2021年05月22日

◆ イージス搭載艦の費用膨張

 陸上イージスの代替案となるイージス搭載艦の費用が膨張している、と報道された。

 ――

 朝日新聞のスクープらしいが、重要な情報なので、ここにメモしておく。
  昨年6月に配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)に代えて、政府が整備を決めた代替艦「イージス・システム搭載艦」2隻の総コストが、少なくとも9千億円近くと試算されていたことがわかった。計画当時に総コストが4500億円ほどとされた陸上イージスの2倍の水準となる。コストの総額は「1兆円規模まで膨らむ」(政府関係者)可能性がある。

 公表済みの導入費と、非公表のこの維持費を足し合わせると、2隻で「8592億〜8842億円+α」となる計算だ。「+α」は試算すらできないコストだという。これは、自艦を守るための装備品の維持整備費としており、総額はさらに膨らむ可能性が高い。

 「24時間365日、日本全体をカバーできる」との触れ込みだった陸上イージスに比べ、導入効果が3分の1になるにもかかわらず、コストは少なくとも2倍程度かかることになる。
( → 陸上イージス代替艦、コスト倍増9千億円に 防衛省試算:朝日新聞

 これに対して、はてなブックマークでは
 「普通のイージス艦でいいんじゃないの…だめなの?」
 というコメントがあったが、だめである。なぜなら、普通のイージス艦はもともと「陸上イージスに比べ、導入効果が3分の1になるにもかかわらず、コストは少なくとも2倍」だからだ。どっちみち、同じことだ。

 ※ イージス艦は、人員の交替や、艦の補修・整備のために、ドックに入っている期間が長い。かわりばんこに、ドックに入る。年間で3分の1ぐらいしか稼働しない。一方で、イージス以外の装備も必要なので、コストが倍以上になる。
 ※ そこで、「浮く」ことだけに特化した艦船が、「多胴船」だが、いかにも能なしを感じさせるものだ。





 ――

 そもそも、迎撃ミサイルというもの自体が、ただの無駄だ。
  ・ 敵が飽和攻撃をしてきたら、対処できない。
  ・ 敵が高速弾道弾(ICBM)を打てば、対処できない。
  ・ 迎撃ミサイルの弾数が少ないので、いずれは弾切れになる。
  ・ 迎撃ミサイルのコストがべらぼうに高い。

 もともと百発百中ではないし、たいして当てにならないのである。

 もっと利口な方法がある。それは「こちらが巡航ミサイルを用意して、敵の首脳のいる場所を狙う」ということだ。
 そうすれば、敵の首脳は、自分が死にたくないので、その対策をする。つまり、敵のミサイルを、日本の巡航ミサイル基地に向けて撃つ。
 とすれば、日本の巡航ミサイル基地は、敵のミサイルを引きつける誘蛾灯のような役割を果たすので、圧倒的に高精度で、敵のミサイルを引き受けることができる。
 このことは、前にも述べた。(巡航ミサイルでなく弾道ミサイルで述べているが、同じことだ。)
 うまい方法がある。北朝鮮のミサイル攻撃をすべて避ける方法だ。
 それは、陸上イージスか? 違う。陸上イージスは、敵が一斉攻撃(飽和攻撃)を仕掛けたら、一挙に無効化するので、意味がない。そんなのよりは、もっとうまい方法がある。こうだ。
 「日本が北朝鮮を攻撃するための弾道ミサイルをたくさん設置する」
 なぜか? こうすれば、敵の第一目標は、原発でなく、弾道ミサイルとなるからだ。
 そもそも一般的に、原発は第一目標とはならない。第一目標となるのは、軍事基地だ。特に、航空基地とミサイル基地だ。それこそが、北朝鮮にとって、自国を攻めてくる最も怖い兵器だからだ。だから、何にも先んじて、この二つを第一目標とする。すると、その時点で、日本の原発は第一目標でなくなる。かくて、日本の原発は、敵のミサイル攻撃を受けなくなる。(敵がありあまるほどのミサイルを持っているのでない限りは。)

