2021年05月20日

◆ カカオの児童労働問題

 チョコレートの原料となるカカオ豆については、アフリカの児童労働が問題視されている。ただ、その対策がまずい。

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 アフリカの児童労働が問題視されている。
  → 「もうチョコを買わない」が正しい選択なのか。生産現場の隠れた児童労働を知って考えたこと | ハフポスト


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 これを解決する方法として、フェアトレードがしばしば提唱されるが、そこで売られるチョコレートは超高額だから、買う人はほとんどいない。大会の水をバケツですくうぐらいの効果しかない。焼け石に水。つまり無効。
 結局、フェアトレードというのは、やっている人には自己満足であるに過ぎず、購入する人にとっては善意を食い物にされるだけだ。一種の詐欺である。この件については、前にも何度か述べた。
  → フェアトレード (詐欺・問題): Open ブログ
  → フェアトレードはアンフェア: Open ブログ

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 では、どうすればいいか? 代わる案も提案されている。
 「児童労働のない製品の関税をゼロにする」という国際通商ルールを導入することで、児童労働のない製品の方を「安く」市場に行き渡らせる仕組みだ。
( → 「児童労働がない」商品を当たり前にするために。新しい仕組みの鍵は、ここにあった | ハフポスト

 児童労働のない製品を関税免除する、という方法だ。
 これは、うまい方法のようだが、手続きが難しい。「児童労働のない製品」というのを証明しにくい。ニセの証明書を作れば、巨額の金が入るわけだから、何億円もの偽札を作る動機を与えるようなものだ。この手の方法は、通常、犯罪や賄賂を跋扈(ばっこ)させることになるだろう。愚策と入れる。
 そもそも、こういうふうに「個別に直接的に選り分ける」というのは、下手な方法だ。物事の本質を見失っている。単に表面的で小手先の対策をしていることになる。もっと良い対策を取るべきだ。では、どんな? 

 こういうのは、小手先で考えるべきではなく、本質的に考えるべきだ。
 すると、「児童労働をしないものを優遇するように市場原理を歪める」という国家管理経済の方式はまずい、とわかる。かわりに、「市場は自由市場のままで、児童労働そのものをなくす」という方式がいいとわかる。
 では、どういうふうに? それは、少なくとも、市場で需給を国家管理で調整する方法ではない。もっと根源的な方法だ。

 ――
 
 ここで、視点を変えて、現在の需給の状況を見よう。
 カカオ豆の価格が安すぎるようだが、だとしたら、生産過剰ではないのか? そういう疑いがある。そこで調べてみると、まさしくそうだとわかる。
  → カカオ豆、供給過剰に?ICCOが16―17年度見通し、西アフリカの増産裏目 | 金融・商況 ニュース | 日刊工業新聞 電子版
  → カカオ豆の「供給過剰」がチョコ好きの悪夢になる理由 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 児童労働の賃金が安すぎるのは、カカオ豆の相場が安すぎるからだ。これが市場の現状なのだ。
 とすれば、カカオ豆の供給を減らせばいい。そうすれば価格が上昇するし、そうなれば、賃金も上昇する。
 ところが、そうならない。もともと貧困な状況なので、少しでも金を稼ぐ必要がある。「カカオ豆の供給を減らせばいい」とはわかっていても、「生産を止めて無職になる」というわけにも行かない。都市労働者ならば他の仕事もあるが、アフリカの地方では他の仕事なんかはない。農業をやるしかないのだ。こういう状況のなかで、生産を止めることもできずに、低い賃金での労働を強いられる。しかし、そうすればそうしたで、相場が下がるから、いつまでたっても低賃金だ。
 かくて、低賃金と低価格の悪循環が続く。そこから脱し得ない。
  → ガーナ 児童労働の実態 - NHK BS1
  → チョコレート業界が児童労働問題に苦戦するワケは - SWI swissinfo.ch
  → 「チョコレート戦争」膠着で農家受難 カカオ豆生産国、製造者と補償対立 - Sankei

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 困った。どうする? そこで、困ったときの Openブログ。正しい方法を示そう。
 原理的に言えば、これは、市場原理では解決できない。「供給が過剰だから供給を減らす」というような方法では解決できない。
 かわりにどうすればいいかというと、「イノベーションによる成長」( by シュンペーター )というのと同様の発想を取るといい。ただし、シュンペーターが述べたのは「国全体のマクロ的な成長」の話だったが、本項では特にアフリカの農家での話に限定される。
 そこで適用される概念は、「イノベーション」ではなくて、それによく似た概念である「技術的進歩」である。そのためには、画期的な新技術を開発する必要はなく、すでに知られた先進的な技術を後進国に普及させるだけでいい。その方法は「技術指導」という言葉で説明できる。

 途上国への技術指導。……これこそがアフリカの貧困を解決する方法である。

 その基本的な考えは、ずっと前(2009年)にも述べたことがある。
  → フェアトレードとベトナムコーヒー: Open ブログ
  → フェアトレードはアンフェア: Open ブログ

 このような技術指導によって、豊かになる農家も多い。そのことはググればわかる。
  → https://bit.ly/3sUhdwv ( Google 検索 )

 ――

 ただ、技術指導だけですべてうまく行くとは限らない。作物の選択も大事だ。
 アフリカでも、できれば穀類を作れるといいのだが、気候の条件から、穀類は作りにくいようだ。(雨季と乾季がある。年間降水量も少なめだ。)
 
 できるのは、カカオやコーヒーぐらいだ。で、カカオの価格が安すぎるのであれば、コーヒーを作るといいだろう。
 実際、ベトナムでは、コーヒー栽培をすることで、非常に裕福になった農家が多いそうだ。ここでは、栽培技術の向上も寄与している。
 ベトナムにならって、アフリカでもコーヒー豆の生産を拡大するといいだろう。技術指導によって。……それこそが貧困を脱する方法であり、児童労働をなくす方法でもある。

 フェアトレードや関税廃止などよりも、コーヒー豆を使うというアイデアと技術指導こそが、問題を解決する手段となる。
 魚を与えるよりも、魚を釣る釣り竿を与えるべきなのだ。
 


 【 関連項目 】

 この結論と同様のことは、前にも述べたことがある。そちらを参照。ここに正解がある。
  → フェアトレードに代わるもの: Open ブログ
 日本のチョコレートメーカーが技術指導している、という実例も示している。
 
 冒頭記事では、正解を知らない人たちが迷っているので、そういう人たちのために、本項では初心者向けに概括的な案内記事を書いておいた。
 説明内容自体は、すでに述べた各項の方が詳しい。
 

 

 
posted by 管理人 at 22:05| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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