舐めるのは動物における愛情行為。)





 こういう事例を見ると、「動物にも感情があるのだ」ということが実感される。特に、(他者への)愛や優しさという高度な感情をもつことも実感される。しかもそれは、種を越えた愛だとも言える。

 ――

 ここまでなら、まだ納得できるが、さらに高度な思考力さえ備えている生物があるとわかる。しかもそれは、大きな脳をもつ哺乳類ではなく、ほんの小さな脳をもつだけの鳥類だ。
 ニュージーランドのオークランド大学では、カレドニアガラスが与えられた道具を組み合わせてエサを獲得できるかどうかの実験を行いました。
 道具となるのは「石」と「木の枝」。ただし、石は透明な筒の中に入っており、道具として使うには、そこから取り出す必要があります。目当てのエサも透明な装置に入っていますが、エサの乗ったプレートは一定の重さをかけると傾き、出口からエサが転がり出てくる仕掛けになっています。実験の前段階として、カレドニアガラスにはそれぞれの道具がどのように使えるかを学習させておきました。
 実験がスタートすると、カラスはまず、棒をくわえて筒の中にある石をつつき出しました。続いて、この石を餌の入った装置に入れてプレートを傾かせ、難なくエサを獲得してしまいました。事前にカレドニアガラスが知っていたのは、それぞれの道具の使い方だけ。別々に得ていた知識を、その場で組み合わせ、問題を解決できることを示したのです。
( → “羽毛のある類人猿”…! カラスの“あの”行動の理由は驚異の「脳」にあった(サイエンスZERO)

 この番組を見たが、確かにすごかった。現実に目の前にある道具を操作するだけではない。ここに在って見えるものと、ここにはなくて裏側にあるものとを、ともに操作して、組み合わせる。これは、頭の中で多段階の論理的な思考がなくては、できないことだ。
 このことからまさしく、「カレドニアガラスには論理的な思考力がある」と判断できる。人間の赤ん坊の2〜3歳ぐらいの能力はありそうだ。1歳の人間は完全に負けるね。

 ――

 鳥や動物のもつ「脳力」は、人間が思っているよりもはるかに高レベルであるようだ。
 一方で、それを理解できないまま、「考えることができるのは人間だけだ」なんて自惚れている人々は、動物以下の思考力しかないのかもしれない。



 【 関連サイト 】

 ちなみに、次のような人間もいる。
  → 首相「俺は勝負したんだ」 宣言解除、五輪へのシナリオ :朝日新聞
 「俺は勝負したんだ」。ワクチン接種で陣頭指揮を執ってきた首相は最近、側近議員らに繰り返しそう語っている。
 首相周辺は「首相はワクチンの効果で感染状況が改善し、経済が好転する楽観シナリオを信じている」。17日の記者会見でも「ワクチンの接種は直近1週間で730万回、平均すると1日100万回を超えている」などと強調し、ワクチンへの期待感を全面的ににじませた。
 そんな首相に政権内からは、「楽観論が過ぎる。首相は何でもベストシナリオで進むと思い込んでいる節がある」(自民党中堅議員)と危惧する声が上がる。

 1億2千万人の命を賭金にして、壮大なギャンブルをする男。それに勝って得られるのは、首相の名声。それに負けて失うのは、国民の莫大な命。
 これを知った国民は、「おれたちの命が賭けられているのか!」と思って青ざめる。


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 しかし菅首相はニンマリとして言う。「賭に勝てば、オレはすごく得をする。賭に負けても、死ぬのは他人であって、オレが死ぬわけじゃない。プラスだけがあってマイナスがない賭けなんだから、これをやるおれはすごく利口だな」



 溺れそうな子鹿を救う犬と、菅首相では、どちらが愛や知性をもつだろうか?
 
posted by 管理人 at 20:16| Comment(2) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変興味深いブログだと思いました。
昔は計算ができる馬というのがありました。思い出しましたが、あれはインチキでした。猫がスライド式のガラス戸などは手で開けて入るのを見て、なかなか賢いと思ったことがあります。最近「動物意識の誕生」と言う本が出版されました。哺乳類、鳥類の他、タコなどもそれなりに感情があるのでしょうか。
ここのところ、利己と利他について考えています。利他性は人類を救うと思っていますが、ハミルトンの包括適応度方程式が生物のありようを表しており、そこから純粋利他は存在し得ないという結論が出ると言われます。自然科学者はそう思って疑わないようです。
首相の博打に国民が使われてはたまったものではありません。のるかそるかではなく、最悪の事態も踏まえて考えることが必要のように思いますが・・。
Posted by SM at 2021年06月21日 20:04
> 利己と利他について

 前に本サイトでものすごく詳細に論述しました。
 「生命とは何か(75)」のカテゴリの全項目を読むとわかります。長い。

 ひとことで言えば、利己でも利他でもなく、利全(全体の利益を増す)という発想で解決できます。

 とりあえず結論部を見るには:
  → https://bityl.co/7RaM
Posted by 管理人 at 2021年06月21日 20:10
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