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前項では、福岡県の速度超過事故を紹介した。その詳細は下記の通り。
5月2日、福岡市の市道で、制限速度を大幅に超える時速100kmの車で、自転車の男子中学生をはね死亡させた疑いで、57歳の会社員の男が逮捕された。
山田容疑者は5月2日午後8時半ごろ、福岡市早良区城西の市道交差点で、自転車で道路を横断していた中学3年の少年を制限速度を超える車ではね、死亡させた疑いが持たれている。
( → 【独自】「事故は一瞬だからどうしようもない」逮捕の57歳男 時速100kmの車で中学生をはね死なす )
事故現場は、写真の手前のあたりの位置だが、写真の遠くの方には橋があり、その先は見通しがよくない。
ならば、橋の向こう側からでも、こちらを見るときの見通しは良くないはずだ。そう思ったので、確認してみる。
この事故現場を、橋の向こうから見ると、こうだ。
橋が盛り上がっているせいで、橋の向こう側(= 事故現場)がよく見えない、とわかる。
さらに、次のことに注意。
「ストリートビューのカメラは、屋根の上に高く設置しているので、見晴らしが良い」

逆に言えば、普通の車では、見晴らしが良くない。
このことから、次のように推定できる。
「実際に走っていた乗用車(ベンツ)では、運転者の視点は低い位置にある。だから運転者は、橋の向こう側の事故現場が、(盛り上がった橋に遮られて)ほとんど見えなかった。見えないまま、時速 100km で自転車に突っ込んだ」
事故の原因は、速度超過だけだったのではないのだ。橋もまた、理由の一つだったのだ。(だからといって免責されるわけではないが。)
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さて。以上のことを理解したあとで、事故を減らすための対策を考える。このような事故を止めるには、どうしたらいいか?
第一候補に浮かぶのは、「自動ブレーキ」だ。確かにこれが最強だ。とはいえ、自動ブレーキは新車販売に対する義務付けがすでに決まっていて、近いうちに実施される予定だ。これは既定なので、新たな対策にはならない。
では、さらに何をするべきか?
第二候補に浮かぶのは、「速度の自動抑制装置」だ。超・簡易版の「自動運転装置」とも言える。方式はいくつか考えられる。
・ そばにある速度制限の交通標識に従う。
・ 橋の手前で自動的に減速する。
・ 橋の手前にある、道路上の警告に従う。
(今回は「横断者注意」という警告で減速。)
・ 高速道路以外では、最高速 80km/h に制限する。
(地図と照合するか、ETC と照合する。)
上のような案が思い浮かんだが、技術的には「超簡単」ではないので、コストがかかりそうだ。また、精度も問題だ。(エラーが起こりがちだ。)
もっとうまい方法はないか? 困ったときの Openブログみたいに、うまい案は出せないか?
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そこで頭をひねったら、うまい案が浮かんだ。こうだ。
「ドライブレコーダーで、カメラ撮影をすべて動画記録する。さらに、速度記録装置と連動させる。これで速度状態を記録したあとで、速度超過があったら、警察に自動通報する」
事故を機械的に予防するのではなく、「速度超過を記録して、すべて警察に通告する」ということで、危険運転そのものを(心理的に)抑止するわけだ。
この場合は、自動車そのものを動かす(ブレーキをかける)ことは必要なく、単に自動車の状態を記録するだけでいいから、コストは格安で済む。技術的にも既存の技術で十分に足りる。
要するに、こうだ。
「自動車にブレーキをかけるよりも、運転手の心にブレーキをかける」
[ 付記1 ]
ドラレコに情報を記録すると、危険運転をした運転手は、記録媒体を抜いてしまうことで、都合の悪い情報を消去するかもしれない。証拠湮滅だ。
これを避けるには、記録した情報を、即時、クラウドにむせいん送信すればいい。そうすれば、記録媒体が消えても、クラウド上にデータは残されているから、証拠湮滅はできない。