 結局、日本が原発基地を守るために必要なのは、陸上イージスのような防御兵器ではなく、北朝鮮の国土をたたくための攻撃兵器なのである。具体的には、ステルス爆撃機と弾道ミサイルだ。これこそが北朝鮮にとって最大の攻撃目標となる。これらをたくさん配備しておけば、これらがいわばオトリとなる形で、原発に来るはずのミサイルを引き受けてくれるのだ。

 つまり、大切なものを守るには、十分な防御態勢を整備すればいいのではなく、十分な攻撃態勢を整備することによって、敵の攻撃を引き受ければいいのである。いわば、女を守るために身をさらす男のように。この男が、攻撃的にふるまうことで、敵の攻撃を一身に引き受ければ、女は守られるのだ。
 ここには発想の転換がある。目からウロコふうだ。

 「攻撃は最大の防御なり」と言われる。それとは異なる意味で、攻撃用兵器は最大の防御用兵器となるのだ。(自らがオトリ・犠牲になることで。)
 
 ※ この場合、原発施設は守られるかわりに、航空基地とミサイル基地には多大な被害が生じる。しかし、それでいいだろう。肝心のものを守るためには、それで仕方ない。
( → 原発のコストアップの無駄: Open ブログ

 ――

 巡航ミサイル基地なら、コストは安い。(巡航ミサイルは迎撃ミサイルに比べて、ずっと安い。)
 しかも、そのうちの多くを、ダミー(デコイ・オトリ)にしておけば、コストはさらに格安となる。
 こうすれば、うまく解決できるのだ。



 [ 付記 ]
 ダミー(デコイ・オトリ)で敵軍を引きつける……というのは、歴史上、有名な作戦がある。ノルマンディー上陸作戦だ。
 そのとき、米軍はドイツ軍を欺瞞するために、大量のダミー(デコイ・おとり)を並べておいた。これは、ケン・フォレットの小説「針の眼」に詳しく書かれている。その紹介文。
 テヘラン会談で、チャーチルはこう発言したという。
「戦時では、真実は極めて貴重であるため、嘘というボディーガードで常に護衛しておかなくてはならない」

「Dデイの上陸作戦は、広範囲にわたる世界規模の欺瞞作戦、つまり真実を守る数々の嘘から、援護と支援を受けることになった。

 『針の眼』が描く1944年。イギリスは、カレー対岸のイギリス南東部沿岸に大規模な軍隊、パットン将軍率いるアメリカ第1軍が集結しているという偽情報を流すと同時に、上空から偵察するとそれが事実であるかのように見せかけるため、板やゴムで作った擬製の上陸用舟艇、戦車、戦闘機を大量に並べていた。
( → 【書評】Dデイ欺瞞工作を描いた傑作スパイ小説(前編):ケン・フォレット著『針の眼』 | nippon.com






https://amzn.to/3vcOlRM




 【 関連サイト 】

 この件(イージスのコスト高騰)が報道されたあと、政府は「知らぬ、存ぜぬ、隠します」で、すっとぼけている。
 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)に代えて、政府が導入予定の代替艦2隻の総コストを少なくとも9千億円近くと試算していたことをめぐり、国会では21日、野党が政府の説明責任を追及した。
 防衛省が昨年11月、試算を内部文書でまとめていたことを朝日新聞が21日に報じた。これを受け、衆院安全保障委員会では、立憲民主党の重徳和彦氏が「(コストの)規模感を全く示すことなく検討が進められている」と問題視。文書の存在を尋ねたが、同省幹部は「お答えすることは差し控える」とした。
 重徳氏が規模感を明かすよう求めたのに対し、岸信夫防衛相は「詳細の検討を進めている。できるだけ早いタイミングでお示ししたい」と答弁した。岸氏はこの日の閣議後会見で「現時点では詳細な数値を示すことは困難」とも述べた。
( → 代替イージス試算9000億円、野党が追及:朝日新聞




 【 関連項目 】
 本文中の動画にある「多胴船」については、前に別項の最後で、軽く言及した。
  → ミサイル防衛:アイアン・ドーム 2: Open ブログ

 
posted by 管理人 at 14:36| Comment(1) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一隻あたり少なくみても1/2兆円 まじで一つの国家になるレベルじゃないか 初代金剛はどんな活躍したんだろう 鳴り物入りで竣工したの覚えてるが まともに想定どおりの運用できたのかな
Posted by k at 2021年05月23日 17:55
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