2021年05月16日

◆ 電力自由化で電力不足?

 電力の供給が不足気味だ。次の夏と冬には需給が逼迫しそうだ。電力自由化のせいらしいが、どうすればいい?

 ――

 朝日新聞が報じている。
 梶山弘志経済産業相は14日、この夏と冬の電力需給の見通しが近年で最も厳しいとして、5月中に緊急対策をまとめる考えを示した。東京電力管内では、需要のピーク時における供給力の余裕度を示す予備率が、来年2月にマイナス 0.3%となる見通し。マイナスになるのは異例で、電力会社として供給力を増やす取り組みが求められる。
 経産省によると、中部や関西、九州など6電力会社の来年2月の予備率は3%で、安定供給に最低限必要とされる水準にとどまる。今年7月の予備率も、北海道と沖縄を除く全国8電力会社で 3.7%と厳しい。
 供給力不足の背景には、大手電力会社が期待するほど原発の再稼働が進んでいないことがある。電力小売りの自由化で経営に余裕のなくなった大手電力が、運転にコストがかかる古い火力発電所を、相次ぎ休廃止していることも要因だ。経産省によると、この5年で廃止された石油火力は原発10基分(約1千万キロワット)になる。
( → 今冬は電力供給が不足 東電は予備率マイナス0.3%:朝日新聞

 記事のタイトルと冒頭を読んだときには、「変だな」と感じた。もともと旧式の発電設備がたくさん余っているはずなので、需給が逼迫したときには、一時的に旧式の発電設備を稼働させることで、需給の不足に対処できるはずだからだ。
 そう思って、記事を読み進めると、まさしく「旧式の発電設備はたくさんある」とわかった。その量は原発10基分である。だから、電力不足などは、本来は起こるはずがないのだ。
 ところが、その原発10基分の電力(約1千万キロワット)を、あえて廃止してしまったのだ。それで電力不足になるとしたら、自分で自分の首を絞めているのも同然だ。
 まるでゴジラが都市を破壊するように、電力会社が自ら自分たちの発電所を破壊する。そのあとで、「発電所が足りません」と言う。頭がおかしいのではないか? 

 ――

 ではなぜ、電力会社はそういう狂気的なことをするのか? 記事にはこうある。
 「電力小売りの自由化で経営に余裕のなくなった大手電力が、運転にコストがかかる古い火力発電所を、相次ぎ休廃止していることも要因だ」

 古い火力発電所を運転すると、コストがかかる。だから古い発電所を廃棄して、新しい火力発電所に置き換えればいい。……そういう発想で、古い発電所をどんどん廃棄していったら、需要過大のときには供給が足りなくなってしまった、というわけだ。
 
 ――

 いかにも馬鹿丸出しだが、こういう失敗を、えてして人はなしがちである。そして、それを避けるにはどうすればいいかということを、たいていの人は理解していない。

 そこで、正しい発想とは何かということを、見事に指摘した本がある。下記だ。「ザ・ゴール」という本。ベストセラーになったこともある。



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 ここでは、次のことが指摘されている。
 「一時的に供給不足になるときには、運転コストが高い古い機械を一時的に使っていい。ここでは、設置コスト(固定コスト)が低いことが優先される。
 逆に、運転コストが低い新しい機械を一時的に使うべきではない。ここでは、設置コスト(固定コスト)高いことが問題視される」


 このことは、「ボトルネック」という概念とともに説明される。前に別項で説明したこともある。再掲しよう。
 この本で示されているように、ボトルネックを解除するには、ボトルネックを解除するための、専用の供給を使えばいい。その専用の供給は、部分的には高コストであってもいい。(ディーゼルなどにより高コストであってもいい。)
 一方、システム全般の供給能力を高めるのは、愚策である。それではコストがかかりすぎる。また、ピーク時以外には、システムの全体の稼働率が下がり、システムの全体が無駄な部分をたくさんかかえる。(たとえば大型の火力発電所を増設すれば、ピーク時以外にはそれがまるまる無駄になる。)
( → 産業用スマートメーター: Open ブログ

 だから、需給の逼迫を避けるためには、古い火力発電所を使えばいいのだ。それを廃棄するというのは、いわば、宝を捨て去るのも同然だ。そして、そのせいで、日本全体が電力不足でブラックアウトするという危険にさらされるのである。
  ※ 苫小牧のブラックアウトが記憶にある。
     → 全域停電の回避システム: Open ブログ
     → 北電:全域停電の直前の真相: Open ブログ
     → 苫東厚真発電所への集中: Open ブログ


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 [ 付記 ]
 今年の年初にも、電力需給が逼迫して、電力市場の価格が異常に高騰した……ということがあった。
  → 電力の需給逼迫が続く: Open ブログ
  → 電力の需給逼迫の解決策: Open ブログ

 そのせいで、新電力の会社が倒産したということもあった。
  → テキサスの停電: Open ブログ
  → 新電力で一時首位、エフパワー経営破綻 電力逼迫の影響:朝日新聞

 この問題を避ける方法としては、「発送電分離」が基本だ……とも示した。
  → 電力安定供給には発送電分離: Open ブログ

 とはいえ、現実には「発送電分離」には長い時間がかかるので、この夏や冬には間に合いそうにない。では、どうすればいいか? 

 それについては、すでに上の項目で説明済みだ。
  → 電力の需給逼迫の解決策: Open ブログ

 ここでは「需給調整契約」という方法を示している。小規模で短期間の電力不足であるならば、これで解決できる。

 その理由は、こうだ。
 「電力が逼迫する日は、厳寒・猛暑となる日である。そういう日は、もともと人が出勤するには適さない日だ。だから、そういう日は、(企業の)休業日にすればいい。かわりに、他の休日を出勤日にすればいい」

 つまり、休日の振り替えだ。天気の悪い日は、仕事をするのに適さないし、出勤するのも大変だ。天気のいい日は、仕事をするのに適しているし、出勤するのも楽だ。だから、天気の悪い日には会社を休んで、天気のいい日に会社に出勤すればいい。
 これは、ぐうたらサラリーマンの考えそうなことだ。そして、それこそが、最善なのである。
( → 厳寒・猛暑なら休業日に: Open ブログ




 【 追記 】
 「電力市場を自由化したことで、なぜ失敗したのか? (電力のような)公共財は自由化には向いていないということか?」
 という疑問が生じそうだ。

 そこで、答えよう。こうだ。
 「自由化という原則そのものは正しい。ただし、現在の自由化は、電力市場の自由化があるだけで、発送電の分離はなされていない。そのせいで、圧倒的な強者たる大手電力会社が、発電と送電の双方の大部分を握ることで、寡占市場となっている。この状況で自由化すると、大手電力会社がなかば独占的に市場を好き勝手に操作する。これは最悪である。だったらまだしも、公定価格の方がマシだ」

 自由化そのものが悪いのではない。発送電の分離がないせいで、大手電力会社がなかば市場を独占しているのが悪いのだ。ここでは、健全な競争はなくて、価格の操作だけがある。独占の弊害とも言える。
 だからこそ、発送電の分離が何よりも必要となるのだ。
  → 電力安定供給には発送電分離: Open ブログ (前掲)

 
posted by 管理人 at 23:20| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご参考まで。

『大手金融グループ 脱炭素で石炭火力発電所向け融資停止へ』(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210517/k10013034551000.html
Posted by 反財務省 at 2021年05月17日 14:00
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2021年05月17日 20:51
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