「そんなことできるのかよ」と思うかもしれないが、すでに実現済みである。三井ダイレクト損保の「ドラレコを使う自動車保険」というタイプだ。

技術的には、これで足りる。
あとは、これ同様のシステムを、全車に義務づければいい。ちょうど、自動ブレーキを義務づけたように。
※ 保険加入と同時のセットがいいだろう。
※ このような保険に加入していないと、課徴金を取るといい。
[ 付記2 ]
課徴金と言ったが、むしろ「保険料値上げ」の方がよさそうだ。
「自動通知ドラレコシステムの搭載を、標準の保険とします。これを受け入れない人には、保険料を2倍にします」
こういうふうに保険料に格差を付ければ、誰もが「じゃあ、そうします」と言って、受け入れるだろう。
※ 受け入れない人は、スピード違反の常習者だけだろうから、そんなのを受け入れたい保険会社はないはずだ。受け入れれば、大損する。(保険料を 10倍以上にしないと、割が合わない。)
なお、「いっぺんでも速度超過をしたら警察に通報されるのか? それは困る」と思う人が多いだろう。だから、保険会社はデータを得るだけにして、警察への通報は、制限する。次の条件をすべて満たした場合のみ、通報する。
・ 速度超過が 20km/h 以上
・ 速度超過が5分間以上継続する。
・ 月に2回以上の回数
したがって、次のようなケースは、いずれも通報しない。
・ 速度超過が 20km/h 未満はノーカウント
・ 速度超過が5分間未満はノーカウント
・ 月に1回だけなら通報を免除
ただし、通報はしなくても、「優良ドライバー特典」(保険料減免)みたいなのは剥奪するべきだろう。
[ 付記3 ]
首都高だと、恒常的に速度違反が横行している。
→ 首都高の転落事故: Open ブログ
そこで、首都高の分は、別枠で扱うことにする。
( ※ 制限速度を若干上げるか、大々的に取り締まって、法定速度を厳密に守らせるか。……前者の方が現実的だが。)
そんな車、誰も買わないので、車が売れなくなって、日本は一挙に大不況になります。失業者が数百万人単位で出現する。日産あたりは倒産するかも。
一方で、その装置のない中古車は大人気で、中古車価格が一挙に2倍に上がる。庶民は車を買えなくなる。道路はガラガラで、速度超過に適する。金持ちのボンボンが、装置のない中古車で暴走して、事故はかえって増える。
むしろ「保険料値上げ」の方がよさそうだ。「自動通知ドラレコシステムの搭載を、標準の保険とします。これを受け入れない人には、保険料を2倍にします」こういうふうに保険料に格差を付ければ、誰もが「じゃあ、そうします」と言って、受け入れるだろう。(中略)次の条件をすべて満たした場合のみ、通報する。
・ 速度超過が 20km/h 以上
・ 速度超過が5分間以上継続する。
・ 月に2回以上の回数
⇒ 保険料2倍程度では、殆どの人が(誰もが)受け入れないと思います。本ブログの別記事にもありましたように、上の基準ですと、首都高速を走っているクルマ(ドライバー)のうちほぼ全てが引っ掛かります。ですから、例えば、私の任意保険料は団体扱いなので月額3,500円程度ですが、これが7,000円になってもこの新システムには加入しません(反則金・罰金の額のほうが高くなります)。まあ、保険料が5倍になったら考えるかもしれませんね。それか、契約内容を大幅に見直して、保険料を抑えるとかですね。すると、今は、対人保険は無制限に入っている人が多いはずですが、これが3,000万円が主流なんてことになったら、事故後にしわ寄せが行くのは被害者ということになってしまいます。
また、その「自動通知ドラレコシステム」を自分のクルマに付けるにしても、初期コストがざっと10万円くらいはかかりそうです。加えて、ETCみたいに機器のセットアップ料で3,000〜4,000円取られたり、定期検査をしないと保険を継続できないみたいな理屈で車検ごとに1万円とか取られたりしそうです(そういう薄く広く金をかすめ取る仕組みを考えるのが得意な人ばかりですから)。そのへんも、実現性に関係してくるでしょう。
