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木星は太陽系 随一の巨大さをもつ。その巨大さは、次のことからもわかる。
木星は太陽の周りを回っていない ―― なぜなら、圧倒的に大き過ぎるからだ。
宇宙空間では、小さな物体と大きな物体があったとき、小さな物体が大きな物体の周りを周回するのではなく、両方の物体がその共通重心を回る。
木星は非常に大きいため、その共通重心は1.07太陽半径、つまり太陽の表面から約3万マイル(約4万8000キロメートル)離れたポイントにある。
木星の重量は太陽の約1000分の1だが、太陽と木星がそれぞれ共通重心を回るほどには十分重い。![]()
( → あなたは知ってた? 木星は太陽の周りを回っていない )
木星は他の(太陽系内)惑星に比べて、抜きん出て巨大である。あまりにも不自然だ。では、それはどうしてか?
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実は、これに先だって、次の話題があった。
太陽系では、火星と木星の間には、小惑星帯がある。これらは惑星になりきれなかった質量だ。ではどうして、小惑星帯の質量は惑星になれなかったのか?
それは、木星の巨大な質量に影響されて、惑星の形に固まることを阻害されたからである。
小惑星帯と呼ばれるこの地帯では、木星の強い重力によって惑星となる最終段階を阻まれ、微惑星は単一の惑星を形成することができずにそのまま太陽の周りを回り続けた。
( → 木星 )
小惑星帯は、太陽系形成後期の木星形成後、木星からの重力作用を受けて軌道が大きく乱された微惑星がそれ以上の合体成長を妨げられたもの、あるいは軌道を乱された結果、高速衝突・破壊を経験して形成されたものと考えられている。
( → 小惑星帯 | 天文学辞典 )
そばに巨大な木星があると、小惑星帯は一つに固まれない。ではどうして、そうなのか? それについて考えてみよう。
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私の考えは、こうだ。
“ 太陽系の中心から順に、火星、小惑星帯、木星がある。軌道を1周する周期は、内側にあるものほど速い。
小惑星帯は、軌道を周回しながら、外側にある木星を追い越す。追い越すときには、近づいてから、離れる。
小惑星帯にある質量(微惑星)は、木星に近づくたびに、外側にある木星に引っ張られる。それらのうち、木星に近いものは、木星に強く引きつけられると、長年のうちに木星にどんどん近づいて、木星に吸い込まれる。
その質量を吸い込んだ木星は、その質量の分だけ、木星自身の質量を増す。このことがどんどん進むので、木星はどんどん巨大化していく。
木星はどんどん巨大化すると、木星の重力はどんどん大きくなる。その重力のせいで木星に引きつけられる小惑星帯の微惑星は、さらにいっそう増えていく。
こうして、小惑星帯の質量はどんどん失われて減っていき、その分、木星の質量は加わって増えていく。”
以上のシナリオには、裏付けが得られている。なぜなら、小惑星帯の質量は、現在では非常に少なくなっているからだ。
小惑星帯内の全体の質量は2.3 ×1021 kgであると見積もられ、それは地球の月の1/35である。
( → 小惑星帯 - Wikipedia )
月の質量は地球の質量の 81分の1である。その 1/35 は、約 1/2800 である。およそ 1/3000 だ。これほどにも少しの量しか、小惑星帯には残っていない。つまり、99%以上の質量は失われた。
そして、その失われた質量は、隣の木星に吸収されたのである。だからこそ、隣の木星はこれほどにも巨大になったのだ。
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上の説明では、小惑星帯の質量が、固まらずに、微惑星になっていることが重要だ。
仮に小惑星帯の質量が固まっていたら(つまり惑星になっていたら)、上のシナリオは成立しないからだ。
考えてみよう。仮に小惑星帯の質量が固まっていたら(つまり惑星になっていたら)、どうなるか?
