2021年06月06日

◆ 高齢者医療2割負担

 高齢者医療2割負担が決まったが、もっと賢い方法はないのか? 

 ――

 高齢者医療2割負担が決まった。
 一定収入以上の75歳以上を対象に、病院などの窓口で支払う医療費の自己負担を1割から2割に引き上げる改正法案が3日、参院厚生労働委員会で自民、公明両党などの賛成多数で可決された。4日開かれる参院本会議で可決・成立する見通しだ。増え続ける高齢者の医療費の約4割を出している現役世代の負担軽減がねらいだ
( → 高齢者医療2割負担、成立へ 参院委可決 引き上げ対象370万人:朝日新聞

 「現役世代の負担軽減がねらいだ」と言われると、だまされやすい人はあっさり信じるだろうが、実際にはそうではない。
 《 医療費急増、課題なお 現役世代の負担軽減、月30円 》
 今回の見直しはこの負担増を年700円軽減する効果しかない。月額約60円、企業負担分を除けば1人当たり月約30円にすぎず、「現役の負担を軽減すると言い放つのはミスリード」(社民党・福島瑞穂氏)との指摘も出る。
( → 朝日新聞

 月約30円を得するからといって、それで喜ぶのは、朝三暮四の猿でもやるまい。30円では、木の実のひとつも買えないからだ。こんな少額をもらって喜ぶのは、数を知らない阿呆だけだろう。

 ではどうしてこんな無意味そうな制度変更をするかというと、国の負担額を減らすためだ。


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 国の負担は5割もあって、現役世代の負担額よりももっと多いから、これを減らしたい……というのが、真の狙いだ。
 しかし、それをそのまま口に出すと、反発を買いやすいから、「現役世代の負担を減らすため」というふうに嘘をついて、ゴマ化すわけだ。

 とはいえ、「国の負担額を減らすため」というのは、消費税増税の公約を破ることになる。消費税増税の公約は「社会保障の負担費に充てるため」だったからだ。なのに、そうしないのでは、公約破りとなる。
 嘘つきだね。毎度のこととはいえ、ひどいものだ。

 ――

 さて。それはそれとして、対案を考えよう。
 国の方針はひどいが、確かに、現役世代の負担削減は必要だ。高齢者の医療に無駄な金を大量投入するべきではない。
 ただ、そうだとしても、具体的にはどうしたらいいか? 対案はあるか?


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 ここで、いきなり結論を言おう。私としては、こう提唱する。
 (1) 低所得者の負担額を上げるより、高所得者の負担額を上げよ。
 (2) 高額医療費の0割負担をやめよ。
 (3) 85歳以上には高額医療をするな。


 以下、順に述べる。

 (1) 低所得者の負担額を上げるより、高所得者の負担額を上げよ。
 年収 200〜300万円ぐらいの低所得者の負担額を1割から2割に上げても、本人の負担額が倍増する(貧乏人が困る)割には、それによる総収入はたかが知れている。あまり効果的ではない。
 それよりは、年収 300万円以上、400万円以上、500万円以上について、それぞれ、3割、4割、5割の負担にするべきだろう。5割の負担というのは、かなり厳しそうだが、一定額(年20万円程度)までなら、やむを得ない。それ以上の分については、3割負担とすれば、現役世代並みだ。我慢できるだろう。


 (2) 高額医療費の0割負担をやめよ。

 現状では、高額医療費の制度があるので、一定額以上の高額医療費は、全額が国の負担となって、本人は0割負担となる。
 私たちが病気やケガで医療機関にかかるとき、健康保険証を提示すれば自己負担額は原則3割(小学生から70歳未満の場合)です。しかし、もしもケガや病気で大きく医療費がかかり、支払いが数十万円や数百万円ほどかかったとすればどうでしょう。こうした高額な医療費がかかったときでも上限を設けて負担を抑えてくれる制度が高額療養費制度(以下、高額療養費)です。
 この高額療養費の対象となる医療費は、1つの医療機関においてその月の支払額が21,000円以上のものに限られます。
( → 価格.com - 高額療養費(高額医療費支給制度)とは? 申請方法と注意点