それと、いま任意保険の加入率は、自動車保険と自動車共済あわせても9割未満だそうです(下のリンク@)。営業車両(トラック、バス、宅配、タクシー、公用車など)についてはもっと低いそうです。こうした最初から保険に加入しない人・会社(1割以上?)にとっては、この新しい制度ができても痛くもかゆくもないのですが、そもそも、そういう人ほどスピードを出して、その結果死亡事故を起こしたりしそうですので、当初狙いの効果が得られない(ザル)になりそうです。
最後に、筆者がいうような、保険会社が利害関係にある加入者について、その交通違反を認知しながら大規模に見逃すことを前提とした社会システムは、いまの法制上成立しがたいような気がします(リンクA)
@ https://dime.jp/genre/832390/
A https://news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi/20171029-00077519/
※他人の犯行を阻止しなかった者に刑事責任が問われたケース≠フところ
首都高の件は、書くつもりだったのが(うかつにも)書き落としてしまったので、[ 付記3 ] に書き足しておきました。
> 保険料2倍程度では、殆どの人が(誰もが)受け入れないと思います。
首都高の件を抜きにしても、もっと倍率を上げた方がよさそうですね。おっしゃる通り。
> 「自動通知ドラレコシステム」を自分のクルマに付けるにしても、初期コストがざっと10万円くらいはかかりそうです
もともとディーラーオプションやメーカーオプションで、自分で購入している人が多いから、そっちの金額と相殺される。追加は、クラウドへの自動通知の分だけだから、たいしてコストアップにならない。
料金表は下記。
→ https://cartune.me/carbic/y028
ドラレコ特約 ドラレコ単体購入
平均月額850円 数千円〜3万円
> 任意保険の加入率は、自動車保険と自動車共済あわせても9割未満
それは別の問題なので、いっしょに解決するといい。強制加入など。
> 保険会社が利害関係にある加入者について、その交通違反を認知しながら大規模に見逃すことを前提とした
見逃すのじゃなくて、検知しない。データはデータベースに送られるが、そこから条件に当てはまるものだけを自動抽出する。自動抽出しない分は、見逃すのではなくて、検知しないだけだ。
そもそも、N システムだって、ナンバー偽造や、汚れたナンバーなど、違法状態を検出可能だが、自動的にすべてを検出しているわけじゃない。検出漏れは必ずある。だからといって警察が警察を逮捕するわけじゃない。
少なくとも日本で車を走らせるなら、エンジンは軽自動車位でなんら問題ないです。
それを促進すると自動車会社の利益を相当圧迫するのは間違いないですが、交通事故死者数を激減させる効果はあります。
こういうのも色々辿ると海外の自動車会社(外国の自動車会社は半ば国営企業と言ってもいいですが。)との競争になるので安易にエンジン制御しづらいのは確かですが。
そういう意味では根が深いかな?とは思います。
少女 「うちのお父さん、スピード違反をしたせいで、死刑になっちゃった。お母さんは病気だし、食べ物にも困る。もう、体を売るしかない。すべては、変な法律のせい。何もしていない私を、こんな不幸な目に遭わせたのは、誰? 名乗り出て!」
新婦 「結婚式の直前に、新郎がスピード違反をして、死刑になってしまいました。おなかの子供は大きくなっているのに、どうしよう? もう、子供と一緒に死ぬしかない!」
親 「新郎が死刑になったので、かわいい娘が自殺してしまった! 産まれるはずだった孫も、いっしょに死んでしまった! 幸福の絶頂から、不幸のどん底に落とされてしまった! 誰だ、誰が私の娘を奪ったんだ! 呪われよ!」
これだと理論的にスピード違反はなくなります
→ https://www.cnn.co.jp/business/35134899.html
これは本文中で述べた
> 第二候補に浮かぶのは、「速度の自動抑制装置」だ。超・簡易版の「自動運転装置」とも言える。方式はいくつか考えられる。
の通りで、そのまんまです。GPS と デジタル地図と交通標識を組み合わせたもので、エンジン出力制限を加える。ブレーキは作動しないというところが、第二候補とはちょっと違うが、それだけだ。
コスト的・技術的に難点があるのと、既存車には適用できないので、本項の方式に比べて、圧倒的に劣ります。