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朝日新聞が報じている。
東京都内を通る首都高から14日、走行中の乗用車が外壁を乗り越え、隅田川に転落した。運転していた男性は死亡し、警視庁が原因を調べている。首都高からの転落事故は過去にも発生。河川上を通る高架道路なのに、なぜ壁は車が乗り越えてしまう高さなのか。
( → 首都高の壁、90センチの不思議 外壁越え死亡、過去にも事故:朝日新聞 )
「不思議」というタイトルで、「なぜ」と書かれると、さくりたくなってしまうのが私の
乗用車はまず道路左側の外壁に接触した後、右側に突っ込み、約15メートル下の川に転落した。
乗り越えたコンクリート製の外壁の高さは約90センチ。その手前にあった高さ40〜50センチの緩衝材を踏み台のようにして、外壁を乗り越えたとみられている。
何だ、すでに正解は書いてある。「手前にあった高さ40〜50センチの緩衝材を踏み台のようにして、外壁を乗り越えた」だ。
ただ、状況はどうなのか、はっきりしない。
今回の区間は上限速度を守る限り、事故は起きないという前提になっている。このため、「90センチの壁高欄で問題ない」(担当者)との立場だ。
何言っているんですか。「問題ない」というが、実際に問題が起こっているでしょうが。なのに、「問題ない」とは、頭がおかしいのか? まるで菅首相だ。 (^^);
上の話では「上限速度を守る限り」とあるが、そもそも、今の首都高は法定速度を守っている車はほとんどない。法定速度は 50km/h または 60km/h だが、その 20〜30km/h 上の速度で走る車が大部分だ。
裏付けを示そう。
(i) 法定速度の基準は、下記にある。
→ 首都高速道路速度規制図
法定速度は 50km/h または 60km/h だとわかる。中心部は 50km/h の環状線(ピンク色)がある。他は 60km/h が多い。
(ii)実際の速度状態は、下記の動画にある。
見ればわかるように、後ろから来た車がどんどん追い抜いている。スポーツカー(ランボルギーニ?)に至っては、ものすごい速度で追い抜いている。
以上のように、法定速度と実際の速度には乖離がある。建前の法定速度を語っているだけでは駄目なのだ。
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そこでもっと調べると、現場はここだ。
これの下から上へ走って、中央付近まで来ると、道路の右側を越えて、(図の右下のあたりの)川中に落ちたのだ。
これをストリートビューで確認しようとしたが、後で判明した情報と照合すると、ストリートビューには情報がないようだ。路線が3本しか記してないが、実際の走行は一番北側の4番目の路線を通っている。
そのことは、動画からわかる。
この動画の 51秒の画面。

この図の ■ の箇所に転落した。転落する前は、すぐ左下の部分で、壁を乗り越えた。
なお、他の三つの路線(右側)は、ストリートビューでも見られる。
動画の 1:33 の画面では、同じ場所で、緩衝材が はじけているのがわかる。

動画の 1:28 の画面では、そこより少し北側の場所で、側壁の高さが 70〜80cm と示されている。

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二つ上の画像( 1:33 )では、テロップに「手前の緩衝材に乗り上げ川に転落か」と記している。
つまり、この緩衝材が、事故の主原因だと言える。
逆に言えば、この参照材を撤去するか、緩衝材の高さを側壁と同じ 80cm ぐらいにすれば、事故は起こらなかっただろう。
金をケチって小さな緩衝材にしたことが、人の命を失わせる原因だったと言える。管理者に責任があると言えよう。裁判で訴えれば、管理者責任を問うことはできそうだ。
※ あなたが弁護士なら、さっそく遺族を訪れて、「着手金無料・成功報酬高額」という条件で、弁護を引き受けるといいだろう。
ただ、これがアメリカなら、間違いなく高額の賠償金をせしめることができるが、日本の裁判所は、政府や自治体や公的組織に大甘なので、どういう判決になるかは、見通しがたい。(政府が訴えられると)黒を白と言いくるめるのが、日本の裁判所だからだ。
ともあれ、裁判で訴えたりして、管理者責任を問うようになれば、この手の「金をケチったせいで事故が起こる」ということは、減っていくだろう。
[ 付記 ]
緩衝材が小さいのは、緩衝材の背が高いと、転げてしまうからだろう。
だが、そもそも緩衝材を「置くだけ」という方法が、設置法としては安上がりすぎだ。きちんとボルトやナットで固定するべきだろう。
そもそも、この緩衝材って、何でできているんだろう? 1:20 あたりに拡大画像があるが、プラスチックか何かのようにも見える。自動車用であって、人間用ではないから、発泡スチロールのような柔らかな素材でないことは確実だ。金属製かもしれない。金属製ならば、十分に重さがあるから、風で吹き飛ぶこともなさそうだが。……ま、どうなんでしょうね。
【 追記 】
さらに詳しいことがわかった。動画の 1:19 の箇所を見る。

すると、次のことがわかる。
(1) 緩衝材の断面は、およそ 三角形または台形である。
(2) 壁の下部には、内側に向けた出っ張りがある。
以上を図示すると、下図のようになる。

この図で、左から自動車が衝突すれば、台形は右に傾く。(台形の下部が、壁面下部の出っ張りにぶつかるからだ。)
すると、台形部分の全体が、斜面状のジャンプ台のようになるから、自動車は壁を越えて、道路の外に飛び出してしまうわけだ。
これで、自動車がジャンプしたわけがわかった。
なお、壁面下部の出っ張りについては、ストリートビューに画像がある。(場所は事故の箇所とは少しズレているが。)
⇒ いろいろあると思いますが、ガワは難燃材入りのポリエチレンで、中身は水袋とか砂袋というのが一般的だと思います。全部は調べていませんが、金属製はまずないでしょう(ワタクシ的には、金属製を想定する人がいることが驚き)。
今回、中身が砂袋なら良かった(衝撃をうまく吸収した?)のですが、たぶん水袋だったので、緩衝材がクルマと側壁の間に挟まって破裂した際の反力で、クルマのフロント部が持ち上がってしまったのでしょう。下のサイトの中ほどに、ドラム(円筒)型緩衝材での実験時の写真がありますが、まさにこうなったのでは。今回のものは、山(三角)型であり、ご指摘のとおり高さも低かったので、「ジャンプ台効果」と「破裂効果」のどちらが主因だったのかは推定が難しいですが。いずれにせよ、今回の事故現場のような場所にこれを設置するのは、考えが足りないと言われても仕方がありませんね。
https://www.ccbind.co.jp/product/e4da3b7fbbce2345d7772b0674a318d5.asp
ジャンプ台があった、という話。
⇒ よく見つけましたね〜。すごいです。
しかし、ここまで証拠を突き付けられても、担当警察や首都高速道路株式会社のほうは、「何と言われようが、クルマのスピードの出し過ぎが原因。法定の上限速度を守っていれば、こんな事は起こらなかった(だから、道路行政や道路管理者の責任ではない)」という結論で、事故(実際は事件)をクローズさせるんでしょうね。