 月 21,000円が上限であって、それ以上の負担については0割負担となるわけだ。
 そして、そのせいで、オプジーボなどの超高額な薬剤の国庫負担がやたらと増えるわけだ。
 オプジーボは小野薬品工業が2014年に発売した新型がん治療薬。当初は100ミリグラム約73万円と高額で注目を集めた。はじめは皮膚がんの治療薬として発売し、その後肺がんの治療でも公的保険が適用されるようになり、販売額が急増。保険財政に大きな影響を与えることなどから、これまで段階的に値下げされている。
( → オプジーボ、2万円値下げへ 当初価格の5分の1に:朝日新聞

 だが、月 21,000円というのは、いかにも安すぎる。低所得者であればやむを得ないが、高所得者や資産家であれば、もっと負担が可能だろう。そこで、「所得や可処分資産がある」というのを条件にして、高額医療費の0割負担をやめるべきだ。正確に言えば、限度額の水準を大幅に引き上げるべきだ。

 ※ なお、「可処分資産」には、自宅の不動産は含まれない。だから、住む家がなくなるという心配はない。また、500万円程度の現金も、「可処分資産」に含めなくていい。代わりに、それ以上の資産は、「可処分資産」に含めるべきだ。それを持つような富裕層には、医療費も十分に負担してもらうべきだ。
 ※ 「可処分資産」を調べるには、どうしたらいいか? 政府が調べるのは大変だから、自己申告制にするのが簡単だ。その上で、嘘をついて隠した分については、全額を没収すればいい。もともと「なし」として申告していたんだから、没収されても文句は言えまい。



 (3) 85歳以上には高額医療をするな。

 85歳以上では、たとえ高額医療で余命を伸ばしても、2〜3年ぐらいの余命延長にしかならないだろう。だったら、高額医療はなるべく控えるべきだ。特に、国の金でやるべきではない。
 国がやってもいいのが、「入院させて、ホスピスのケアをすること」ぐらいまでに留めるべきだ。オプジーボのような高額の治療薬を投じるべきではない。どうしてもやりたいというのなら、個人の資産でやるべきであって、国の金でやるべきではない。
 
 ※ この件は、(2) の「高額医療費の0割負担をやめよ」と密接に絡み合う。

 ――

 ともあれ、上の (1)(2)(3) を実施すれば、「超高齢者について無駄な医療費をどんどんつぎこむ」ということがなくなるから、医療費の大幅な削減に成功するだろう。



 [ 付記 ]
 ちなみに、「十分な福祉」を唱える北欧では、「超高齢者には医療をしない」というような原則があるそうだ。だから病院に行くこともなく自宅で死んでいく超高齢者が多いそうだ。
 たとえば、ノルウェーでは、こうだ。
「ノルウェーでは、かかりつけ医がひとりつきます。日本でのように、自分で行きたいときに複数の病院を“ハシゴ”することはできません。
 日本と違って、風邪“ごとき”で病院に行っても、相手にはしてもらえません。風邪は家で寝ていれば治るもので、病院は大きな病気のときにお世話になる場所だと、考えられているからです。待ち時間も長く、予約から診察までに1〜2週間かかることもよくあります。どうしてもすぐに診療を受けたいのなら、有料の私立クリニックなどに足を運ぶ方がよいです。また、ノルウェーでは、病院はビジネスではないため、薬も積極的に処方してくれません。日本の医療サービスに慣れている人は、『ちゃんと向き合ってもらえていない』と感じる可能性もあります」(ノルウェー)
( → 病人には厳しい? けれど、高齢者にはやさしい国って? | 大人未来Lab. 世界の暮らしと価値観にふれる「大人未来ラボ」

 デンマークでも状況はひどいそうだ。
 デンマーク国民は現在の現状に不満を抱いている。
 全般的な医療サービスの削減により、過去10年だけでも国営病院の4分の1が閉鎖された。
 デンマーク国民の半数以上は、公的な医療サービスが適切な治療を提供してくれるとは信じていない。業界団体であるデンマーク保険年金協会によれば、その結果として、デンマークの総人口570万人のうち民間医療保険への加入率は、2003年の4%から 33%にまで跳ね上がったという。
( → 焦点:ほころぶ「北欧福祉モデル」、デンマーク選挙の争点に | ロイター

 
posted by 管理人 at 21:42| Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>月 21,000円が上限であって、それ以上の負担については0割負担となるわけだ

だと嬉しいですね 負担上限はありますが対象にならない部分がかなりあるんです はからずも長患いですとね 生活保護世帯になること  検討したくなりますよ
Posted by k at 2021年06月07日 07:14
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