そこには惑星があったことになる。この惑星を「惑星X」と呼ぶことにしよう。
惑星Xは、固まっている。固まったまま、周回する。ときどき木星に近づくたびに、外側にある木星に引きつけられる。そのせいで、少しずつ軌道が外側にずれていく。とはいえ、それだけだ。質量の一部が木星に吸収されるわけではない。だから木星は、どんどん巨大化していくことはない。木星は最初からずっと原始の質量を保っている。その質量は、今の木星の質量よりも、ずっと少ない質量だ。
だからその場合、木星は、あまり巨大化しないことになる。
( ※ 仮に小惑星帯の質量が固まっていたら、だが。)
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結局、木星は、二つ分の惑星の質量をもっていることになる。だから木星はそれほどにも巨大化したのだ。
木星がかくも巨大なのは、いわば「悪魔合体」のように、二つの惑星の質量が合体したからなのである。
こうして、冒頭の質問に対する答えが得られた。
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さて。実を言うと、小惑星のことを考えると、この答えが得られた。先に答えを得たあとで、次の問題が作られた。
「木星はなぜ巨大なのか?」
つまり、問題に対して答えが得られたのではなく、答えを先に得てから問題を作ったのだ。(意外なタネ明かし。)
[ 付記1 ]
上記の説明を聞いても、疑わしく思う人もいるだろうから、念のためにググってみると、ほぼ同趣旨の説明が見つかった。
小星帯より太陽に近い軌道の惑星や遠い軌道の惑星は形成されているが,小惑星帯では惑星は形成されなかった.そして,現在の小惑星帯の総質量は惑星質量に比べてずっと小さいため,将来的にも小惑星帯で惑星を形成することはできない.そのため,小惑星帯は昔は惑星を形成できるほど豊富な材料物質があったが,現在の量まで激減したことが推測されている.実際,小惑星帯は木星に近いため,木星のように重い惑星が形成されると,その強い重力で小惑星の数はだいぶ減らされる。
( → 小惑星帯での衝突史 )
「小惑星の数はだいぶ減らされる」とあるが、減らされたものはどこへ行ったかは記されていない。だが、どこかへ消えてしまうわけではないし、遠いかなたへ飛ばされてしまうわけでもないし、太陽系中心の太陽に吸い込まれてしまうわけでもない。その行先は、軌道の外側にある巨大な重力圏、つまり、木星でしかありえない。
「木星に吸い込まれた」と表現しているのは、私だけであるようだが、論理的に考えれば、そう考えるしかないとわかるだろう。
[ 付記2 ]
原子の木星が巨大だったことには、理由がある。太陽から離れているので、水が水蒸気にならずに氷(固体)になったからだ。水蒸気はどんどん拡散して宇宙空間に消えてしまうが、氷ならば固体状態で惑星の重力圏に吸い込まれる。こうして水が散らばらずに惑星に凝集したおかげで、木星は巨大化した。
火星辺りまでは,円盤中の水が太陽エネルギーにより水蒸気となり,火星より外側では円盤中の水は氷となっています。この境界をスノーラインと呼びます(太陽からおよそ2.7天文単位。1天文単位はおよそ1.5億kmです)。
惑星ができるためには,チリなどが固まる必要があります。したがって,地球型惑星が作られる円盤の成分は岩石や金属が主なものになります。スノーラインの外側では,水が固まった氷があるため,氷が含まれる惑星となりました。
また,円盤中のガスの量は外側へ行けば行くほど増えます。したがって,氷となった水とあわせて,どんどん大きくなります。その結果,大きな木星や土星が作られたのです。
しかし,天王星型惑星にはガスがあまりなく主に氷です。木星や土星で多くのガスが使われたりしたためと考えられます。つまり,天王星型惑星は木星型惑星の後にできあがったと考えられるのです(下図C)。
( → 木星はなぜ大きい :広島市こども文化科学館 )
中心核は、惑星形成モデルから予測される原始太陽系星雲からの水素やヘリウムの集積が行われた際、同様に岩石や水の氷も木星の初期形成時に集まったと考えられる。
( → 木星 - Wikipedia )
原子木星ができたときには、氷や岩石を成分とした核があったようだ。その後、この核に引きつけられる形で、軌道上の大量のガス(水素・ヘリウム)が凝集していった。こうしてガス惑星である木星が誕生した。(土星もまた同様である。)
現在の木星は、非常に巨大だとはいえ、その成分の大部分はガス(水素・ヘリウム)である。これはもともと軌道上と周辺にあったものだ。
一方、中心核は、氷や岩石が多いが、これはもともと軌道上にあったもののほかに、小惑星帯にあった質量が吸い込まれたのだと推察される。(本項の説)
この説に従えば、巨大惑星誕生の順序は、次の通り。
氷と微惑星による凝集 → ガスの凝集 → 小惑星帯を吸い込む
《 加筆 》
ただし、上の順序はおおよその順序であって、完全に「ステップ・バイ・ステップ」だったわけではない。部分的には入り混じっている。
特に、次のことが大事だ。
「ガスの凝集の途中で、小惑星帯を吸い込む。そのせいで、質量が増加して、まわりから多くの質量を凝集させることができる。木星の軌道上にあった水素は、本来ならば太陽風によって遠ざけられてしまうはずだったが、小惑星帯を吸い込んで巨大化した木星の引力に引きつけられて、木星に吸い寄せられる。こうして多くの水素が木星に吸い寄せられていった」
つまり、木星周辺にある水素は、本来ならば太陽風によって遠ざけられてしまうはずだったのだが、木星が小惑星帯の微惑星を吸い込んで巨大化したことの影響で、木星に吸い込まれていった。こうして木星は本来あるべき以上に水素を吸い込んで巨大化していった。……これが、木星が巨大化した理由である。
※ なお、同じことは土星には成立しなかった。土星もまたノースラインの外側にあるので、ガスを吸い込んでガス惑星になることはできたが、小惑星帯の微惑星を吸い込むことはできなかったからだ。だから土星の質量は、木星の3分の1以下である。